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第15話:登場!恐怖のデブラザーズ!

2日連続で幸せな朝を迎えた将也。

宿でリヴェータと朝食を済まし、二人でギルドへと向かう。


今日はいつもと違い、ギルドの入り口の前に豪華な馬車と数人の兵士たちが立っていた。


(なんだこれ)と疑問には思いながらも、何であっても自分に問題はないので気にせずギルドに入る。


受付に行き、セシリーさんに依頼達成の報告をする。


「ハジャコングの討伐達成の報告にきました」


「なっ、ほ!本当ですか?ギルドカードを拝借してよろしいですか?」


「ええ、どうぞ」とギルドカードを手渡す。


将也はこれが初依頼だったため今まで知らなかったことだが、ギルドカードは特種な魔法具となっており、依頼を受注する際の手続きで『条件契約』の魔法というものを発動することができ、カードを持って依頼の条件にある行動を遂行すると、条件達成の有無が記録されるようになっているのだ。


カードを見て、確かに依頼の達成や、討伐魔物の欄にハジャコングや大量のグドウコングなどが記されていることを確認し、セシリーさんは驚愕する。


「た、たしかに、依頼は達成されているようです。と、討伐した魔物が大量におられるようですが、素材の売却は如何なさいますか?」


「いえ、素材の売却はしません。とりあえず依頼の分だけの報酬をください」


「か、かしこまりました。報酬額が大きいので用意に時間がかかります。少しお時間をいただいてもかまわないでしょうか?」


「ええ、大丈夫ですよ。向こうで座って待ってます」


驚愕した顔を隠せないセシリーさんが奥の方へと駆けていく。

将也は、セシリーさんよりはマシな驚愕した顔のリヴェータとテーブルに着く。

依頼内容をリヴェータに告げていなかったためにさすがに驚いているようだ。


リヴェータと軽く話しながら待っていると、

階段の方から微かにであるが、わめき声のようなものが聞こえてくることに将也は気付く。


何を言ってるのかはわからないので、軽く耳を澄ましてみると、簡単に話し声が聞き取れた。


「どういうことなんだね!なぜ話せないと言うんだ!私はあの決闘に600万ルベルも投資したのだぞ!」


「そうだぞ、モーガン君。新人の冒険者が3人相手に勝つなんて何かイカサマなどがあったのではないのかね?」


「何度も申し上げているとおり、ギルドには所属冒険者に関する守秘義務がありますのでいくら決闘に投資されていようとも決闘の内容などを第三者に公表することはありません。それに、伯爵様がおっしゃる様な不正は断じてありませんでした。公平に行われた決闘であることは、立ち会った私が保証いたします」


聞こえてきた内容から察するに、どうやら、モーガンに金貸しの青狸と伯爵が決闘のことで文句を言っているようである。

伯爵は先日の決闘で、直接損害は出していないと思われるが、癒着している金貸しの付き添いといったところだろうか。


「モーガン君、君の言うギルドのルールのことも分かるが正直今回のことは常軌を逸しているだろう。賭け金が膨大なことや、敗者の姿が、とても決闘したとは思えないほど無惨なこと、何よりも立会人であったはずの君がそのようなひどい傷を負っていることがおかしいではないか。私はこの街を治める伯爵として何か問題があるなら知っておく必要があるんだ。素直に教えてくれないかね」


「すいません。決闘には何も問題はなかったため、話せることはありません。私の傷も私自信の不注意によるものです。支部長という立場であるにも関わらずこのような心配をかけてしまって申し訳ありませんでした」


「ええい!そのようなご託はいいから、さっさと話さんか!せめてあの若造の居場所ぐらいは言ったらどうなんだ!わしの金を600万ルベルも奪いよったのだぞ!」


「申し訳ありませんが、規則ですので」


「なんだ、貴様。やけに隠すということはギルドも共謀して何かイカサマでもしたのではないか!そうとしか考えられんぞ」


「ふむ。どうなんだねモーガン君。もし本当にそのようなことがあるなら由々しき事態だぞ。私としても見過ごすことはできんが」


「そのようなことは一切ございませんでした。何卒ご理解ください」


「もうよいわ!貴様と話していても埒があかん!若造は自分で探すことにする!」


バン!と乱暴に扉を開く音と3人分の足音が聞こえてくる。


階段から金貸し、伯爵、モーガンの順で降りてきた。


伯爵は薄くなった金髪の丸々と太った巨デブであった。

青狸と並んでいるとデブ兄弟という言葉がよく似合う。


階段から降りてきたモーガンが、テーブルにいる将也を発見し、ギョッとした表情になる。


将也は盗み聞きしながらも、リヴェータと話し続けていたため、将也の話し声に気付いた金貸しが将也の姿を発見する。


「いた!伯爵様、あの若造です!やつめ、わしの金を奪っておきながらこんなところで悠長に話などしおって」


モーガンは顔に手をあてて途方にくれているような様子だ。


ずんずんと歩く金貸しを先頭に、3人が将也たちのもとにやってくる。


「おい!貴様!汚い手段で奪ったわしの金を返さんか!」


「なんのこですか?全く意味がわからないんですけど。そもそもあなた誰ですか?」


「な、貴様しらばっくれるつもりか!わしはお前が決闘を行った3人に金を貸した者だ!決闘の日にここで会っただろう!」


「ああ、そうでしたか。それで、何のご用ですか?」


「なっ、貴様、どこまでもぬけぬけと。だから!「まあまあ、ゼニキス君、少し落ち着きたまえ」


1人で激昂している金貸しの言葉を遮り、伯爵が話しかけてくる。


「知っているかもしれんが、私はこのサザールの街を国王陛下より任せられているアンリ伯爵というものだ。先日君が行った決闘についていくつか聞きたいことがあるのだが、我々と同行してもらえるかな」

さも、将也が必ず同行するように自信満々で問うてくる。


「お断りします」


「はっは、何も脅える必要はないよ。尋問したいわけじゃないんだ。ただ少しだけ話を聞かせてもらうだけだ。よかったらそこのお嬢さんも同行してくれてかまわないよ」

何を勘違いしたのか、意味不明な説明や譲歩を付け加える伯爵。


「あ、そうなんですか。では、お断りしておきます」


将也のはっきりとした再度の断りに、伯爵の作り薄ら笑いが消え、険しい顔になる。


「この街の伯爵である私が同行するように言っているのだよ?わかっているのかい?」


「ええ、分かってますよ。それがなにか?」


「ふむ。やはり君には問題があったようだね。仕方ない、無理矢理連れていこうか。兵士たちを呼んでくるとしよう」


頭を抱えて困り果てていたモーガンが、これ以上はまずいと慌てて止めに入る。


「伯爵様、ここは冒険者ギルドです。ここで揉め事を起こされるというなら、ギルド側としてもそれに対応せざるを得なくなります」


「ちっ、これだから国王陛下の威光を理解できない野蛮な冒険者共は嫌なのだ。おい、貴様、このままで済むと思うなよ」

と将也に顔を近付けながら凄んで脅そうとする伯爵だったが、

ぷぺっ、と将也に唾を吐きかけられる。


「お土産をあげますから、さっさと豚小屋にお帰りになったらどうですか?ここはあなたの様に自分じゃ何もできないデブがいるべき場所ではないですよ」


「なっ、き、貴様~。このまま無事に帰れると思うなよ!」


捨て台詞を吐きながらどすどすとギルドを出ていく伯爵と青狸のデブラザーズ。


静観を決め込んでいたリヴェータが将也に話しかけてくる。

「将也、さすがにあれはまずいんじゃないの。あんなのでも一応この街で一番偉いのよ。大丈夫なの?」


「うん?俺は全然大丈夫だよ。あ、そうだ、モーガンさん」


突然名を呼ばれたモーガンは抱えていた頭から手を離す。


「な、なんでしょうか」


「ギルドへ依頼をしたいんだけど。護衛依頼。依頼内容は俺たち二人を行動を阻害しようとする何者からも護衛すること。とりあえず今この場にいる冒険者に頼めるかな?」


将也が護衛依頼などを出そうとしてる理由は、ギルドで依頼をしてみようという単純な経験のためと、その方がおもしろそうだからである。ほぼほぼ無敵の自分が全て解決しても味気ないと考えた。


「わかりました、急なことなのでできるかはわかりませんが、可能な限りの手配をいたします。少々お待ちください」

と言って奥へと行こうとするモーガンを後ろから引き止める声がする。


「待ちな、モーガンのダンナ。その依頼俺達が受けてやってもいいぜ」


将也たちの隣の隣のテーブルに座っていた5人組の冒険者が立ち上がりこちらに歩いてくる。

声をかけてきた者は、顔に大きな傷をつけた、黒短髪でツンツン頭の大剣を背負った体格の良い30半ば程度に見える男だ。

その後ろに、男女二人ずつの四人が続く。


男は二人とも体格がよく、一人は金髪で大きな盾を背負い、一人は丸坊主で拳にグローブのような武器を付けている。二人とも年齢は大剣の男と近そうに見える。


女の方は、金長髪で背が高く修道服のような装いの若く見える女性と、茶短髪で背が低く大きな帽子とローブを身に纏い身の丈ほどの杖を持った幼くさえ見える女性だ。


「よう、兄ちゃん。俺はベルクっていうんだ。こっちにいるのは、俺の仲間で全員Aランク冒険者だ。さっきのアホ伯爵との話聞かせてもらったぜ。あのアホは俺達冒険者のこと舐めてやがるからな、常々ムカついてたんだ。中々に痛快だったぜ。これ以上あのアホに冒険者がいじめられるのは見たくもねえ。てこで報酬次第では俺達が依頼を受けさせてもらうぜ。どうだ?」


「それは良いですね。是非ともお願いしたいです。報酬は皆さん合計で1日につき、20万ルベルでどうでしょか?条件はさっきモーガンさんに言った通りで、依頼期間はこちらが危険はなくなったと判断するまで」


「乗った!かなり良い報酬額だが大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。そちらも大丈夫ですか?伯爵に目を付けられることになるとは思いますが」


「何の問題はねーよ。あのアホが治めてるだけあってこの街の兵は愚鈍な雑魚ばっかだ。仮に依頼が終わった後にヤバくなるようだったらこの街を出るだけだしな、気ままな冒険者らしく」


「そういうことだったら、お願いします。僕は将也で、彼女はリヴェータです」


話がまとまったところで、モーガンに依頼を発注する手続きをしてもらい、すぐさまベルクたちがそれを受注する手続きをとった。


護衛依頼の手続きが完了したところで、奥から大きな袋を何個も抱えたセシリーさんがやってくる。


「ふぅ、将也さん。こちらが報酬となります。ギルドへ預けておくこともできますがどうされますか?」


「いえ、持っていきます」

と言って、異空間に全て収納する。

リヴェータ以外の者が少し驚いていたが、特に何も詮索されることはなかった。


テーブルで、ベルクたちと簡単な自己紹介と打ち合わせをする。

将也の冒険者ランクを聞いたベルクたちがかなり驚いていたが、やはり特には詮索されなかった。

冒険者特有の暗黙の掟のようなものでもあるのかもしれない。


それぞれの名がわかった。盾の男がカマル。グローブの男がディグ。修道服の女がラーミア。杖の女がカナリ。


一通り話が終わると7人全員で席からたち、出口へと向かう。

先頭は、ベルクとカマルとディグの3人で、真ん中に将也とリヴェータ、後ろにラーミアとカナリの3列編成だ。


「多分、早速だと思いますがお願いしますね」


「おう、任せとけ!」


一行は、明らかに兵士たちが待ち構えているのが見える外に出ていく。

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