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コネクト・ザ・ワールド  作者: てんぞー
序章 New Eden
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第四話 冒険者という職業

「と言う訳で全部お前に任せた!」


「いや、”と言う訳”じゃねぇよ。話をしろよ総帥(バカ)


 うん? と言葉を漏らしながらソフィーヤの背後から横へと移動した総帥はなんてこともないかのように言う。


「俺は頼まれた。だけど立場的に忙しい、すっごく忙しい、超忙し。なぜならこのアルディア王国は基本的に俺を中心に回っているからな! いや、むしろこの宇宙が俺を中心に回っている感じすらあるからな! と言う訳で俺は忙しいんだ! だったら信頼のできる部下に仕事を投げ渡すのが当たり前だろ!?」


「この後のご予定はなんでしょうか総帥」


「えー、この後は娼館で一発ヌいてく予定です」


 無言で踏み込みから拳を作り、それを腹に叩きつけて一発で馬鹿を路上にダウンさせる。こいつに任せては絶対ダメだ。それを確信しつつ、どこか乗せられているような気がしつつ、溜息を吐く。まぁ、もともと断る理由さえないのだから、この話し合いそのものが茶番でしかないのだが―――所謂様式美だ。目の前で倒れている馬鹿だってその程度のことは解っている筈だ。


 そう祈っている。


 そうだったらいいなぁ、と思っている。ともあれ、命令である以上は部下である自分に逆らう権利はない―――言われた通り、面倒を見なくてはならない。今更初心者(ニュービー)の相手をさせられるとは思いもせず、少々、憂鬱なところもある。軽く軍帽を脱ぎ、頭を軽く掻いてから軍帽を再び被り直し、小さく吐息を吐いてから気持ちを入れ替え、視線をソフィーヤへと向ける。


「さて、総帥(バカ)のことはともかく……こうやって任された以上、全力を尽くすつもりだ―――そう言えばまだ自己紹介してなかったな。そっちの馬鹿が総帥、そういう名前な? そして俺がハイドラ・アリゥだ。ハイドラがファースト、アリゥが家名……ちゃんとそういう風にこの国にも登録されてるからな?」


 握手のために右手を前に出せば、ソフィーヤがそれを握り返してくる。


「ソフィーヤです。VRMMOはこれが初めてなのでいろいろと迷惑をかけると思いますけど……」


「まぁ、気にするな。うちはきっちりしっかり仕事をこなすからな」


 そう答え、路上で転がっている筈の総帥へと視線を向けようとすれば、いつの間にかその姿が喪失していた。どうやら此方がソフィーヤへと視線を向けている間に、無言で逃げ出したらしい。本当にそういう技術ばかりは無駄に上手だよな、と思いつつ、さて、と声を零し、手を放し、両腕を組んでソフィーヤの前に立つ。


「とりあえずNew Edenへようこそ、とでも言っておくべきかな。VRゲーは初めてらしいけど、何かやりたい事とかあるか? それよってはやる事が色々と変わってくるからな」


 その言葉にソフィーヤが困ったような表情を浮かべた。


「えっと、すいません……実は父さんにこれをやって”アプデまでにシナリオの一章を終わらせてみろ”、としか言われていなくて……何ができるか、とか、その……」


「はぁ、成程成程。まぁ、目標があるだけ良いってものさ。とりあえずこのNew Edenでプレイヤーとして活動する以上、冒険者として活動しなければ何も始まらない。とりあえずは冒険者協会へと向かってカードの作成を行おう。こっちだ」


「あ、はい、よろしくお願いします!」


 言葉にぺこり、ソフィーヤが頭を下げる。その動作につられて揺れる胸に軽く視線を送ってから、彼女が気づく前に視線を外し来た道へ、つまりは冒険者協会へと向かって歩き始める。小走りで走り、追いついてきたソフィーヤは横に並び、まだ朝の街をともに歩き始める。彼女の姿を横目に確認し、


 ―――どっかの良い所のお嬢様か? 少なくとも日本の人間じゃないな。


 軽く分析しつつも、ネットマナーの基本としてそれ以上踏み込むような事も、口にするような事もせず、下っ端が案内や初心者(ニュービー)に対して行っているような説明を思い出し、それを口にする。


「基本的にこのNew EdenってVRゲーは従来のVRゲーとそう大きな違いはない。自由に歩ける大地があり、生産活動を行え、戦闘ができる。自由を売りにしているタイプのゲームだ。基本的にこの世界その物がニュー・エデンって名称で、ゲームのタイトルはそこから取られているらしいな」


「エデン……つまり楽園ですよね、聖書に出てくる」


 ソフィーヤの言葉に頷く。


「厨二時代を経験した事のある奴なら大体誰でも食いつくようなワードだな―――さて、このNew Edenというゲームだけど、ほかのVRゲームと比べて”玄人向け”とも”熟練者向け”とも呼ばれているゲームになってる。自由度に関してはほんと、ほかのゲームと変わりはないよ。土地を入り開けるし、建築できるし、建国だって出来る。そこら辺は最近のVRMMOでは当たり前の要素になってるけど、このNew Edenが玄人向けって呼ばれる理由、解るかな?」


 意地悪な質問をしているという自覚はある。だが、美少女が頭を悩ませているという表情は中々良いものがある―――昨今の我が社、我が組織のメイドや女幹部共は誰もが恥じらいを投げ捨てていたり、露骨なあざとさばかりで食傷気味なのだ。


 たまには天然物も悪くない、少し前の総帥の発言に今更ながら同意しておく。


「ま、意地悪な質問だったから答えを言うけど、New Edenは”システムアシスト”が極限まで削減されてるんだよ」


 システムアシストとはつまりシステム側による肉体動作の補助を示す言葉だ。普通の人間に理想的な動きを取る事は出来ない。だがシステム側に武術の達人と言われる人間の動きをインストールしておけば、システムが一時的に別人の肉体動作を自動操縦し、そうやって達人の動きを再現する事ができる。これが所謂システムアシストと言われるものだ。武術の動きにのみならず、人間とは繰り返し練習しなければ学習せず、そして成功のできない生き物だ。


 だから基本的にVRMMOでの生産活動はシステムアシストによる自動作成だったり、攻撃スキルを使用するとシステムアシストが入り、それでプレイヤーに必殺の一撃を理想の動きによって導く事ができる。


「でもシステムアシストがないと色々と困りません?」


「困る。そりゃあ困るさ。New Edenにはそもそも”攻撃スキル”みたいな必殺技は存在しないし、戦闘中の動きにシステムアシストはないし、生産活動も一部の例外を抜きにすりゃあ”工程を全て自分の手で行う必要がある”。だからこそNew Edenは今存在しているVRゲームの中でも玄人向けであり、そして最も遣り甲斐のある、ハイレベルなゲームだって言われている」


 まぁ、つまりは、


「簡単に言ってしまえば現実(リアル)に近く作ってるんだ。寧ろ”便利な異世界”って感じの認識だな……まぁ、だからこそハマる、俺みたいな連中がこのゲームには集まってるんだ」


「成程……」


 そう返答して来る彼女を連れながら大通りを進み、そして再び冒険者協会へと戻ってきた。中へと通じる扉を開いて中へと進めば、総帥と一緒だった時よりも活気が増えており、依頼を張る掲示板の前には依頼を求める冒険者たちの姿が見える。建物の中へと入ると、此方よりも視線がソフィーヤの方へと向けられ、明らかに好色の視線が向けられる為、軽い威圧を込めた視線を酒場の方へと向ければ、直ぐに視線が外される。


 ……こっちである程度ガードしなきゃ直ぐに喰われそうだなぁ。


 警戒心をかけらも見せずにきょろきょろと協会内をのぞき込んでいるソフィーヤの姿に小さく苦笑しながら教える事はいっぱいあるな、と確信する。そのまま、受付の方へと歩き出せば慌てるようにソフィーヤが追いついてくる。そのまま受付へと向かえば、少し前に総帥を捕縛していた青年の職員の姿が見えた。


「ようこそ冒険者協会ヴェーデ支部へ。本日はどのようなご用件でしょうか」


「こいつにカードの発行をよろしく」


「はい、了承しました。それではそちらの方、お名前をどうぞ」


「あ、は、はい!」


 今になって緊張しているのか、声がどこか上ずっている。その様子に聞こえないようにまた小さく笑いながら、受付の前の位置をソフィーヤへと譲り、その横のスペースのカウンターに軽く背中を預けるように青年職員とソフィーヤの会話の内容に耳を傾ける。


「では改めましてようこそNew Eden、そしてようこそ冒険者協会へ。カードの発行―――つまりは冒険者としての登録を行いたいとの事なので、簡単に冒険者協会に関して説明させてもらいますね。とりあえずお名前をどうぞ」


「そ、ソフィーヤです」


「ソフィーヤさんですね。……それではソフィーヤさん、まず初めに言いますが、部権者という職業に夢を持ってはいけません。冒険者は”底辺”の仕事です。まずそれを念頭に置いてください」


 青年の笑顔の言葉にソフィーヤが固まる。そのリアクションに横で小さく笑いつつ、青年の言葉を聞き続ける。


「まず勘違いしがちですが、冒険者は辛いです。最初の内は雑用ばかりですし。冒険すると言っても専門の知識や野営の技術が必要になりますし。ぶっちゃけた話、街での生活の方が遥かに高収入ですし、何か特技か、趣味となるものがあるのならそちらの方で生活する事を強く、強く推奨しています。それに一般的な冒険者の認識は有名人でもない限りは”臭い・汚い・小賢しい”の三重苦ですからね、冒険者、というだけで嫌な視線を向けてくる人もいます」


「な、なにか抱いていた冒険者のイメージが崩れて行く……」


 まぁ、実際に経験した者からすると”そんなもんだよな”、という感想だ。遠征や長期のダンジョンアタックをしていて一番思う事は―――この世界、トイレをする必要がなくて良かった、だったりする。それでもなく長期の冒険や探索を行っていると汚れ、臭くなっている。そういうイメージは強く一般の市民に対して植えつけられている。街の外での活動をメインとする冒険者たちは確かに臭く、そして汚いのだ―――それは生物である以上、どうしようもない問題なのだが。


「華々しい活躍をしているイメージの冒険者は基本BからAランクの方々で、これに関しても下積み時代があるからこそ存在するようなものです。変な幻想を抱いて冒険者になるとあっさりと死ぬ事ができるので、そこら辺は自己責任とご了承ください」


 青年のその言葉にソフィーヤが此方へと視線を向けてくる。


「冒険者、ブラックすぎませんか……?」


 まぁ、冒険者なんてそんなものだ―――それでもまずは冒険者にならないと何も始まらない訳なのだが。少なくとも苦しい生活と引き換えに様々な権利が冒険者には約束されているし、それに耐え抜けば成長する事もできる。


「前置きはここまでとしまして、これがソフィーヤさんの冒険者カード……つまり冒険者としての身分証となります。冒険者協会では所属している冒険者をランク付けし、それにふさわしい依頼しか斡旋しません。そして協会から与えるランクとは”実力と信頼と以来の遂行率”から決定されるものです。つまり”物凄い強いけど人格に問題がある”という場合はどうあがいても上のランクには上がれませんし、”どんなに信頼できても弱い”と安全を考慮して上のランクへと上げる事は出来ません。そしてBランクからは年間の依頼遂行数、達成率を基準に協会に対して貢献しているか、或いは有益な人物であるか、そういう判断を含めてランクを上げるので半年で最高ランクに到達できるとかは絶対に夢を見ないでください。一年でも規則上不可能です。あと達成率や遂行率が落ちればランクも下がりますのでご注意ください」


 マシンガンの様矢継ぎ早に放たれた言葉をソフィーヤは茫然とした様子で受け止め、そしてその間に青年の方がカードの発行の方をさっさと終わらせてしまう。運営側の人間らしく、非常に動作に慣れているものがある。頭が若干パンクしているソフィーヤの手にカードを無理やり握らせると、そのままいい笑顔を此方へと向けてくる。


「では手続きが終わりましたので良い冒険を。あ、予め保険に入っておくことをお勧めしますよ、向かい側の建物で保険に入る事できますから」


「保険があるんだ……」


 冒険者という職業のイメージを粉々に粉砕されてしまったのか、ソフィーヤは若干呆けている。このまま連れまわすのも悪いだろうと判断し、協会の酒場部分を指さす。


「とりあえず色々と聞きたい事もあるだろ? その前に一旦考えを整理しよう」


「あ……は、はい。どうもすいません、なんか心配させてしまっているようで」


 仕事だから、と答えるのはさすがにデリカシーがなさすぎるだろう。曖昧に笑って受け流しつつ、隣接する酒場部分へと移動し、比較的に人が少ない場所を探し、そこに対面するように木製のテーブルを挟んでスツールの上に座る。こういってはなんだが、冒険者協会の備え付けの酒場はそこまでクオリティが高くはない。冒険者たちに相談をする場を与える為であり、くつろぐ為の場所ではないからなのと、ここでクオリティに手を入れてしまうと宿や本業の酒場に対して恨みを買ってしまうからだ。その為、水だけを給仕から受け取る。


「何か質問があるならするといい、そのために俺がいるんだしな。遠慮は必要ないぞ」


 少々困惑しているような様子のソフィーヤへと告げると、ソフィーヤは受け取ったグラスから顔を持ち上げ、そしてそうですね、と言葉を零す。


「えーと……New Edenって基本的に、どういうゲームなんですか?」


 うーん、そうだな、と言葉を置いてから答える。


「簡潔に言えば”自由”だな。その象徴が冒険者って職種なだけで」


「でも、なんというか……漫画とかお話で聞く冒険者とはイメージが違いすぎて」


 こういうファンタジータイプのVRゲームに慣れておらず、尚且つそういう知識が中途半端にある人達は割とこういう所、非常に困惑する部分があるのは事実だ。冒険者は浪漫にあふれた職業であるのは確かだが、世の中、浪漫だけで生きていけるほど生易しくはないのだ。


「まぁ、職員の話は聞いていただろ? 低ランクの間はお使い、採取、清掃とかの依頼ばかりだし、雑魚モンスターとの勝負なんて依頼はほぼないぞ」


「えっ」


「当たり前だろ。国民の安全を保障するのが国の義務なんだから―――”軍隊がモンスターの掃討を行っている”んだから、はぐれかなんかじゃない限りモンスターの討伐依頼とか回ってこないぞ」


「え、えー……やっぱりなんかイメージと違うんですけど……」


 本格的にモンスターの討伐依頼とかが出現するのは最低でもCランクやBランク、ダンジョンの中に生息するモンスターを狩れる様な強さになってからだ。さすがの軍隊もダンジョンへと踏み込んで無駄に刺激しようとは考えない。だからそこから素材を持ち帰ってくるのは冒険者たちの特権だったりする。だから基本的に雑貨屋、鍛冶屋、或いは商会からの依頼が冒険者に対しては多くなっている。


 他にも軍隊では手の届かない、或いは民間のトラブルの解決とかも基本的には冒険者の仕事となっている。本当に冒険者とは便利屋扱いであり、戦力的な部分であれば基本的に国の保有する軍隊でどうにかなるのだ。だから第一大陸における冒険者の地位はそこまで高くはない。


「じゃ、じゃあ……なんでこれ、作ったんですか?」


 そう言ってソフィーヤ作成されたばかりのカードを見せる。そこにはソフィーヤの名と、そして最低ランクであるFの文字、ほかに依頼遂行数、達成率などが表示されている。


「まぁ、兵士の方が圧倒的に人気だし待遇が良いし、給料も良い訳だが―――むろん、冒険者として自身を登録する事にも意味はあるし、メリットも存在している」


 左手のスワイプでホロウィンドウを出現させ、ホロボードも一緒に出現させる。それに合わせ、情報の入力を始める。言葉ばかりだと聞いていても飽きるだろうし、こうやって目に見える形で情報を見せた方が遥かに解りやすくなってくる。だから一旦、すべての情報をホロウィンドウに入力し、ソフィーヤに表示する。


「まぁ、つまり纏めるとこうだ―――」


 1.冒険者としての特権の行使

 2.メインシナリオのスムーズの進行の為に

 3.一番自由に動ける為

 4.ほかの身分と重複して登録できる為


「―――と、この四つがまず最初に冒険者として登録することに対する理由だ。一つ一つ解説入れるけどいいな?」


「よろしくお願いします」


 ソフィーヤが頭を下げてくるのに対してよし、と小さく呟きながら、解説を始める。


「まず一つ目、まずは冒険者としての特権だ。Fランクの内は実感しにくいが、D、Eとランクが上がって来るごとに宿や酒場等での施設の利用金額がいくらか割引される他、金がない時は普通に協会で寝泊まりさせてくれる他、協会が保有する様々な施設を自由に利用する事が出来る」


 ホロウィンドウに訓練場、資料室、宿泊施設と入力して行く。


「基本的にプレイヤーは設定上始まりの街出身で自宅が存在するらしいけど……まぁ、勿論、そんなものはない。だから安全な拠点確保の為にはやはり、何らかの組織に所属したり、身分を持っておくことが必要になる訳だ。最近のAIのつくりは凄まじいからな、”PCだからという理由でNPCは信用しないし、話を承諾しない”からな。ちゃんとした身分と証明が必要になってくるわけだ。何もない、レベル1の状態で得られるものとしては冒険者の立場が一番良い」


 そして二番目、


「ぶっちゃけた話、メインシナリオの一章部分はチュートリアルを兼ねてあって、何度も冒険者協会で依頼を引き受ける必要がある。だから最初から冒険者として登録しておけば遂行率と達成数が美味しいと言う訳だな」


「身も蓋もないです……」


 三番目、


「冒険者のランクが上がってくると出来る事が一気に増えてくるわけだが、この場合、国外への移動を行っても”冒険者だから”で割と済まされるからな。旅をするなら冒険者やっとくと便利。何より何をやっていても”あぁ、なんだ、冒険者か”で済まされる」


「それって変人集団扱いされていませんか?」


 仕方がない、何せほぼ全てのプレイヤーが冒険者として自分を登録しているのだ、そりゃあカオスな集団に見えてくるのは仕方のない話だ。そして最後、


「兵士身分、商人身分、職人―――そういうのと冒険者ってのは重複出来るからな。半年に一度カードの更新や生存報告しなきゃいけないのは面倒だけど、それを抜きにすれば”とりあえずとっとけば便利”って認識で問題ない。食い詰めたらここで仕事をすればいいしな」


 ま、大体こんなところだろ、と言いながらホロウィンドウを消去する。なんだか若干プレゼン風になってしまったのが恥ずかしい所だが、なるべく解りやすく説明したつもりだ。それでソフィーヤのリアクションとなると、


「―――成程、つまり取っとけばいいと思えばいいんですね」


「あ、うん、そうだな」


 本当に理解したのかどうか、そこらへん若干疑わしい感じのリアクションが返ってきた。まぁ、疑ってもしょうがないし、本人としては満足できたのであれば、それはそれでいい事だ。まだ口をつけていなかったグラスに口をつけ、中身を半分ほど飲んだ所で、ふぅ、と軽く息を吐く。


「まぁ、難しい話はしたけど基本的にはその認識で問題ない。”あったら便利”ってなもんだ。だから基本的にプレイヤーは誰もが冒険者として登録している。と言う訳でそれが冒険者登録した理由だ……オーケイ?」


「お、オッケーです」


 発音が若干ぎこちない。小さく息を吐きながら思い出す、


「確かアプデまでに一章を終わらせたいんだっけ?」


「はい。少なくとも父さんはそうしろって」


「はーん、父親がねぇ……」


 父親が娘にVRゲームをしろと言う―――やはり、どこかのお嬢様だろうか。


 少なくともソフィーヤの容姿からある程度の年齢は想像できる。そっから親の年齢を考え、世代を考えるとゲームを遊べ、と言ってくる事には何らかの違和感を感じる。ソフィーヤもソフィーヤで顔立ちは完全に西洋人の物なのに、自動翻訳がオンになっているとはいえ、ネイティブさを言葉の端からは感じられない。やはり、何らかの事情があると考えるべきなのだろうか。


 そこまで考えたところで面倒だ、と忘れる。


 そもそもそこは自分の仕事に入らない。総帥(バカ)の仕事。


「ま、一章をリアルでの今月末までとなると……大体こっちでの三か月になるな。やり方さえ解っていれば少し余裕残して終わりそうだな」


「本当ですか?」


 まぁ、そうだな、と言葉を置く。


「その為には―――」


 指を冒険者協会の裏手へと向ける。


「―――ちょっくら、体を動かさないとな」

 ハロワで働いている人に治安維持任せる? というお話。軍隊で処理した方が訓練にもなるし安全だし当然だよね。と言う訳で3Kな冒険者が一般的な認識となっている世界観です。


 全体的にシビアな感じがする世界観になってますが、それを踏破してこその浪漫だと思う。

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