坊主VS化け物
いやー、血がドバドバ元偽りの勇者から出ております。
人ってあんなに血が出るものなんだ。
「びっくりしたー」
「ふむ、これ私達も逃げた方が良くないだろうか?」
「そっすね。何気にやばいかも」
先ほどの偽りの勇者を殺した男、良く見ると坊主頭です。
テカテカしてます。
「坊主か」
「坊主キャラですか。さっきもそれっぽいお経唱えてたし。ていうかあれこっちの神様的に言いの?」
「言いのではないか?何を信仰するか自由だろう?」
「そりゃ、元の世界じゃそうでしょうけど」
そして坊主頭の彼は腕に例の腕輪がついている。
転生者の一人だ。
「御仏よ、彼の者に安息を」
そして謎の言葉を呟いた後。
こちらに顔を向けてきた。
あれは走ってきてますね。
凄い形相で。
かなり早いですね。
「こっち来てるな」
「だねー」
「ですねー」
「友好的じゃないんだろうな、どうせ」
「だねー」
「ですねー」
「ダンボール君を差し出せば丸く収まるかね?」
「だねー」
「です...いや、辞めてくださいよ姉御!大体姉御にも腕輪ついてるでしょうが」
「駄目か」
「二人ともー、目の前まで来てるよ」
坊主頭急接近
かと思いきや目の前で足を止めて喋りかけてきた。
「お初にお目にかかる。そなた達も転生者とお見受けする」
「ど、ども」
「私は違うがな」
「僕も違うけどね」
なぜか挨拶しています。
あれ、思ったより友好的。
「そうですか。ですが世のため、人のため、ここで死んでもらいます」
そう坊主の男が言った瞬間、ダンボール君に一気に詰め寄った。
あまりの速さにダンボール君が反応出来ていなかった。
「うぇ!?」
そしてダンボール君の頭があった場所に坊主の手が伸び、また血の噴水を見る羽目になるかと思いきやお姉さんが動いた。
ダンボール君が捕まりそうになるその前に力いっぱい腹を殴って吹っ飛ばしていた。
「ゴハッ!」
生きてるかな、あれ?
大分遠くまで飛ばされたけど。
あ、岩にぶつかった。
「ご婦人、邪魔をされると困りますな」
「ふむ、見解の相違だな。私からはお前の方が邪魔をしに来たように認識している」
二人で睨み合う。
そういや、僕空気ですね。
と思っていたらお姉さんが僕の方に近寄ってきて、う、相変わらず臭い...
「はい、タッチ」
「う、タッチ?」
両手を僕の顔のマスクに張り手してきた。地味に痛いです。
「後よろしく」
「僕!?僕なの!?」
雰囲気的にあそこはお姉さんが戦う流れじゃないの?
と思ったら座りこんでしまった。
まさか面倒くさくなったから辞めたとかそういう理由じゃないですよね?
「そこの魔物よ、どきなさい。仏の道を歩む私にとって無益な殺生は好むところではありません」
「いや、さっき思いっきり殺してたじゃん」
「転生者は狩らねばなりません。例え私が地獄に落ちようとも」
「そですか。でも殺してたよね?」
何か良く分からない理由を言われても僕には分かりません。
今どいたらお姉さんを殺しますって言われてはい、そうですかと言うのもおかしいのではないか?僕はそう思うんだけど違うんだろうな。都会では
坊主が僕の目の前まで来てドスの効いた声で脅してくる。
「どきなさい」
「どけないです」
「なぜです?そなたは人間でも転生者でもないでしょう」
「僕は人間だ」
失礼な坊主だな。
「どうしてもどかぬというなら無理に通させえてもらうぞ」
そういって坊主が僕の仮面に手を置いてきた。
どうでもいいけど皆なんで仮面の部分ばっかり触れてくるの?
他のところも触れるよ?
ただちょっと怪しい黒いモヤが出てるだけであって。
「南無阿弥陀仏」
そう坊主の人が唱えた直後に僕の仮面が割れた。
「あー!最後の一個だったのに!!」
「バカな...なぜ生きている!?」
そして今度はむやみやたらに僕の体に触れてきた。
ええええ、男の人に触られる趣味無いんですけど。
ていうか仮面どうしてくれるんですか。
「なぜだ!なぜ死なない!」
「いや、触られても気持ち悪いだけで死にはしないと思うけど」
「くそ、こんはずでは」
「ね、とにかくやめましょう。というか辞めてください。気持ち悪いから」
「くそ、くそ!」
聞いちゃいない。
それにさっきの丁寧口調どこ言ったよ。
だんだんイライラしてきた。
そもそもこの人人殺しじゃん。
反撃しても問題ないでしょ。
未だにベタベタ触ってくるわけのわからない行動をする坊主の頭を鷲掴みにして、体を持ち上げた。
「ヒ、ヒィイイイ!化け物が!化け物があああああ!!」
坊主が空中で足をバタバタさせながら喚いている。
なんで僕がこんな風に言われなきゃいけないんだ。
大体人殺しはお前だろう?
『俺』が何をした?
本当の化け物はお前らだろう?
もう少し手に力を入れてみたらどうなる?
「あああああああああああ!」
ああ。
何でこんなことしてるんだっけ?
でもお前が悪いんだぞ。
獲物の分際で歯向かうお前が悪いんだ。
「そこまでだ。ミスプリ君」
「あ!?」
後ろを振り返る。
「そこまででいい。ミスプリ君、落ち着きたまえ」
炎の勇者?
あー、そんな奴もいましたね。




