第23話:茶しばき
夕食を食べ終え、屋敷に戻ってきた将也たち。
将也は、部屋に他の皆を呼び寄せて王都のギルド会議に遊びに行こうと話す。
エリザベスとマオミオ姉妹は将也の意見に反対することはなく、
リヴェータも、楽しそうねと即賛成した。
「じゃあ観光がてら馬車でのんびりと行くことにしよう。食料は俺が用意しておくから、旅の途中とかで自分が必要な物を各自買っておいて。できるだけ早く、数日の内には出発したいから明日から準備しておいてね」
「分かったわ」
「分かりました」
「「はーい!」」
内心皆に反対されなくてホッとする将也であった。
翌日、朝食を済ませるとリヴェータたち女の子四人は準備のために街に出かけた。
将也も食料などを買うために街の市場へと向かう。
まずは精肉店に行く。
五店舗回り、合計で50万ルベル分の肉を買う。
300キロほどの肉を買った。
買った肉を異空間に放り込んでいく。
異空間内では、腐敗などが進まないので放置しておいても問題ない。
次に野菜や果物を買う。
6店舗ほど回り、色々な種類の野菜や果物も購入した。
合計で50万ルベルほどだった。
次にパンを購入する。
一応の主食であるため、街で売っているパンを大量に買っておく。
80万ルベルほどで大量のパンが集まった。
最後に購入した調味料の類いと調理道具類が将也には難敵だった。
元々料理をあまりしない将也には、どのぐらいの分量やどんな道具があればいいのかがあまり分からなかった。
色々な店を巡り結果的に片っ端から購入することになった。
合計で135万ルベルほどだった。
将也の衣類などは既にけっこうあるので買い足す必要はない。
これでとりあえずの準備が終了した将也。
出来合いの料理などを買い込んでおくことも考えた将也だったが、道中で自分たちで料理を用意するのも旅の醍醐味だろうと思ってやむておいた。
「とりあえずはこんなもんでいいか。足りなくなったら道中の街とかでも買えるだろうしな」
まだ昼過ぎであったために、時間をもて余す将也。
とりあえずぷらぷらと色々と見ながら街を歩いていたら、喫茶店を見つけたので入店する。
この世界の喫茶店は現代日本のように誰でも気軽に入って時間を潰せるような店ではなく、
ある程度余裕のある富裕層が優雅に紅茶とケーキを楽しむような店だ。
喫茶店の席に着き、紅茶とショートケーキを注文する。
店内にいるのは将也と、紳士風の男の人と、豪華な服を来たマダム二人だけで中々落ち着いた雰囲気となっている。
注文した品が運ばれてくるまで、手持ちぶさたな将也はスマホで時間を潰す。
[マップ]を開いて、リヴェータたちの動きを見て楽しもうとするが、
リヴェータたちの光店は服屋の一店舗から全然動かない。
女性四人も集まった集団の買い物の長さは、さすがといったところか。
即効でまた手持ちぶさたになった将也は、ふと思い立ち自分のステータスを久しぶりに確認してみることにする。
今までに他の者の鑑定は度々行ってきたが、自分のステータスに関しては元から上限振り切った状態なのでどうせたいして変化出来ないだろうと放置していた。
いつぶりか分からないぐらい久しぶりに[ステータス]をタップした将也。
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岩代 将也
17歳 人間 レベル:215
力:986500722475639987528884262272 (4283)
防御:942785239884254100055485640087 (4312)
魔力:963322447788009632111128014071 (4367)
俊敏:975800963514475390042399991296 (4278)
スキル:『真祖』、『金剛琿戟神体』、『完然神通力』、『女神の愛護』、『神竜』、『言語理解』、『剣術LV6』、『拷問』、『恐喝』、『棒術LV2』、『操馬』、『拳闘術LV3』、『力加減』
覚醒スキル:『獄炎』、『罪雷』、『二元太極』
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(おお、なんか色々増えてんな。ゴリラ虐殺したせいかレベルもかなり上がってるし)
覚醒スキルというのがよくわからないので、とりあえずタップして詳細を見てみる。
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覚醒スキル:レベルが100上昇するごとに、当人の資質や性質によって発現することがあるスキル。
レベルの上限値は、資質により100単位で変化し、
レベルが100上昇しても覚醒スキルが発現しないこともあれば、複数発現することもある。
一般的なスキルに比べると強力なものが多く、覚醒スキルの発現したものは『覚醒者』と呼ばれることもある。
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(レベルの上限値だとか初めて知ったわ)
最初から無敵であったゆえに気にもしていなかったレベルの大まかな仕組みなどを今更になって知った将也。
発現している覚醒スキルもタップし詳細を確認する。
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『獄炎』:地獄の業火を召喚し、操ることができる力。
『罪雷』:地獄において罪人を裁く黒雷を召喚し、操ることができる力。
『二元太極』:世界の始まりから共にある光と闇を司る力。
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スキルの並びと内容的に、レベル100で前者2つ、200で3つ目を得たってところだろうかと考えた将也。
(すごそうなスキルばっかだけど、やっぱ全部ゼウスパワーでも済むような気もするな。元々のスキルがもうちょいしょぼかったら嬉しくてたまらんかったんだろうけど。まあ今度にでも使ってみるか)
ヤバそうなスキルを1度に3つも得た将也だが、もっとヤバそうなスキルを既にいくつも持っているため喜びが半減してしまうことだげが残念に思えた。
テーブルを見ると、ケーキと紅茶が置かれていた。
何だかんだでステータスを見るのに夢中になって、運ばれてきていたのに気づかなかったようだ。
のんびりとケーキを食べ、紅茶を飲み終えて店を出る。
リヴェータたちが帰ってくるにはまだ少し早いだろうが、やることもないため屋敷へと向かう将也。
帰り道に冒険者ギルドの前を通りかかるとちょうど、ベルクたちのパーティがギルドから出てきた。
「よう、将也じゃねーか。元気してたか?」
「ああ、それなりに元気だよ。ベルクたちは依頼にでも行くのか?」
フル装備の一行を見て将也が尋ねる。
「ああ、何でも森にでけー蛇の魔物が出たらしくてな、街の兵士が遭遇して襲われたらしいが手に負えねーからギルドに回ってきたんだ。蛇ごときにやられるとはほんと軟弱なことだぜ。おっと、今はお前の兵士なんだっけか。悪い」
「いや、べつにかまわないさ。依頼、気をつけてな」
「ああ、サンキュー。じゃあ軽く行ってくるわ」
ヒラヒラと手を振りながらベルクたちは街の外に向かっていった。
屋敷に戻った将也が小1時間ほど待っているとリヴェータたちが戻ってきた。
「聞いてよ将也。私の収納の指環が一杯になっちゃってね、新しいのを買いにいったんだけど、あ、ついでに皆のもそのうち満杯になるだろうから全員分探してたのね。そしたら、全然収納の指環が売ってなくてさー、何でもこの前マオとミオに買ったのが最後らしくて、元々ポンポン売れるような値段の品でもないから入荷の予定も当分ないとか言われたの。もう~最悪じゃない?あ、でもね、そのあといつも行く服屋に行ったら新しい服いっぱい入荷しててね、皆ですごいいっぱい買っちゃったのよ。マオとミオの服なんかすごい可愛いんだから。あ、あと…」
収納の指環はリヴェータと同じものを各人に1つずつ買い与えている。
お金もリヴェータとエリザベスに3000万ルベルずつ、マオとミオに500万ルベルずつ渡している将也。
元々莫大な金を得た上にあまり節約する気もない将也は、可愛くおねだりされるとすぐに金を与えてしまう。
夕飯の時にかなりテンション高めなリヴェータに延々と買い物の時の話を聞かされた。
エリザベスに聞くと、今日の買い物の結果にいつも以上に満足してテンションの上がったリヴェータが、帰りに酒を歩き飲みし、さらにテンションを上げてしまったとのこと。
「すいません、将也さん。止めておくべきでした」
「かまわないよ、エリー。これはこれで可愛いし」
赤らんだリヴェータが可愛いと思う将也。
「ましゃやさんは、あましゅぎるんです!ヒック、ミオをあまやかさないでくだしゃい!ヒック」
リヴェータよりも真っ赤になったマオが将也を指差しフラフラで絡んでくる。
マオとミオが酔ったリヴェータに味見と称されて少し飲まされたそうだ。
フラフラでべろべろのマオとは対照的に、ミオは顔色も普通でいつものように美味しそうな笑顔でパクパクと夕飯を食べ続けている。
時々、フラフラのマオの目を盗んでは、マオのおかずの肉をつまんで食べている冷静なところを見るとミオは酔ってはいないようだ。
夕食を食べ終え、酔ったままに早々にリヴェータが寝てしまったことで、
その夜将也はエリザベスと、初徴収の時以来の一対一の徴収をした。
いつも、リヴェータとエリザベスと二対一のためハードだと思っていたが、
一対一でも、なんやかんやでハードだと思い知り、どちらにせよ満足な将也だった。
そんな将也の元に、モーガンからベルクたちが戻らないという知らせが届いたのは、翌日の朝のことだった。