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第5話:正義の在り処

門前の列には十数人の人がならんでいる。


ならんでいる人々の様子は様々であったが、そのなかでも将也たちの少し前にいる商人らしき人の荷車に将也は目を引かれた。

その荷車を引いていたのが、緑の6本足の変な生物だったのだ。大きさとしては馬の2倍程度で、毛などは生えておらず鱗に囲まれており、蜥蜴のような頭部をしている。きちんと飼い慣らされているのか、大人しくしながら列に合わせて少しずつ前進している。


将也が異世界に来てから初めて魔物っぽいやつを見た瞬間であった。森の中でも地球上で見たことのないやつらは見ていたが、そのどれもが地球で言うところの何かに相当する生物と瞬時にわかるものであったため、エイビスにおいて魔物扱いなのか普通の動物扱いなのかもそのときはよくわからなかった。後にリヴェータに聞いたところこの世界では動物という言葉などはなく、人種以外のものは基本的に魔物というらしいのだが。

ともかく、この緑のやつは完全に地球上の何者とも違うので将也の中では初めての魔物認定であった。


(やっぱこんないかにも魔物ってのもいるんだな。)

程度の感想を抱きながらリヴェータに魔物のことを聞いたところ、ミドカゲという魔物で比較的調教しやすい上に温厚であるため馬の代わりに使われることが多い魔物らしい。



待っている間にリヴェータからこの街のことについても簡単に説明してもらったところ、この街はアンリ伯爵という人物が統治しているサザールという街で、人口はおそらく30000人ほどの比較的大きな街らしい。おそらくというのは文明レベル的に人口を詳しくは把握しきれていないからだ。人間種以外の種族はこの街には奴隷としてしかいないととのこと。

ロマリー王国内の位置としては、ガレス王国との国境の少し手前といったところらしい。



「ふーん、そんな感じなんだ」みたいな感じで、それほどの興味などはなく話を聞いていた将也であったが、ふとマップで色々確認出来るんじゃないかと思い付いた。

そういえば森以来開いてないし、マップでどこまでの情報がわかるかなどの確認もまだだったことを思いだしたのである。


おもむろにZP製異空間からスマホを取り出し[マップ]を起動する。


「ねぇ、それなに?」


「これはスマホっていって、俺の元いた世界にあった便利な魔道具みたいなものだよ」


「そうなんだ」とあまり興味なさそうに頷くリヴェータを横目にマップの機能を色々確認してみると中々に便利そうであることがわかった。

スワイプで簡単に見える範囲を増減することが出来る上にマップで見ている範囲にいる生物を光点表示することができる機能もあるようだ。この生物の光点表示機能は、オプションで表示する生物の範囲などを色々設定できるようで、今の設定としては人間種のみの表示となっているようだ。

さらに、将也自身が会って会話したことのある人物などは光点の色を変え、常に居場所を把握出来たりもするようである。

とりあえずリヴェータの色を変えておいて常に居場所をわかるようにしておく。



かなり今さらであるが、リヴェータと、ナンドユは森ではぐれた、将也とは帰りの道中で出会って街まで案内することになったなどの簡単な打ち合わせなども行っておく。

色々と聞かれたことがあった場合についての対応策のつもりであったが、将也としては正直詮索などされたところでなんとでもなるのでだいたいはその場まかせでいくつもりであった。

リヴェータにも何て答えればいいかわからなかったら俺が答えるから黙ってればいいと言い聞かせてある。



そうこうしてるうちに列は進んでいき、将也たちの番となった。

門の前で将也たちに対応したのは、二十歳すぎぐらいの金髪で爽やかな顔つきの男であった。


「リヴェータじゃないか、依頼からの帰りかい?隣の人は見たことない顔だけど同じ冒険者さんかな?」


「ええ、私は今依頼の帰りだけど、この人は冒険者じゃないわ。この人は将也さんといって、冒険者になろうとこの街に向かっている途中で迷ってたから私が案内してきたの。」


元々街の外への出入りすることの多い冒険者は門兵たちと顔見知りになることもよくあるらしく、リヴェータとこの門兵もどうやら顔見知りのようでフランクな雰囲気で話している。

いちいち門の外に出る冒険者の記録などはしていない上に、リヴェータたちが門外へ出るときは時間的にこの門兵と違う者がいたのだろうか特にナンドユのことに触れられることもなさそうである。



「なるほど。初めまして、将也さん。僕は見ての通り門兵やってるコルトと言います。街へ入るには入門料の銀貨10枚が必要ですがよろしいですか?」

爽やかな笑顔を絶やさず中々に丁寧な対応を見せるコルトには素直に好感が持てた。



「ええ大丈夫です。」と言いながら、腰にかけた小袋から銀貨10枚を取り出してわたす。


「えーと、はい大丈夫です。一時門外に出られる時などは簡単な手続きをすれば再入門の際の銀貨は不用になりますので門兵に一声おかけください。もちろん、冒険者登録したのちカードを見せて頂いても入門料は要りません。」


「わかりました。ありがとうございます」

思っきしナンドユの装備一式を身に付けていた将也であったが、全くといって問題なく街に入れるようである。


(まあ中世程度の文明レベルだとこんなもんか。魔法やらで検査的な何かとかはあるかもと思ってはいたが普通に何もなかったな。面倒がなくていいことだ)




街の中に入ると中々に大きな街であることがわかった。建物や街道はやはり中世ヨーロッパを思わせるような石造りのものがほとんどであった。魔法などのおかげか、将也のイメージしていた中世ヨーロッパの建物よりは少し立派目な建物が多いようにも感じられた。


門を入ってすぐのところは広場のようになっており、そこから街道が何本が続いている。

周辺には宿屋や、門兵御用達といった酒場などがあるようで、夕方という時刻のわりに門周辺はわりかし賑わっているようにも見えた。



「街には入ったけどこれからどうするの?冒険者登録しにギルドへ行く?」


「いや、ギルドは明日行こう。色々疲れたから今日はもう飯食って宿とって寝よう」


「じゃあわたしが泊まってる宿取る?1階が食堂になってるしちょうど良いと思うわよ」


「良いね。そこ行こうか」



リヴェータの案内で15分ほど歩くと目的の宿についた。ベッドとビールみたいなマークの描かれた看板には【緑の風】という店名も書かれていた。


「冒険者が利用するの中ではそこそこ良いところだと思うわ。私なんかはそんなに稼ぎの良い冒険者じゃないけど女の子だからやっぱり少しは良いところにしてるの」と少し自慢気にリヴェータは言っている。


確かに、周りの建物などと比べると外観にも別段劣悪な部分などはなく、どちらかというと綺麗目だと思うぐらいだが、清潔大国日本男児の将也からすればどこも(やっぱくそきったねーな)と思うには充分であった。


(あれ、でも、リヴも泊まってんだよな。こんな汚いとこに、リヴが……いや、なら俺としてはもうちょっと汚いとこでも逆にありなことなしなことも……)


隣にいるリヴェータの容姿と宿とを見比べると何故か得も言えぬような興奮が沸き上がってくる。

中世レベルの生活水準+美女という、地球の歴史上でも存在した組み合わせでもあるが、今実際にその組み合わせを目の当たりにすることで地球にいる頃には微塵もなかった変な嗜好が発現しかかっている将也であった。


(え、いや待って。俺こんな汚いとこで卒業式あげちゃうの?しかもこんな美女相手に?うわーまじかよ、それはそれで逆にありありのありだな。)


エロい考えが先行し過ぎて、このあと夜になると自分に幸せが訪れるという何の根拠もない考えを信じて疑わない将也であった。


素晴らしい未来への大いなる期待に、胸と鼻と将也さんのジュニアさんを膨らませながら宿へ入っていく。


人間も1動物であることに変わりないので、種の存続は遺伝子に刻まれた最も重要な仕事と言っても過言ではない。人間に繁栄本能というのはあって当たり前で、繁栄本能があるのは良いことでもある。なぜなら繁栄本能(エロい考え)がなければ人間は滅んでしまうのだから。


将也は脳みその出来が良かったが、なにも真面目ちゃんというわけではないのでしっかりエロいことも考えている。

今将也は出来の良い脳みそを全力で使ってエロいことを全力で考えているが、これは人間という生物種の観点から見るとかなり優秀な行為とも言える。



つまりは、゛男の子がエロいことを考えるのは、女の子のおっぱいと同じぐらい正義゛なのである。



これから自分に訪れる幸せについて、心の中で愛の女神に感謝を捧げ始めた時点でリヴェータの声がやっと将也にも届いてくる。



「ねぇ、将也聞いてる?」


「え、うん。俺は意外かもしれないけど、こうみえてけっこう子供好きだから3人ぐらいでお願い」


「え、こども?え、何?何の話?」


ポカーンとするリヴェータがようやく目に映ってきた。と同時に周りの景色も変わっていることに気付く。

将也の現実を認識していた最後の記憶としては宿の外観のあたりである。いつの間にか宿の受け付けも済まして部屋の前に来ているようである。リヴェータが言うには宿の代金は1泊銀貨5枚で、自分の残っている分と同じ3拍分をとりあえず取ったらしい。無意識のうちに…



部屋の前に着いたことで再び将也の心の中で正義が執行される。

とうとう最初の愛の巣に着いたか、から始まり、この後の卒業式を経て、いつまでも宿の部屋じゃ駄目だからお金を稼いで家も買わないとな~子供も3人もいるし、まで続く未来予想図Ⅱが始まるところであったが、


「ちょっと待って!ストップ!また遠い目になってたわよ。疲れてるの?とりあえずこれ、はい、部屋の鍵」


(やっぱりこういうときは女の子としては男に部屋を開けて欲しいのかな。やっぱリヴはけっこう女の子らしいんだな)などと考えながら、思いやり精神大国日本で培った最大級に紳士的な態度で部屋の扉を開け、マイレディが入ってくるのを待つ姿勢の将也にリヴェータは


「とりあえずさっき話したように簡単に身支度済ませたらすぐに食堂に集合ね。私の部屋あっちだから、じゃあ後でね」と理解不能な言葉を告げると去っていってしまった。将也は泣いた。

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