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獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
番外編 7さい:一致団結した運動会
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~にくいあんちくしょう~

秋です。運動会ネタです。

いえ、この連載書き始めた頃からやろうとは思ってたんですが。

……何か希望するネタがありましたら、感想欄にどうぞ!

今週以内のご意見であり、今後の展開に障りが生じそうにない範囲内でしたらある程度ご希望に添えたい所存であります。



 季節もいつの間にか移ろって、気がついたら早々夏の終わりももう間近。

 今、私達は『運動会』的な行事に向けて練習しています。

 1か月後には『運動会』!

 今世では運動性能の高いメイちゃんも、とっても楽しみです!

 わぁい、みんなでがんばろー!


 ……と、そう最初は平和的に考えていたんだけどね?

 私達のクラスって、意外と血の気が多いことが発覚しました。


 主犯はミーヤちゃんなんだけどね!


 事の経緯はこうです。

 お隣のクラスの、私達にとっては不愉快な思い出の象徴。

 まあ、ロニー君のことだけど。

 私達もあまり関わりたくない相手だけど、今回のことでクラスの大半の相手がロニー君に苦い感情を抱いていることが発覚しました。

 無意識の選民思考と侮蔑が透けてたら、好んで相手したがる訳ないよね。

 無意識っていうのが、また性質が悪いんです。

 本人、無自覚だからなぁ……親御さんのご立派な『教育』が目に見えるようですね!

 優等生で挫折を知らなさそうだし、1度完膚なきまでに鼻っ柱を粉砕しておいた方がロニー君の明るい未来の為かも知れません。

 そんな、ロニー君。


 彼がまたやってくれちゃいました。


 そもそもオリエンテーリングの時のアレコレで良い印象なんて欠片もないんだけどね。

 さすがに列の横入りと、支給されるお道具の横取りはいけないと思います。

 それも目に余る態度だったっていうんだから、やられたクラスメイト達は超・憤・慨……!

 どうもオリエンテーリングのアレコレで、アドルフ君達がロニー君に舐められ対象(無意識)になっちゃったらしく、アドルフ君やその子分くん達が相手となるとやりたい放題で。

 うん、すっごい迷惑!

 運動会の準備で忙しいのも、木材やら横断幕やらペンキやらが足りないのもどこだって同じなんだから!

 そこに『自分は優先されて然るべき』みたいな態度でしょう?

 そりゃあ怒らない訳にはいかないよね。

 クラスごとに応援旗を作るって話なのに、物資を奪われてどうしろっていうんでしょうか。

 そもそも規定内の量で完成させようよ!

 彼の為にミルフィー先生が自腹を切るのかと思うと……!

 うん。殺っちゃれ、ミーヤちゃん。

 流石に学校で双方の合意じゃない暴力事件はマズイので、精神的恥辱の渦に叩きこむ計画だそうです。

 メイちゃんも一枚噛んだんだよ!


 運動会とはいっても、前世の世界とはちょっと違う。

 この行事の目的は、露骨に『生徒達の身体的発達の段階確認』という堅苦しい理由の上に形成されています。

 だからプログラムも結構少ないよー。

 各学年に長距離・短距離走に綱引き、重量上げ。

 午後になったら学校で習った武術の型を使って演武の披露。

 1年生はまだ戦闘の授業も受け始めたばかりだから大したことないんだけど、2年生は全員で一斉に同じ型を実演してマスゲームみたいな感じになるみたい。

 3年生は実力の近い相手と2人1組でやるから、ちょっとした試合みたいに見えるんだって。

 そうなると1年生の間はあんまり楽しくないかなぁって思ったメイちゃんは悪くないと思う。

 でもやれることが少ない分、楽しいイベントもありました。

 まさかこれだけのプログラムで、丸1日を費やせるはずもないよね?

 うん、実はプログラムって、これだけじゃなかったんです。


 なんと!

 各クラス1つ、プログラムの案を出す権利があるんだって!

 選ばれる数は片手の指で数えられる程度だけど……

 俄然やる気になりました。

 

 そこで私が熱弁をふるった結果、我がクラスの提案するプログラムメニューは『障害物競争』で決まりです☆

 勿論最後に、札を引いて書いてあることを実行しなきゃいけないヤツ。

 絶対に楽しい。

 そう思っていたら、ミーヤちゃんが悪魔の提案をしました。


「これ、選民馬鹿(ロニー)を嵌めるのに使おうか」


 その時の実に楽しそうなお顔は……うん、小悪魔そのものだったよ。

 流石はミーヤちゃん。

 双子の小悪魔ちゃん達の、お兄ちゃんだけあります。


 ミルクをお腹一杯飲んだ子猫みたいなお顔で、策を練るミーヤちゃん。

 私達はぶるりと身震いしながら、全開の笑顔で協力しました。

 ロニー君、御愁傷様……。



 そして、来る運動会の開催を待ちわびながら。

 ロニー君を嵌める下準備として、クラス一丸となって動き始めました。

 かつてない団結力……!

 前から物欲やら商売っ気やらに底上げされて協調性は高めなクラスだったけど、今度は何というか……レベルが違います。

 共通の敵が団結する一番の要因だって、本当なんだね。

 ロニー君を陥れる。

 ただただその一事に向かって、私達のクラスは未だかつてない団結力を発揮して運動会に挑みました。

 目標はロニー君の心と高い鼻っ柱をばっきり折ること。

 それからクラスの総合優勝で大差をつけてロニー君のクラスに勝つこと。

 完膚なきまで、完璧な勝利!

 なんて気持ちのいい言葉なんだろう。

 絶対に、手に入れて見せます……!




 そうして、来る運動会(しょうぶ)の日はやってくる。


 ロニー君の心を、赤っ恥で真っ赤に染め上げる為に。

 ミーヤちゃんなんて、この日の為に色々我慢していたしね。

 仕込みの為に運動会の実行委員になった私とペーちゃんにとっても、忙しい日々だったよ……。


「メイちゃーん、頑張れ!」

「うん、適当にがんばるー」


 クラスメイトの応援を受けて、私はそっと……

 障害物競争の札を摩り替えました。

 事前に用意した札は、全部先生達のチェックを受けた無難なお題ばかり。

 でもそんなのつまらないし、それじゃあ目的も達せられない。

 だから競技の直前になって、そっと入れ替えました。

 ロニー君の走る順番も確認済みだよ。

 もしも万が一先生達に怒られるにしたって、回収されるまえにロニー君が走る予定です。

 他の実行委員にも根回しは既に完了済み。

 きっと上手くいくと信じるよ。



 さて、みんな覚えてるかな!

 ……ロニー君の、初恋がさぁ。

 相手、ミーヤちゃん。しかも現在進行形。

 ミーヤちゃんはミーヤちゃんママの趣味で、女の子みたいに長い髪の毛を垂らしています。

 お顔もママさん似で女の子みたいだし、服装もちょっと中性的。

 だからもまあ、仕方ないのかもしれないけど。


 ロニー君はミーヤちゃんを女の子だと勘違いしました。

 勘違いして、初恋に落ちました。

 ついでに言うと、まだ勘違いしたまんまです。


 そこを巧妙について、心をへし折る機会を虎視眈々と狙っていたミーヤちゃん。

 今回の障害物競争、最後のお題は……ミーヤちゃんの指示で、恋愛系もしくは恋愛と錯覚しそうな系統の札を多分にご用意致しました。

 ロニー君の運命は……半ば予想ついちゃったかな。

 


 そんな訳で、午前中の内に障害物競争の順番がやってきます。

 各学年ごとに分かれ、各クラス2名の合計6人ずつ1度に走ります。

 栄えある第1回目の走者の中に、前情報の通りロニー君がいました。

 そっと実行委員席に合図を送る、ペーちゃん。

 メイちゃんは合掌して彼の冥福を祈るよ!

 最初に走る1年生達の為に、実行委員の3年生達がせっせと札を並べていました。

 さーて、ロニー君は何を引くかなぁ。

 ロニー君の走る順番時に並べるよう、みんなで選んだ札はこちら!


 ・好きな子に愛の告白をする(いなければ校長先生)

 ・好きな異性のほっぺにキスをする(いなければサリエ先生)

 ・好きな異性と手を繋いでゴールする(いなければサリエ先生)

 ・理想に近い異性に抱きつく(いなければ校長先生)

 ・好きな異性に跪いて手にキッス(いなければサリエ先生)

 ・好きな子とお姫様だっこでゴールする(いなければサリエ先生)


 ……中々にえげつないね!

 特に、該当者がいなかった場合の指示が……

 なんだろうね、この高確率でサリエ先生を巻き込む死の選択肢。

 どれを拾っても地雷の匂いしかしない。

 私と同じく、既に用意された札の内容を知るミーヤちゃんとペーちゃんも興味深げに成り行きをじっと見守っています。


「さぁて、ロニーはどれを引くかなぁ」

「あ、ははは……カミングアウトするか、先生に××するかって究極の選択じゃねーか?」

「ロニーが自分に正直になっても面白いけど、勇気が出せないチキン野郎になり下がっても面白いでしょう?」

「ミヒャルト……恐ろしい奴」

「ふっ……褒め言葉と受け取っておくよ」


 そう言って、澄まし顔で薄く微笑むミーヤちゃん。

 内容的に凄い自爆ネタでもあるんだけど……。

 相手に致命傷を与えるためなら、自虐も辞さない姿勢が潔すぎる。

 うん……メイちゃんも、ミーヤちゃんを敵に回したくはないなぁ。






ミーヤちゃん……おそろしい子っ!

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