炎の勇者
せっかく私がこんなに喋ってやっとのことで人がいるところに向おうとした矢先にぽっとでの変質者が化け物君を刺していた。
何してくれてんだ。こいつ。
「よし、終わり!なんだ見た目だけで大したこと無いじゃんこいつ。やっぱ下っ端冒険者の証言なんてあてになんねぇな」
「ちょっとそこのキミ?」
「お、大丈夫だったか姉ちゃん?俺がいなきゃ危なかったな。あー、お礼とか本当そういうのいいから!勇者として当然ってだけの話で」
「「いやお礼とかではなく、ちょっと何を」
「そしてどーしてもって言うならしょうがないな~。俺も男だし一晩の熱ーい夜を一緒に過ごしてもって臭っ!なんだこの匂い?ドブのような匂いがするぞ!」
とりあえず殴っておこう。この世界の住人は乙女に対しての礼儀がなってない。
一発軽く腹部にパンチを入れたら相手の男が吹っ飛んでいった。
「グハッ!?なんだなんだ?なんで俺が攻撃されてんだ?なんで俺が吹っ飛ばされてんだ?ありえないだろ?常識的に考えて」
「あー。むかついたので思わず殴ってしまったがまず話をしよう、平和的に。ラブアンドピース」
「どこの世界に殴ったやつと平和的に喋ろうと思う馬鹿がいるんだこのアマ!ラッキーなのが入ったからって調子乗んなよ!」
「あー、なんでこうも会話が上手く行かないんだ。何がいけないのかが分からない」
本当、異世界だろうがなんだろうが普段と変わらないじゃないか、引き篭もりたい。研究室が懐かしい。
「とりあえずなんでさっきの彼を刺したんだ?この世界じゃ殺人罪とか傷害罪みたいな法は無いのか?なんという世紀末」
「あっ?んなもん人間のためにあるもんだろうが!こんな化け物にそんなもんねぇよ!」
「だが彼は言葉を喋るし何より意思の疎通が可能なんだが、何より彼自身が人間だと言っていたぞ」
「なんだなんだ?化け物に騙されたか洗脳されたクチか?意思疎通だろうがなんだろうがあいつが化け物に変わりはねぇだろ?あんなのが人間だと認識出来るほうがどうかしてるぜ」
「ふむ、なるほど。で、仮に化け物だったとしてなんで殺すのだ?いちいち殺してたらきりが無いだろう?」
「ちっ、たく。何お前?なんでこれがそんなに気になるわけ?お前の言うところの人間に対しての傷害罪だよ傷害罪。冒険者二人の腕がやられてんだ。賞金かけるには十分だろ?」
「証拠は?」
「あ?必要か?そんなもん」
なるほどなるほど。
「そして賞金も懸けられていると。なるほど。ますます私のいた世界と大差無く、つまらないな」
異世界だというから期待してたのにくだらない。
「お前さっきから何言ってんだ?まさか転生者っ」
「ところでキミ」
「あん?」
「彼は多分あの程度じゃ死なないよって言っても手遅れかな」
「は?」
だって彼あんなに燃えてるのに
「嘘だろ?確かに俺の剣で、俺の『能力』で刺したのに」
まだ動いてこっちに向ってきてる。
「ありえねえありえねえありえねえ!なんだあれは!」
そしてやっぱりこっちの男より彼の方が
「ふむ、興味深いな」
なんとかやっと彼を出せた。
個人的にそこまで嫌いじゃないんですがね。




