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第20話:徴収開始

「本当にありがとうございます」


「いや、俺がやりたくてやったことだからかまわないよ。対価ももらう約束だし」


将也は伯爵の執務室で涙から落ち着いたエリザベスと話をする。


「でも、よろしかったのでしょうか?私はロマリー王家から追われている身です。私を助けたことで将也さんにもご迷惑がかかるかもしれません…」


「ああ、それなら、大丈夫エリーはもう死んだことになってるから」

将也はドッペル影武者を用いて、エリザベスが死んだことになっている説明をした。


ドッペルは戦闘能力は低いが、他の生物の姿に完全に成りすますことができるBランクの魔物だ。


将也が異世界から来たということも含めて簡単に事情を説明したが、エリザベスは所々要点を得ていない様子ではあった。


「そうなんですか。何から何まで本当にありがとうございます」


「全然かまわないよ。じゃあ嫁を呼んでくるから少しここで待っててくれるかな」

リヴェータの見ていない所でリヴェータを嫁呼ばわりしてイキる将也。


部屋を出ていこうとすると、後ろからエリザベスに服の袖を掴まれる。


「あの、私、このままだといつさっきまでみたいな状態に戻されるか不安です。だから、先に対価を徴収していってくれませんか…」


「そんな心配は全然しなくて良いよ。わざわざ助けたのに放り出すわけないし。そもそも対価もまだ何にするか決まってないしね」


「徴収……してくれますか?…」

いつどうやって脱いだのか将也には全くわからなかったが、振り向くと全裸のエリザベスが顔を赤らめ、上目遣いで将也の目を見つめていた。


たぁぁっぷりと徴収した。



3時間ほどかけ徴収を終えた律儀で誠実な将也はツヤツヤ顔で1度宿に行き、リヴェータを伯爵の屋敷へと連れてきた。


最近は自分の勘違いなどではなくリヴェータと色々と熱く愛し合っていた将也だったので、正直なところリヴェータに怒られるかもしれないと少し覚悟していたが、

「あら、そうなの」

と、本当に怒ってなどいない様子であった。今などエリザベスと二人で話に花を咲かせているぐらいだ。


(この世界ではこんなこと普通ってところか。考えてみればキリスト教もないし一夫一妻制でもないみたいだし当たり前か。まあ、何にせよ怒られなくてよかった。あれ、てことは今夜からは二人と?……グヘヘ)



この世界には今現在色、一夫一妻制の決まりも風習などもない。

地球で多く採用されている一夫一妻制度の成り立ちにキリスト教の存在が深く関わっている上に、広く法的にも決められたのが近代以降だろうことを考えれば、キリスト教のないこの世界で、この文明レベルでは当たり前のことだ。

そのため、リヴェータに限らず、基本的に甲斐性のある者が異性を複数人侍らせようと特に問題視する者はいない。



その日の夜は、いつものようにリヴェータと愛し合うのと、エリザベスからの徴収を同時に行うことになり異世界に来てから将也にとって一番ハードな夜であった。ハードであったにもかかわらず不思議と満足感しかなかった。



次の日の朝、我が物顔で伯爵の執務室にいると、キースがやって来た。

リヴェータとエリザベスは別の部屋にいる。


伯爵が昨日の狂行に及んだ理由に何か心当たりなどはないか話を聞きにきたキース。

伯爵は「わしではない!」、「体が勝手に動いたんだ!」、「あの小僧にやらされたのだ!」などと要領の得ない上に、その場で目撃したキースもいるために通ることもない言い訳ばかりを叫ぶだけで聴衆にもならないので将也に話を聞きにきたとのこと。


(伯爵が言っていることが全て正しいのに…)


そういえば、と言いながら、将也が昨日起こっただいたいの出来事をキースに話す。

一応超当事者なのでそれなりに詳しく話してやる。

キースに話しただいたいのことに含まれていないのは、将也が金貸しや伯爵から色々と勝手に頂戴したことなどだ。

キースは将也の話を真剣に聞いていた。


「わかった、その話については、こちらでも後で調査しておくよ。あと、もうひとつ聞きたいのだが、君は伯爵様に認められた人物だと言っていたが、何か役職などはあるのかい?この執務室にいても誰も何も言わないようだし、高位の文官ってところかな?」


「違いますよ。僕は、そうですねぇ…うん、言うなれば伯爵の右腕ってところですかね」


「う?うん。いまいちよくわからないが、そういうことだったらこの街の領主不在の間の代官を任せてもかまわないかな?」


伯爵は今回の狂行で王都へと連行され、何らかの裁きを受ける。

伯爵の家族も一緒に連行される上に、このまま伯爵がここの領主で居続けることはなく、もちろんその伯爵の子息が後を継げることもない。

そのため、次の領主任命までの間の代官を将也に任せたいと言うキース。


「そういうことなら、それこそ俺よりちゃんとした文官に頼んだ方が良いでしょう」


「それもそうか、ではそうすることにするよ。色々と聞かせてもらってすまなかったね」


「いえいえ」


屋敷にいる文官の元へと向かうキースの背中を、キースの頼みが断られることを知っている将也が見送る。


しばらくすると、足取り荒く、キースが部屋に戻ってきた。


「やってくれたね。この忙しいときにあまりおちょくるのはよしてくれよ本当に」


実は、今まで伯爵に雇われていた、使用人や兵士や文官などは全員今は将也に雇われている状態だ。

伯爵がボコボコになった日に、全員を集めて、裸にしたボコボコの状態の伯爵を指差しながら、

「えー、屋敷内を見てもらってもわかる通り今この男には君たちに支払える金が1ルベルもありません。その上に民衆にもやられてこんな状態です。それでもなお、タダ働きで伯爵様にお仕えしたいと言う人はいますか?ちなみにそうじゃない人は俺が私費を出して雇います」

と聞くと誰も伯爵に仕えるというものはいなかった。

裸でボコボコの伯爵を見て女性だけでなく、ほとんどの男性たちも嫌そうな顔をしていた。


そんなわけで、昨日キースたちが、到着したときの門の衛兵も、屋敷を案内した者も将也に雇われている状態であった。

今さっきキースが頼みにいった文官も将也に雇われているため勝手なことはできないと断ったのだ。


「文官が断ることを知っていたならあんな提案するんじゃないよ。そもそもそんな状況で代官を任せられるのなんて君しかいないじゃないか」


「だが、断る。まずそもそもあなたに代官をこの領地の代官を勝手に任命する権利がなく………」

などとごちゃごちゃ言う将也だったが、半分おふざけで、キースで遊んでいるだけだったので最終的に鼻くそをほじりながら承諾する。


この世界の現在、ほとんどの領主が行っている仕事は自身の腹と私腹を肥やすことだ。

このサザールの街も例外ではなく、ほとんどの業務は文官と武官が処理するから領主は時々重要な書類に判を押すだけだ。税も役人により勝手に集まってくる。

そもそも、領主側は徴税と時々の徴兵を行うのみで、住人に対して何か気の利いた行政サービスを行うことは全くと言ってない。


ほとんど全ての仕事は役人たちが処理する上に、住人に対しては直接姿を現すことすら滅多にない伯爵の代官が将也になったところで、街の住人にも、役人たちにも、将也にもこれといって支障がなかった。


ちなみにであるが、領地は先祖の功績などで国王から完全に頂戴した形もののため領主から国王への定期的な納税などもない。


文官などを呼びよせて、

「そういうことだから、今まで通りによろしく」

と言付ける将也。


キースは、

「じゃあ、また明日の朝出発前に寄らせてもらうことにするよ」

と告げると、ゼニキスや街の人々に話を聞きに行った。




翌朝、将也の元へキースが訪れる。


「君の言ったいたことは本当だったようだね。街の人々からも証言を得たよ。今回のことは悪事のバレた伯爵が錯乱して狂行に及んだのだろうと報告することになった。君のことも報告しておくから、そのうち、悪事を暴いたことと代官の件で褒賞を頂けると思うよ」


「そりゃどうも」


「じゃあ我々はこれで失礼するよ。後のことは任せたよ」



キースたち騎士隊は伯爵一家を、エリザベスの時よりは気を遣いながら王都へと護送していった。





それからの数日間は、昼間はリヴェータとエリザベスとの3人で街を巡ったりして遊びながら過ごし、夜はリヴェータとエリザベスとハードな遊びをして過ごすという、爛れ蕩けた日々を将也は過ごしていた。


そんなある日、街を歩いていた将也の耳に、ガレス王国が勇者の召喚に成功したという話が聞こえてくる。

将也が異世界に来てからちょうど10日目であったが、

(この世界の文明レベルからすれば妥当だろう)

と話の伝わる速度を評価した。


街の人々からは、「これで魔族どもを倒せるぜ!」とか「このままではガレス王国に差をつけられてしまう」などと行った声が聞こえてきたが、どれも将也にとってはどうでも良い内容だった。

強いて言うなら、

(まあ、他種族との戦争に勝ったとしても人間の戦争が始まるだけだからな。君正解)

と、心の中で聞こえてきた声の中でガレス王国が力を付けることを危惧していた者にテキトーに正解を与えてやるだけだった。


ガレス王国で召喚された元クラスメイトたちに関して、将也が思う所は特になかった。

友達はいたし、暗い学校生活を過ごしていたわけでもないが、ほとんどの者が高校で出会ったばかりだし、恋人もいない。

今現在、おそらく今後も、皆がいなくて寂しいなどという事態にはならないので、どうでも良いというのが将也の心であった。



元クラスメイトの勇者たちに関する少しばかり懐かしい話を耳にした、勇者将也は、今日のハードな夜を無事乗り切るための決意に顔を引き締めた。

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