閑話、黒色
今回は閑話
とある部屋のとある時刻。
『人体』らしきものを楽しそうに切り刻んでいる女とそしてそれを退屈そうな顔で見守る眼帯の男が話している。
「ねぇ、色ってさ、最終的にはどう混ぜても黒くなるんだよね」
「何の話だ?」
「色よ色。最初はいろんな色でも最終的には全部黒になるんだよ」
「それがどうかしたのか?別にどうでもいいだろ」
「どうでも良くはないよ~。どうでも良くはないのさ。これは凄いことなんだよ。最終的に色を重ねていくと必ず黒になる。必ずだよ必ず」
「必ず黒くなることの何が凄いんだ?」
「つまりだよ、理論的には黒という色は『全部』の色を持ち合わせることも可能ということじゃない?これって凄いことなんだよ。一つの色だけじゃなくて全部だから」
「あー、まぁそういうことになるのか?そういう小難しい考え方好きだな相変わらず」
「考えることは楽しいことだよ~。でも残念なところが一度黒にしたら元に戻せないのと一度黒に染めると他の色のいいところも消えてしまうんだよ」
「なぁ、もう一回言うがこれ何の話だ?周りくどいのはよせ。頭が痛くなってきた」
「まぁまぁ♪でね。黒という色に他の色の特色を見せるためにはどうすればいいと思う?」
「どうすりゃいいんだ?」
「一つは黒という色が固定された後に全部また塗りつぶす。でもこの方法は好きじゃない。美学が足りないよ。だったら最初っから黒にしなければいい話なのにね。後からそれを無かったことにするのはルール違反じゃない?」
「知るか。もう一つは?」
「もう一つはね~、うふふ、何だとお・も・う?あ、ごめんちょ、剣は抜いちゃだめー!!」
「早く言え」
「せっかちだなぁ、そんなんじゃ女の子に嫌われるぞ♪あ、はい、言いますから無言で剣抜くのやめて。簡単なことなんだよ」
女性はニタリと笑い、こう続ける
「全部混ぜなきゃいいのさ。ところどころに色が上手く混ざらない部分は絵を描いててもあるでしょう?虹のように別れて色を描いて、虹ではないように混ざり合うところを繋ぎ合わせる」
「塗りつぶすのとどう違うんだ?一緒じゃねぇか?」
「違うよ。全然違うよ。塗りつぶすのはそこにあるものを強制的に自分の望んだものにかえる。黒にもいいところがあるのにまるでそれは唯の下地のキャンパスのように。だから混ぜる。混ぜた方が自然に黒に染まり、染まらない部分が出来る。こっちの方が絶対に黒の良さが綺麗に出るよ~」
「はいはい、で?何の話だって言ってるんだが?」
「色の話。人も魔族も勇者も魔王もモンスターも、皆良い『色』を持ってると思わない?」
例え話は難しいと思う今日この頃です。




