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私が来た

ヒロインがどうやって異世界に来たか編。

思ったより長くなってしまった。

私、高橋鈍愛は生まれてこの名前を付けられた時から人と仲良くするのが無理な宿命を背負っている気がする。

鈍愛と書いてピュアと読む。

私の両親はどこまでも脳がお花畑であったと言わざるを得ない。

いろいろ言いたいことはあるんだがとりあえず純粋の『純』が、鈍感の『鈍』という漢字になっていることに私本人が気づくまで分からないのはどうかしている。

いやどうかしてなきゃおかしい。

ピュアなのに鈍いってどういうことなんだ?

小学校の頃はまだ良かった。

漢字読めない奴もいたし、単純に気づいてる子がいてもその子の親が言わないように止めていてくれてた。

中学に上がるとそうもいかなくなる。

あの頃はまだ女性らしく振舞うつもりはあったがピュアの名前と漢字の書き方で男子だけじゃなく、女子にもからかわれた。

教師もわざわざ下の名前で人のことを呼んで


「おーい、ピュア!次の質問をピュアッピュアに答えてみなさい!」


なんて言いやがった。

一生許さん。

どうやればピュアッピュアになれるのかまず自分で実践してから言え。

おかげで名前は学校中に広まり知らない男から


「おーい、ピュアちゃん!彼氏いんのー?」

とか

「ピュアちゃん。僕だけのピュアでいてください」

とかわけがわからない告白をされたりもした。

変な意味で注目されるとろくなことがない。

女子からは


「あの子。ピュアって名前のくせに何人もの男とヤリまくってるらしいよ」

「皆から嫌われてるってなんで分かんないの?あ、名前が"ドン"愛だもんね」


という何もしてないのにいきなり悪者ビッチのイメージが周囲の認識として定着。

まるでコンピュータに入ったウィルスの如くとてつもない速さと感染力。

ハッカーもびっくりの代物だ。


そのせいで友達が出来ず、さらには他人の目を意識する気力も無かったので化粧や服装への気遣いも放棄。

そうしたらすることがなくなり成績が必然と上がった。

とてもむなしい成績の上がり方だったがまたそのせいでさらに周囲から冷たい目で見られるようになった。

これはもう溶け込むどうのよりいかに一人でいることに慣れ、有意義に過ごすかという問題に着目しとても合理的なものを見つけた。

やはり勉強、それも科学や未知への挑戦。

これなら別に一人でやっても問題ないし頭さえ良ければ案外楽しい将来じゃないのか?

そこからはもう特に名前を気にすることや他人を気にする必要が無かったので非常に有意義な時間を過ごしていた。

両親が

「高校に行ってるのに恋の一つもしてないのはどういうことなの?ママ(パパ)ちょー悲しい!」


とも言ってきたが気にしない。

いろいろ言いたいことはあったが恋より勉学を大切にしたいと話しておいた。

今さら恋するつもりもない。

ピュアって名前が素敵だね、とか言ってくる奴もいたが響かない。とにかく薄っぺらい。

私の存在は名前だけか!


そんなこんなで大学に進学した後も孤立したが研究に没頭。

おかげで黒い服とサングラスを着たお兄さん達にスカウトされ、夢のような一人で作業出来る環境が出来上がった。

親ともなぜか一週間に一度定期連絡を入れること以外、外部との接触を許されていないが元々連絡する相手もいないのでここは天国だ。

ますます女性らしさを失い、風呂に入るのも1週間に一度。いや前に入ったのはいつだ?

とにかく覚えていないぐらい風呂に入っていない。

何かと痒いのを我慢すればいいだけの話である。


そして月日も過ぎ、私も20代後半のいわゆるアラサーと呼ばれる体に老化し始めてから両親との電話に精神波状攻撃が加わるようになった。


「恋人は出来た?子供を作るならそろそろ結婚じゃないかしら?愛は素敵よー。孫の姿も見たいなー」


苦痛だ。

とんでもない名前を付けてくれた両親ではあっても一応私の大切な家族。

喜ばせたいのは山々だがそんな恋とか愛とか今更ってのもあるが、他の奴とまともに口利いたのはいつ以来だろう?

今更彼氏が出来るはずもなく、どう両親を誤魔化そうと思ってた矢先に最近つけてもらった雑用の助手を恋人扱いにすれば行けると判断した。

そうと決まればえーっと名前はなんだっけか?


「えー、田端君」

「田辺です、高橋先生、いい加減覚えてくださいよ」

「すまん。田真理君。突然で悪いんだがちょっと私の両親の前で恋人のふりをしてくれないか?勿論報酬は出す」

「ええ!?嫌ですよそんなの。僕彼女いますし、そして田辺です」

「頼むよ田星君。両親の前で振りだけでいいんだ。何かと結婚とうるさくてな」

「う~ん。わかりましたよ。今回だけですよ。後僕田辺ですってば」

「ありがとう!田オル君」

「感謝に聞こえないんですがそれは」


そして雇い主からも両親をこちらの仕事に干渉させないよう説得が必要ということで外出の許可を貰い、助手君と外で待ち合わせることにした。

さすがに両親に何日も風呂に入っていないのがバレると何をされるか分からないので久々にきっちり体を洗う。

なんか妙に体がすっきりするのが落ち着かない。

服も女性らしくしてないと怒られるので適当な雑誌を元にネットで買ったスカート物を吐き気がするのを我慢して履いた。

今日一日の辛抱だ。

ヒールってどうやって履いたっけ?

なんで女はこんな面倒なものを履くんだ?意味が分からない。痛いだけじゃないか。

出口に向こうまでに他の職員らしきやつらがヒソヒソと話している。

やっぱり私がこんな格好をしているとただの道化にしか見えないだろう。

とっとと終わらせよう。

そして出口で助手のえー、田んぼ君がもう既に待ち合わせ場所にいた。

こちらから頼んだとは言え、時間前に来るとはやるじゃないか。

仕事では役に立たないが。


「じゃ行くぞダンボ君」

「もう僕の名前の原型保ってないじゃないですか!田辺です!って先生!?本当に先生ですか?」

「他に誰がいると言うんだ?」

「いや、だってその、うわー。いやどうしようこれ。マジであの先生?どんだけ化けるんだよ」

「あー、似合わない格好なのは百も千も万も承知している。今日さえ乗り切れば一生着ないから今日一日は我慢しろ」

「いや、我慢っていうかむしろそっちの方が・・・」

「どうした?早く行くぞ」


道中ではとにかく落ち着かない助手のダンボール君がいた。

どうしたとのかね?やたらと胸と足を舐めるように見ている気はするが。

そして両親の家に久しぶりに挨拶に行く。

途中途中助手のダンビーノ君の名前を間違えるアクシデントはあったものの両親を騙すことに成功。

ただ一つ焦ったのが私の父が


「娘を本当に大切にする気があるのか?」


とかなり重い発言をしてきたがさすが助手君。迫真の演技で


「はい!娘さんを絶対に幸せにしてみせます!」


と言っていた。

こんなことのために真剣に取り組んでくれているとは。

報酬さらに弾んでやらねば。

泊まっていけばと言われ、なぜか助手君も泊まって行く気満々だったがさすがに辞退した。

今日だけでどっと疲れた。

また彼を連れていらっしゃいと言われた時私の顔が引きつっていなかったことを祈るばかりだ。


それからは両親の電話も次第に落ち着き、最近どうなの?などと近況は聞かれるがこれぐらいなら問題なし。

ただ今までは私の部屋には必要最低限近づかなかった助手がやたらと最近入ってくる。

はっきり言って窮屈だ。

部屋の掃除等をしていく。

助手君、それは私がそこに置いてるから意味があるので片付けられたら困るのだよ。場所が分からなくなる。

そして私の外見に口出すようになってきた。


「高橋さん、また風呂に入ってないんですか?風呂に入るまでこの部屋にいれませんからね?」


私の部屋なのだが


「高橋さん、たまには服変えてイメチェンしましょう。イメチェン。気分変えたら仕事もはかどりますよ!えっ?白衣があるからそんなの必要ない?あー、あれなら今クリーニングに出してるので今は無いです」


一番楽な服装が


「高橋さん、化粧道具一式を持ってきました。一流の研究者は外見にも気を使わなきゃいけませんよ。ほら僕がやってあげますからこっちを向いて」


とにかくしつこい。

そして何処でばれたのか私が助手君を家族と合わせて結婚間近というなんとも大事なところが伝わってない嘘が出回っていた。

本当にやめて欲しい。やめてくださいお願いします。

助手君も彼女がいるんですよ!

ということで自分で他の人に弁明できる自身がない私は助手君にちゃんと周りに説明するように言っておこうと思い声をかけ。


「おーい、田崎。ん?田島だっけか?もうなんでもいいけど助手君いるかい?」

「なんだい、ピュアちゃん。そんな寂しそうな顔して。俺に会いたかったのかい?」

「・・・私は下の名前は誰にも言っていないのだが」

「キミのご両親に聞いたのさ。他にも小学校の思い出とか中学高校大学と彼氏がずっといなかったのも聞いたよ」


いつのまに両親と連絡を取ってるのだ?いやそれよりも噂だ噂。


「最近私とお前が結婚するとかいう噂が流れていてな。前の一件がどうも捻じ曲がって伝わっているらしい。助手君から周りに弁明してくれないか?」

「何を?」

「いやだから私達が結婚するという」

「だからそれにどんな間違いが?」

「いや結婚しないだろう私達は?」

「今更それは無いでしょう。僕彼女とちゃんと別れてピュアと向き合うようにしたじゃない。マリッジブルーかな?」

「すまん。ちょっとよく意味が」

「いやだってもうご両親にも式の日取りとかも伝えたし、関係者の人にも招待状送ったし、今更戻れないでしょ?」

「は?」


こいつは何を言っているのだろうか?


「そうだよね。最近まで違う女と付き合ってて不安にさせちゃってたよね。ごめん。でも大丈夫。俺はピュアのことしか見てないから」


ふむ。

どうしようか。

話が通じてない。

こちらが普通に会話してたつもりでもいつの間にか結婚まで行っているな。

しばらく人とまともにコミュニケーションを取ってないとこうなるのか。

やっぱり他人と必要以上に関わるべきではないな。


「まぁ、結婚式は来週に控えてるからちゃんと準備しててね」


助手君が最後に聞き捨てならないことを言って去っていく。

ふむ。

これは私ピンチではないかね?

結婚などしてしまったらまたあれこれ言われるし、一人でいる時間も無くなる。

両親にも軽く電話したが


「結婚式楽しみにしてるねー!」


と取り合ってもらえなかった。

いろいろ詰んでる。

困る。これは困る。

一人がいいのに。

うんうん唸っていたら新しくタイムマシンの開発の仕事を頼まれていたのを思い出した。

今の技術では絶対無理だから後回しにしていたがこれだ。

やるしかない。

それも結婚式なぞが始まる来週までに。


一週間後。

私はやってやったぞ。やってやった。完成した。イヤッフゥー!

いかん。徹夜続きで頭が上手く働いていない。

とにかくタイムマシンは完成した。

虚仮の一念岩をも通す。

多少配線のコードがバチバチ言っているが何とかなるだろう。

こいつを使って過去に戻ればいろいろやり直せるだろう。

さっそくポチッとな。


ガタガタガタガタ


うん?おかしいな?

いや理論上は特に問題ないはず。

このまま待ってたらすぐに、すぐに・・・

ギュイイイイン


ほら始まった。

転送されると共に


「どこへ行くんだいマイハニー!!!」


とか言う怖い言葉が聞こえた気がしたが気にしない。

そしてこれがタイムワープというやつか。

宇宙を凄いスピードで飛んだりするイメージだったのだが真っ暗だな。


『だってこれタイムワープじゃないし』

「うん?もう過去についたのか早いな。というか見たこと無い研究員だな」


男が一人立っているがこんな同僚いただろうか?

いかんせん顔をよく覚えてないので判断のしようがない。


『いやだからこれタイムワープじゃないってば』

「ふむ。じゃあ何だというんだね」

『キミがどうやったのか知らないけどこっちの世界に無理やり穴を開ける形で入ってきたんだよ。キミにとっては異世界ってやつだね。まったくどうしてくれんのさ』

「そうか、言いたいことは良くわからんが失敗だと言うのなら元の場所にでも戻してくれ」

『それが出来たら苦労しないよ。もうキミはこっちの世界に入ってきちゃったバグなんだ。本来は招待した人間だけが勇者として転生するはずなのに...とにかく案内するから向こう行っても無茶しないって約束してくれよ』


異世界だの言ってるがようは何かのタイムパラドックスか何かか?

よく分からないが案内するというからついていく。


『そこを通るととりあえずキミがあっちに行っても問題無い場所に送ったから。後は僕達のゲームの邪魔をしなければいい』

「よく分からんことだが、あそこを通ればいいのか?」


相変わらず人と話すのが苦手だ。

私は元の場所に帰ることを話しているのになぜか異世界の話になっている。

また私の話し方が悪かったのか?

やれやれ、少しは反省して人とコミュニケーションを取る方法を学びなおさないと。

とりあえずあの光る変な扉を通るか。


『じゃあね。ピュアちゃん。ぼくらの邪魔だけはせずに出来れば死んでくれ』


言われた場所を通るといきなり爆発が起こりました。

やっぱりタイムマシンは失敗か?

よくよく考えたら1週間で完成するような代物でもなかったか。

そして目の前には黒い大きな生物が立っていた。

また生物課のやつらがロマンと言う名の無駄をつぎ込んだ失敗作か?


「ふむ、見たこと無い固体だな?新しい生物実験兵器か?まったくこんなところで予算を使うぐらいなら私のところに寄こせとあれほど」


意思がある生物よりやはり機械のほうが扱いやすいではないか。

そしてかなり出来の悪い顔らしき部分を掴んで観察していたらその生物兵器が喋ってこう言った。


「あの、ちょっと離れてください。臭い」


失礼な。まだ風呂に入ってない期間が一週間だと言うのに。


ちゃんとヒロイン的な行動を取れるのかが激しく不安です。

鈍愛ちゃんって書くのと素直にピュアって書くのとて悩んでますね。


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