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俺が、俺達が!炎の勇者だ!

勇者の識別方法、鳴き声

3人で一緒に人が逃げてきた方向に向ってみた。

『炎の勇者』が暴れていると叫んでいるので様子を見に行ったのだ。

ちなみに僕達と一緒にいた自称炎の勇者はというと


「んむー!!んむむむ!!!」


とりあえず僕の黒いモヤで縛っている。

ていうか地味に噛んでくるのを辞めてほしい。

すごい涎とか出てて気持ち悪い。

なぜこんなことをしているかというと僕らが彼を問い詰めたら


「いや俺、何もしてないっすよ!そりゃ勇者の名を使ってその辺りのチンピラをストレス発散でぶっ飛ばしたり、肩書き使って女ナンパしまくりましたけど、マジ俺何もしてないんですって!」


という怪しさ満点の自供をしたのでお姉さんに縛るように命じられた。

でもお姉さん、僕の黒いモヤがこういう使い方を出来なかったらどうするつもりだったんですか?

彼を抱きしめていろとでも?

想像したら吐きそうになった。


「んむー!!!」

「さて、もうそろそろ人がいそうなところに出てもよさそうだが」

「あ、お姉さん、広いとこに出れそう」

「んむー!!!」

「本当だな、そしておー燃えてる燃えてる」

「本当だ。やっぱこの人が犯人じゃないの?」

「いいや違うだろう。騒ぎが起こったのはあの放送の後だからな。どうせ『炎の勇者』なんて称号だから似たこと出来るやつがいっぱいいるんじゃないか?」

「え?じゃあなんでこいつ縛ったの?」

「念のためだ。だんじてうるさかったからではない」

「うるさかったんだ・・・ってもうこいつ離してもいいじゃん!」


無駄に僕も精神的ダメージが来たよ。

さっきまで縛っていたダンボールさんを離す。

その辺にゴロって転がしてあげると数秒してからノソノソと起き上がってきた。


「もう、俺、お嫁に行けない...」

「人聞きの悪いこと言わないでくれますかね」

「そうか、ミスプリ君、責任持って引き取ってあげるといい」

「!?」


冗談ではない。


「それよりも本当に燃えてるな。ダンボール君、キミ以外に炎を使う勇者はいないのか?」

「いや、分からないですけど、炎の勇者ではありえないはずです」

「なんで?勝手に名乗れば僕でも炎の勇者になれそうだけど」

「それなんだけどな、俺ら転生者は転生の時に神様からそれぞれ称号を貰えるんだよ。俺の場合は炎、他に有名なところだと『正義』、とか『嵐』だな」

「それがどうかしたのか?所詮称号だろ?」

「いやええとどういったらいいかな?他の人はその人を指す言葉として炎の勇者とはいえるけど自分を指す形でたとえば俺は『炎の勇者』だ!と名乗れないようになってるんですよ。だってこれがないと本当に勇者かどうかなんて分からないでしょ」

「じゃあ私が試しに自分が炎の・・・ほうこうなるのか」

「僕が炎の・・・おお、本当だ言えない」


何これ面白い。

つまりあの人はOOの勇者だ!とは言えるけど

自分がOOの勇者だ!とは声を上げて言えないのか。


「な?だから俺以外の炎の勇者が出るなんてことはありえないんだよ」

「やっぱりお前が犯人じゃないのか?」

「だから俺じゃ無理だってさっき時間の問題で解決したじゃないですか!」

「そうだった」

「あいたた、さっき剣で刺された傷が」

「いや、刺したのは悪かったけどなんともないのにそういうことしないで。俺を犯人にしようとしないで」

「化け物って呼ばれたときの心の傷が」

「本当にすまんって!今度なんか奢ってやるから疑うのやめてくれ!」

「奢りは確定としてこの阿鼻叫喚の現状をどうにかしたほうがいいのか?」

「いや、しましょうよ。流石にこれ放っておいて逃げるの人としてどうかと」

「うわ、あの人、めっちゃ燃えてる」


うわー、すごいなー。

あれ?人が死んでるのに何も感じない。

何か、もっと、こういうのは間違っている気がするんだけど。


「とにかく、俺助けに行きますよ。一応勇者なんで。助けたらポイントも貰えるだろうし」

「最後のが無ければ格好良かったのにな」


燃え広がっている方向に向おうとしたところで後ろから声が聞こえてきた。


「お、やっときた。もう逃げたのかと思ったよ『炎の勇者』さん」


炎の剣を纏った男が笑顔で後ろに立っていた。

自分で名乗りを挙げないと本物と認識されないってのも切ないですね。

つまりこれから出てくる勇者は全員・・・おっといけない

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