僕は化け物じゃない
主人公がどんどん道を踏み外していく。
いや、考えている設定では間違っていないんですが。
うむ、どうにかなるだろう。
痛い、熱い、苦しい
なんで僕がこんな目に
恐ろしい、恨めしい、悲しい
なんで僕が、俺がこんな目に
そうだ。
全部目の前のこの人間がいけない。
僕を燃やしたな。
剣で俺を刺したな。
許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
あれ?違う?
そうじゃない。
『僕は』こうじゃない。
あれ?俺だっけ?どっちだったっけ?
なんでこんなに憎いんだろう?
なんでこんなに殺したいんだろう?
たかが燃える剣で刺されただけじゃないか。
「ちゃんと剣で刺してきちんと燃やしたのに生きてやがるとは。正真正銘の化け物だなこいつは」
僕を刺してきた男がまた剣を握りなおして今にも僕に切りかかろうとしている。
それってどうなのよ。
「僕、そこまでされるほど酷いことした?」
「ちっ、ピンピンしてやがる。知るかよ。こちとら楽な仕事だと思ってきてみればてこずらせやがって」
あー
あー駄目だ。
「ということでもう一回だ。今度こそ死ね!」
炎を纏った剣がもう一度僕の体を切り裂こうとする。
もう一度焼こうとする。
それは許せない。
許しちゃいけない。
「な!?」
炎を纏った剣を手で握り、折り曲げた。
「熱いなー、痛いなー」
「手で直接俺の炎を触って特にダメージが無いだって!?おいおいおいおい」
そしてもう片方の手でこの人間の頭を鷲掴みにする。
「いてぇ!くそ!この野郎!化け物が!!!」
「僕は化け物じゃない」
「くそっ、離しやがれ!」
「僕は化け物じゃない」
分かってくれるまで丁寧に、怒らずに。
そうだよ、ちゃんと怒らずに相手に伝えたいことをはっきりと。
「僕は化け物じゃない」
「ぐあ!頭が!!ちょ、待った待った!!」
こちらが真剣だと伝わるまで何度でも
「僕は化け物じゃない」
「やめろ!頭が!頭が割れる!!悪かった!俺が悪かったから!!!」
もっと真剣に、もっと丁寧に。
分かってもらえるまでいつまでも
「それぐらいで辞めとくといいと私は勝手ながら思うがな」
女の声が聞こえる。
どこかで聞いたような。
とても甘美なメスの。
あー
食べたいなー。
「そういう目で見られるのは好きではないかな」
少し油断していたらその女に殴られた。
体が吹っ飛び、意識が遠のく。
最強はヒロイン。
間違いない




