閑話 悪の花道
前回話の目的を次の話で書くと言っていたがアレは嘘だ。
いや、ごめんなさい。
でもこういう違う視点からの見ている人達の話が欲しかった。
今回は転生したときに魔王を選んだ二人の話。
「なぁ、なんでお前は転生するときに勇者じゃなくて魔王を選んだんだ?」
魔の城
魔王と呼ばれる魔族を束ねるものが住むと言われている大きな城。
その一つの城で二人の魔王が会談をしていた。
「急にどうしたんだ?」
「いや、こうやって他の転生者とまともに話すのが久しぶりでよ。勇者共は俺をイベントボスだの、経験地だの良く分からん理屈で殺しにくるから」
「あー、確かに、他の魔王共は引き篭もってるか内政してるかでお前以外と話す機会ないな」
「そうそう、つまんねーやつらだよな。たまに一緒に酒飲んでダラダラするのも悪くねーのによ」
「違いない」
二人の魔王が仲良く、酒を片手に語り合う。
「俺はさ、やっぱり勇者ってガラじゃねーからよ。人々のために戦う気もしねーし、人間が元々好きってわけでもないから魔王を選んだけどよ。お前はそこんどうなの?」
「そうだな。ゲームでもあると思うが勇者ルートが王道だとしよう」
「ゲームねぇ...んで?」
「でもそれは所謂イージーモードだ。ゲームに不慣れなプレイヤーやとりあえずゲームをクリアしたい人用のものだと俺は思う」
「確かにな」
「そこで魔王ルートだ」
「ハードモードってか?」
「そうだ。せっかく異世界なんて向こうじゃ手に入らないチャンスを手に入れたんだ。どうせならどこまでも未知を体験したいと俺は思う」
「はー、結構考えてんだな。お前は」
「そうでもない。なんだかんだ理由をつけて言ったが俺もお前と対して変わらない。人間嫌いの『元』人間ってだけの話だ」
「あはは、やっぱりお前とは気が合うな。どうも他の魔王や勇者共を見てると好きになれん」
「分かる」
「どんな奴らが転生してどんな人生送ってきたか知らないけどよ。結局は向こうの世界の豚共と一緒になってるのが分からんもんかね」
「勇者や魔王は所詮約束された地位、権力、単純な力だ。分かりやすい腐敗の元を簡単に手渡したらそこに固執するのは目に見えてる」
一人が外に出ようと手招きをし、二人はテラスのような場所に出る。
そして景色を見渡しながら言う。
「この世界は面白い。魔王も勇者もただのツールであり所謂『ブランド』だ。それであることに意味は無い。それで何を成すのかが大事だと俺は思う」
「何せ異世界だしな。知らない世界が一つ丸々あるから楽しいよな」
「そう、異世界。素晴らしい響きだ。それを俺らが来た元の世界と同じように腐った政治をしたり、技術開花をしたり、まるで金持ちになった状態で元の世界に戻りたいと言っているようなものじゃないか」
「嘆かわしいねー」
「だから俺らだけでも『悪』でいよう。元の世界の知識や常識が『正義』なら俺らくらいはこの異世界を純粋に楽しむ悪でいよう」
「そうだな、じゃあ『悪』に乾杯ってか?」
「ああ、『悪』に乾杯」
二人で酒の入った器を勢い良くぶつける。
「お、そろそろだぜ」
「あー、もうそんな時間か」
空に突然浮かび上がるスクリーンを見ながら二人の魔王が言う。
まるで前から今日そうなるのを分かっていたように
「「楽しいゲームの始まりだ」」




