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獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
7さい:アカペラ第1初級学校の夏
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5-15.合宿の結末5 ~類は友を呼ぶそうな~

本当に、中々終わりません……



 今は休暇中の、パパとミーヤちゃんママ。

 でもどうやら、近くまで来てたっぽい。

 というか多分、親馬鹿(パパ)が我慢しきれなかったんだと思う。

 初日は水練実習に付き合ってくれる軍人さんの中に混じってたけど、それ以降はママや双子ちゃんへのサービスに専念しているのか来なかったので、油断してたよー……。

 まさか最終日になって、再びやってくるなんて。

 それも、双子ちゃん'sまで連れて。


 恰好を見るに、たぶんピクニックかな?

 この様子じゃあ……きっと近くにママやミーヤちゃんパパもいるんだろうなぁ。

 ……なんでよりによって戦闘職全開のパパとミーヤちゃんママが双子ちゃん'sを背負ってるタイミングでぶつかっちゃったの……っ


 私達は知らなかったけど、このカニ(×6)の存在はちゃんと軍人さんや警備隊員さん達にも把握されてたんだって。

 でも本来なら子供達に魔物を寄せ付けないように身体を張るべき軍人さん達の囲みを、このカニさん達は突破しちゃったの。

 ……これも、セムリヤ歴1,111年が近づいている、余波……なのかな。

 このカニさん達は、本来ならこの辺りにいるようなレベル帯の魔物じゃなかったらしい。

 最近、森で異常発生した強い魔物を討伐し終わって、油断もあったって。

 つまりこのカニさん達は、討伐隊の狩り残し。

 湖の中に隠れていたから、取りこぼした魔物。

 また運の悪いことに、このカニ達が現れた場所の警備を担当していたのは、軍人さんの中でも新兵に当たる人達で。

 ……いつもだったら、雑魚しか出ないような潮溜まりから現れたんだって。

 どんな想定外のことにも対応するのがプロの軍人さんだけど、新兵さん達はまだまだ未熟。

 あっという間に囲みを突破されて、こんな失態に繋がった。

 

 魔物に囲みを突破されたってだけでも大変だけど。

 運悪く、そんな魔物(カニ)(×6)と遭遇しちゃったのがメイちゃん達。

 魔物が囲みを抜けた時点で、上司や腕効きに伝令が走ったらしいけど。

 そんな最中、ちょっとだけ職権を乱用して、偶然(・・)近くの小島までピクニックに来ていた英雄さん達がいた訳で。


 うん、メイのパパ達だよね。


 どうやら最終日だから、メイ達の様子を皆で見に行こうって企画だったらしいよ。

 家族みんなで、メイ達を見に来たんだって……。

 パパもそうだけど、ママも寂しかったんだと思う。

 この世界に生まれてから、7年。

 メイはほとんど家から離れないで、誰かの家へのお泊りも緊急時以外にしたことなかったもん。

 誰かの家に泊まるって時は、大概ママも一緒だったし。

 だから、ママもメイのことが心配だったんだって。

 それに何より、生まれてからずっと夜は一緒にいた(メイ)の不在を、ユウ君とエリちゃんが不安がったらしい。

 メイに会いたいって、毎日何回も言ってたって……!

 く……っ双子ちゃんが可愛過ぎる!!

 なにこの可愛いイキモノ……っ


 そんな、訳で。

 より近くでメイ達の状況を窺うべく、パパとミーヤちゃんママがこっそり出来る限りの接近を図るべく。

 そしてその状況で双子ちゃんに私達の姿を見せてあげるべく。

 ……おんぶ紐でそれぞれが双子ちゃんを背負った段階で、伝令が走ってきたそうな。

 丁度都合よく休暇の筈なのに近くに来ている、10年前の英雄さん……そして魔物対策本部のお偉いさんである、パパ達に。

 想定していなかった魔物の急襲という非常事態を知らせに。


 ……結果、詳しい状況報告を受けたパパ達が暴走したそうな。


 そこは冷静になろうよ、10年前の英雄さぁん!!

 ほ、本当にこの(・・)パパ達が10年前の戦争で大活躍、したの!? できたの!?

 とりあえず子供を背負ったまま魔物の群れに突っ込むのは駄目だと思う。

 状況判断の大切さを何処で忘れてきちゃったの?


 実際にこんな悠長に状況の説明なんぞしている余裕は、なく。

 私とミーヤちゃんはあわあわと、それぞれの親の背中から高速で弟妹をひっぺがしました。

 このままだったらき、危険すぎる……っ


「ねぇたんだ! ねぇたんに、ぎゅうっ」

「ねぇね、ぎゅー……」

「状況の危険度測れないのは仕方ないにしても、もうちょっと空気読もうね!? お姉ちゃん涙目!」

「にぃにー、こーちゃんもメイねぇねがいぃー!」

「ゆうたんとえりたんとあしょぶのー!」

「ちょ、おいこら、おとなしく、して……っ」

「み、ミヒャルト……? 手伝うか?」

「スペード、ちょっとコーネリアの方お願い!」

「みゃははははっ あー、わんわんにぃにだ!」

「わんわーん♪ わんわんわわーん♪」

「ぐぉっ ふ、2人がかりで耳狩りにきやがった!!」

「あ、こら! ユフェイネはこっち!」

「みゃぁんっ♪ ちゅっかまらにゃいもーん!」

「く……っ 悪戯ちびどもめ!」


 ………………メイの弟妹、ユウ君とエリちゃんで良かった!

 メイちゃんのとこのユウ君とエリちゃんは大人しい子で大助かり。

 だけど余所の双子ちゃんはこうもいかないみたい。

 いつもながらネコちゃん家の双子ちゃんの激しさというか苛烈さというか、悪戯好きの自由っぷりに戦慄します。

 うん、ミーヤちゃんが1人で手を焼くのも当然だよね……。

 あんな風に慌てるミーヤちゃんは、妹ちゃん達のお世話をしている時くらいしか見られません。

 見かねてペーちゃんがお手伝いに行っちゃうくらいだし。

 でもそのくらい、ネコちゃん家の双子ちゃんってお世話大変なんだよね。

 今も、ほら……ペーちゃんの耳と尾っぽを2人がかりで同時に噛み噛みしてるし……ペーちゃんも狼姿のままだったから引き剥がすのが大変そう。

 慌ててミーヤちゃんが引き剥がそうとしているけれど……。

 あ、顔面に飛びかかられた。


 あの双子ちゃんを1人でいっぺんに面倒見切るのは、それこそ親達くらい。

 基本はちょっとおマセだけど可愛い子ちゃん達。

 だけど悪戯がちょーっと凄いんだよねぇ。

 将来は小悪魔になりそうな片鱗がちらほら見えるよ。

 でもミーヤちゃんもミーヤちゃんで、やっぱりしっかりお兄ちゃんなんだよね?


「く……っもう、ユフェイネ、コーネリア! 伏せ!!」

「「!!」」

「え、ちょ……ミヒャルト君、それ犬の躾じゃないかい!?」

「でも従ってるわね、あの双子ちゃん」

「可愛いけど、激しいね……」

「馬鹿犬、いつまでアドルフを乗せてるつもり? ちょっと元の姿に戻って手伝ってよ」

「いや、別に良いけどさぁ……って馬鹿犬言うなや」

「わんわ! わわーん♪」

「しっぽ! しっぽちょーだい!」


 わたわたと忙しなく、ちょろちょろ。

 この危険地帯でこりゃやばいと思ったんだろうね?

 自然と、他のお友達たちも双子ちゃんの確保に手を貸しています。

 ん? ユウ君とエリちゃん?

 うちの双子ちゃんだったら大人しいものだよ。

 何日も顔を合せていなかったのがよっぽど寂しかったのか、2人ともメイにぎゅっとしがみ付いて離れないし。

 うふふ、メイちゃん慕われてるー!

 それでも此処が危険なことには変わりないので、万一にもはぐれてしまわないよう、私は抱っこにおんぶの体勢で急いでくるくるとおんぶ紐を巻き付けました。

 背中にユウ君、胸元にエリちゃん。

 わー……赤ちゃんサンドウィッチだ❤

 柔らかくってふにゃふにゃであったかい、おチビちゃん達。

 ミーヤちゃん達とは違って平和そのものな感じで、メイちゃんも状況を忘れて和みそうになっちゃった。


 そうこう、している間に。

 猫さんの双子ちゃんはどうやら一同の中にラッツ君とダニー君が……鼠獣人のラッツ君と鳥獣人のダニー君がいることに、気付いてしまったらしく。

 きゅぴーんと瞳を、光らせて。

 2人の意識は、ラッツ君とダニー君にロックオン☆

 大変なことになりかけた。


 ……なりかけたけど、襲おうとしたところを親分のアドルフ君が捕獲に成功して、何とかことなきを得ました。


「おいミヒャルト、お前の妹どもだろうが! もうちょっと躾とけ!」

「アドルフ、後は任せた。妹達のことをよろしく」

「って丸投げすんなこらぁ!?」

「もじゃもじゃすごーい!」

「もじゃもじゃはやーい!」

「もじゃ……っこの腕は部分獣化してるだけでいっつも毛むくじゃらな訳じゃねえ!!」


 このことで子分2名がますますアドルフ君に心酔したりだとか、鮭を狩る熊の要領で双子を捕獲したアドルフ君の手際が素晴らしかったりだとか。

 結果的に自分達を捕獲に成功したアドルフ君のことを双子ちゃんが「おやびん」と呼び始めるのは……完全に予想外でした。

 またアドルフ君にお世話を押し付けようとミーヤちゃんが画策して……うん、アドルフ君おつかれ!


 しかし、類は友を呼ぶって言うのかな。

 ……うん、なんだろうね。

 突如親に連れられて現れた、弟妹の来襲。

 そんな目に私達だけ遭うのは……不公平だよね?




「シュガーソルト! クルシュシュ! 悪い、待たせた!」


 張りのあるお声と共に、新たな乱入者がやって来ました!

 ざぱーっと湖の水を掻き分け、沖から一直線にやって来ました!

 それは、やっぱり見慣れた姿で。

 でもパパやミーヤちゃんママとは違って、単体?じゃなく、何人もの軍人さんや警備隊員さんを率いての登場です……!


「……げ」


 その見慣れ過ぎた姿に、ペーちゃんの顔が引き攣りました。

 うん、気持ちはよくわかるよ。ペーちゃん。

 とっても、凄くね!


 どうやら殲滅する為の人員を連れてきたらしい、その人。

 カニ(×6)が隙をついて私達子供を襲わないよう、2人で周囲を警戒し、カニを牽制していたパパ達。

 多分、足の速い2人は討伐部隊が来るまでの時間を稼ぐ為に取るものも取り敢えず急いで来てくれたんだと思う。

 ……うん、流石におチビちゃん達は置いて来てほしかったけどね!!

 それだけ慌て、急いでくれたってことなんだろうけれど……明らかな失敗から目を逸らしながら、それでも確実に子供を保護していた大人2人。

 パパ達は、新たに現れた味方に声をかけました。

 先頭に立って人員を率いてきたのが、よく知る相手だったからです。


「クレシア! 兵は揃ったのか……流石に仕事が早い」

「遅れようもんなら、あたしがぶっ飛ばすからね!」


 そう言って、にやりと獰猛に笑う姿はまさに肉食!

 無造作に伸ばされた赤メッシュの茶髪を振り乱し、胸を張る堂々たるナイスバディ! そんなところも肉食っぽい!

 ……ペーちゃんの、ママです。


 → 狼女戦士(アマゾネス) が あらわれた!

 クレシア・アルイヌ(30) Lv.68

 装備:ククリ刀

     革の胴衣

     荒縄 ←


「か、かーさん……」

「ヘマを踏んだね、スペード。怪我はないようだけど……合宿が終わったら鍛え直してやっから逃げるんじゃないよ」

「うわぁ」


 ペーちゃんが、超絶微妙なお声で呻きました。

 気持がよぉくわかる私とミーヤちゃんの2人で、うんうんと頷きながら肩をぽんぽんと叩いてあげました。

 

 なんだかんだと、子供思いなパパママさん達。

 それは間違いありません。

 うん、間違いはないよ?

 ないんだけど……


「……はっ ま、まさか母さんまでチビ共……ジャックとエース連れて来てたりしねぇだろうな!?」

「はあ? 何言ってんだい、って……」


 うん、そこの確認が最も重要だよね!

 わかる! わかるよ、ペーちゃん!

 だって2度あることは3度あるって昔の人が言ってたし!!

 私達にとっては展開的に納得の懸念も、ペーちゃんママにとっては不審この上ない疑いだったみたいで、思いっきり怪訝な顔をされちゃったんだけど……

 ……メイのおんぶに抱っこした双子ちゃんと、ミーヤちゃんとペーちゃんの背中に紐で固定された双子ちゃんを見てペーちゃんママの顔が引き攣りました。


「……お、おい? シュガーソルト、クルシュシュ……おまえたち」

「そんな顔をするな、同類」

「そうだな、クレシア……お前にそんな顔をされる謂われはないぞ」

「はあ!?」


 胡乱な眼差しを注ぐペーちゃんママに、何故かしたり顔で返すパパとミーヤちゃんママ。

 なんだろう? 何か言い含むモノを感じ……


「って、うわぁ!? かーさん!!」


 ソレを発見して、ペーちゃんが悲鳴を上げました。

 彼の視線は、そう……がっちりと、ペーちゃんママの背後に伸びております。

 といっても、背中じゃないんだけど。

 ペーちゃん……君は、一体何を見つけたんだい?

 どうにも嫌な予感しかしません。

 何となく、展開が読めるのが非常に悲しいけれど。

 でも目を逸らしている訳にもいかないし。


 私達は顔を引き攣らせながらも、ペーちゃんが指さす先へ逸らすことの許されない眼差しを向けました。


 果たして、そこにいた(・・)のは。


「ぶくぶくぶくぶく……」

「がぼっがぅぅがふっ」


 …………湖にぷっかりと浮かぶエース君と、がふがふ藻掻いて溺れかけてるジャック君。

 ペーちゃんの弟の、双子くん達がそこにいました。

 良く見るとその体には荒縄が縛り付けてあって、真っ直ぐペーちゃんママの引き締まったお腰に繋がっています。

 うん、隠しようのない証拠発見。


「じゃ、ジャック! エース!! しっかりしろよ、お前ら!?」


 ペーちゃんが弟君達の無残な姿に、泡を食って駆けつけます。

 今の今まで緊迫と大慌てで気付いていなかったらしい警備隊員さん達や兵士さん達も更なる大慌てのどん底です。

 大急ぎで救出されたイヌ科の双子君達は、地獄から帰って来たような顔をしていました。

 2人で肩を寄せ合い、尻尾を巻いてカタカタ震えています。


「に、ににににーちゃん!」

「おおお俺ら助かったのか!?」

「お前ら、もう大丈夫だからな……っ」

「にーちゃん、俺、怖かった!!」

「死ぬかと思った、もうマジで!!」

「俺なんて三途の川見えたし……!」

「俺だってなんか花畑が見えたわっ」

「「そんで向こうで死んだひぃじいちゃんが旗ぁ振ってた!!」」

「弟達が臨死体験しとる!? しっかりしろよ、お前達!」


 わぁ……ご兄弟そろって耳がぺたってなってるよ。

 ナニか縋るものがほしいのか、双子君はペーちゃんにしがみ付いています。

 ひしっと掴んだお兄(ペー)ちゃんの腕は当分離せそうにありません。

 ああ余程、酷い目に遭ったんだね……。


「かーさん!!?」


 ペーちゃんの非難が滅茶苦茶込められたお声に、ペーちゃんママも顔を引き攣らせ、気まずそうにおろおろ。

 耳がぺったりなって、尻尾が動揺からあわあわしています。

 うん、全く内心が隠せてない様子。

 狼狽しながらも、ペーちゃんママは白状しました。


「じゃ、ジャックもエースも泳げないって言うからな? 泳ぎ方を身体に叩きこもうと訓練してやってたんだが……途中で知らせが来て、縄を解くのを忘れてたみたいだ」

「Oh……母さんのスパルタ特訓中だったのかよ」


 家族として、兄として。

 色々と兄弟の先達として思い当たる節があるのでしょう。

 そう言えばペーちゃん、合宿の当初からある程度泳げたもんね!

 時々(たま)にペーちゃんママの『強化合宿』とやらで数日姿を消すことのある、アルイヌさん宅のご兄弟。

 その間何をやっていたのか、一端が垣間見れちゃったような……

 

 アルイヌさん宅の『水泳の特訓』は、ママさんの身体に荒縄で繋がれたまま、ママさんによる色々な意味で耐久力の試される水泳に付き合わされることだそうです。

 ペーちゃん達は四つ子ちゃんだったので、苦しみも4人で分け合ったみたいだけど……双子ちゃんは2人で耐えきるには、ちょっと大変だったみたい。

 ただ泳ぎまくるママさんに引っ張られるだけでも、手加減してもらえないとこうなるんだね。

 

 とりあえず、メイとしては言いたいことがあります。

 うん、この流れなら言わずにいられないよね?

 ひとまず言わせて下さい。


 ぺ、ペーちゃんママ(ブルータス)、お前もか……っ!!





あと書きたいのは戦闘シーン的なエピソード。

残り1話か2話で合宿編を切り上げたいところです。

……できればの話ですが!

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