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獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
5さい:修行開始の鬼ごっこ!
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1-2.必要なもの→

ストーカー予備軍、現役ストーカー、どちらも始動!



 ストーカーになるため、必要なものは何かな?

 未来への準備として、まずは手に入れるべき要素を考えてみました。

 お絵かき用の画用紙に、クレヨンで箇条書きにしていきます。


 ・強靭な肉体

 ・何物にも折れない心

 ・ラストダンジョンでも挫けない戦闘能力

 ・気取られず、先回りを可能とする用意周到さ

 ・Lv.カンスト主人公にも気取られない隠密技術


「えーと…あと、何が必要かなぁ」

「め、メイちゃん? 何をしているのかしら~?」

「あ、ママ! あのね、メイね!」

「うんうん、どうしたの?」

隠密(ストーカー)になるために大事なことかんがえてるの!」

「まだ諦めてなかった!?」


 がーん、と。

 そんな効果音が付きそうな顔で、母。

 

 ストーカーなんて、両親にとっては心臓破り以外の何物でもない単語だし。

 親の心臓に負担をかけないため、私は両親に将来の夢は「隠密」だと主張することにしたんだけど…十分、母には受け入れがたい将来の展望だったみたい。

 

「あのねぇ、ミーヤちゃんとペーちゃんと、かっこいい隠密になるの~!」

「メイちゃん…今度、獣人の女の子達がいるところに遊びに行きましょうね……」

「うん!」


 とりあえず、現在は本気ではなく友達間の遊び…

 ……を装って準備を進めるつもりでいます。

 まあ、本気なんだけどね!


 母は肩を落とし、ふらふらと庭に向かいます。

 多分、お花のお世話に行ったんじゃないかな。

 その隙に、5歳児らしからぬ真剣な顔で思案する私。


「うーん………取り敢えず、必要なのはこんなところだとして。これだけ手に入れれば後は追々何とかなりそう…かな?」


 全部手に入るかは怪しいけど、努力するだけなら無駄にはならないよね!

 それが何かしらの結果に繋がると信じて、行動するのみ!

 でも…


「必要最低限、外せないのは武力……

………これを手に入れる為には、やっぱり絶対に必要…だよねぇ」


 効率的な訓練方法、だとか。

 強くなるための戦闘技術、だとか。

 戦う時の心構えと必要な知識、だとか。


 どう考えても、それらを単独で手に入れられる気がしません。

 気が遠くなるほどの努力と勉強で補えなくはなさそうですが…

 でも単独で頑張るのは効率が悪そう、だよね?

 というかそれらを独力で…となったら無駄なことばかりして空回りしそうで。

 きっと結果が出るまでに、時間は10年じゃ足りなくなっちゃう。

 でもそれじゃ、意味がないんです。


 だから、やっぱり。

 私には必要なんです。


 そういった物を指導して、授けてくれる。

 私がストーカーになる為の道を、示してくれる。


 私自身が強くなるための、【師匠】が。


 師匠とか、どこの少年漫画だという感じもするけど。




「……………うん、こんなところで悩んでも意味ないよね」


 時間は有限、残り時間はたったの10年!

 悩むくらいなら、まず行動しなくっちゃ…!


「ママー」

「あらどうしたの、メイちゃん」

「メイ、遊びにいってくる~」

「5時には帰ってくるのよ、メイちゃん」

「うん!」


 麦藁帽子から覗く白いお耳を、ぴこぴこと揺らしながら。

 母が私に手を振ってくれます。

 私も手を振り返しながら、お気に入りのポシェットを肩に歩き出しました。


 以前、師匠を頼むなら誰が良いかな…と考えた時。

 何人か思い浮かぶ人はいましたが、全員何かしら都合が悪くって。

 最後に思い当たった人は、噂じゃ強いらしいよ~って感じですが。

 でもその真偽のほどを、私は知りません。

 だからまずは、それを確かめるところから始めましょう。

 ついでに、師匠を引き受けてくれるかどうか…簡単な身上調査も。

 

 まずは男の子情報が必要です。

 こういう、誰それが喧嘩強いとか、面倒見良いとか。

 やっぱり男の子のコミュニティで手に入る情報の方が、精度が高いから。


 だからまずは、左に二軒お隣の家へ!

 そこにはお友達のペーちゃん…スペード君が住んでいます。

 ペーちゃん以外とはあまり遊ばないけれど、ペーちゃんは男兄弟ばっかり5人もいるからバッチリ!

 男の子情報を手に入れるなら適任です。


 私は情報を入手する目算を立てながら、意気揚揚と左二軒お隣のアルイヌさん家に足を向けました。


「めーい、ちゃん!」


 その途中で、声をかけられました。

 振り返れば、そこには白い毛並みの猫耳…じゃない、本体はその下その下!

 いつもついつい、耳にばっかり目が行っちゃうよ。


「あ、ミーヤちゃん!」

「こんにちは、メイちゃん」

「うん、こんにちは!」


 えへへ、と笑うとうふふ、と柔らかい笑みが打ち返されてきます。

 卓球のラリー並に素早い反応を、いつも返してくれる。

 ミーヤちゃん…ミヒャルト君は、白い猫獣人の男の子。

 私の家の右二軒お隣に住む、お友達です。

 のったりと白い尻尾をゆらゆらさせながら、ミーヤちゃんは首を傾げます。

 思わずついつい、その尻尾の動きを目で追っちゃうよー。


「ねえ、メイちゃん? どこに行くの?」

「あ、うん。ペーちゃんのおうちに行くの」

「スペードの? ………チッ」

「…うん?」


 何か今、不穏な……うん、ミーヤちゃんが舌打ちなんてする訳ないよね!

 だってまだミーヤちゃん、6歳だし!

 それにこんなに白くて可愛いし!


「ねえ、メイちゃん。スペードのとこに行くのに、僕はさそってくれないの?」

「え? さそう?」

「うん。スペードとだけ遊ぶつもりだったなんて…妬けちゃう、な」


 ちら、とこちらを上目に見ながら、足下の小石を蹴るミーヤちゃん。

 もう、6歳児が何を言ってるんだか。微笑ましいなぁ…。


「でもミーヤちゃんも、ペーちゃんも、お約束しなくてもいつも集まってるし…

呼ばなくても来ると思ったし」

「じゃあ、僕も行って良いよね?」

「え、と…メイに許可はいらないよ?」

「僕もついて行きたい、な!」

「うん、それじゃあ一緒にいこー」


 男の子の情報を探るんだし、意見を言ってくれる子は1人でも多い方が良いよね♪

 ミーヤちゃんはアルイヌさん家の兄弟とは趣が違うし、違った意見が聞けそう!

 うんうん、私の目的にも適っています。


「メイちゃん、おててちょうだい?」

「うん!」


 ミーヤちゃんが自然に手を出してきたので、それに私も手を重ねて。

 2人で仲良く、ペーちゃんの家を目指しました。

 白い子羊の獣人と、白い子猫の獣人がお手々繋いでちょこちょこと……

 傍目にはとってもほのぼのしちゃう光景だろうなぁ…

 何だか、私までほのぼのしてきそう。


「~~♪」

「メイちゃん、ごきげんだね」

「うん!」

「そんなにスペードと遊ぶの楽しみ?」

「んーん? 今日はねぇ、ペーちゃんの兄弟にもご用なの」

「ふぅん…? スペードの兄弟? ………どの子?」

「みんなー」

「え、全員? スペードも入れたら6人だよ?」

「うん。今日はね、聞きたいことがあるのー」

「へえ? 何を聞くの…?」

「えっとねー………あ、ついたよ!」


 そうこうしている内に、到着!

 やっぱりご近所さんなので思いっきりすぐそこです。

 ペーちゃんの家、アルイヌさんのお宅。

 犬獣人のパパさんと狼獣人のママさん、それから6人の男の子が住んでいます。

 あはは、羊の獣人(メイちゃん)にとってはラストダンジョン並に危険な場所に感じるよー…?

 

 私は木造建築(ログハウス)の上り口によじ登り、呼び鈴を引張りました。

 カランカランと、可愛い音が響きます。


「ペーちゃん、あーそーぼっ!」

「…ッ メイちゃん!」


 途端、バンっと開かれる扉。

 わあ、タイムラグがありませんでしたよ…?

 窓から私達の姿にでも気付いていたんでしょうか。


「メイちゃんメイちゃん! いらっしゃい」

「はーい、いらしました!」

「やあ、スペード。こんにちは」

「…なんだミーヤも一緒か」

「もう、御挨拶だなぁ…」

「まあいいや、いらっしゃい!」


 ペーちゃんの尻尾が、ぶんぶんぶんぶん犬のように揺れています。

 おかしいなぁ……ペーちゃんはママさん似の、ワイルド狼獣人の子供の筈なんですけれど…この反応は完全に、孤高の狼というよりは犬です。


「待ってて! すぐに出かける用意する。今日はどこに行こっか!」

「あ、ペーちゃんまってまって。今日はね、ペーちゃんのお家がいいの」

「え゛…っ うち?」


 ぴたっと。

 それまで喜びを盛大に表していた狼の尾っぽが動きを止めました。

 わあ、露骨にあからさま。

 顔も何だか嫌そうな感じです…。

 やばい…お家に上げてもらえなかったら、目論見がご破算です!


「だめぇ…?」


 子供って、涙腺緩いよね。

 ちょっと悲しくなったら、それだけで目がうるうるしちゃう。

 中身は結構な年でも、私だって体は5歳児。

 ついつい涙目になっちゃって、でもそのままペーちゃんをじっと見上げます。

 良いよね、良いよね、駄目なんて言わないよね…と。

 そんな思念を眼差しに込めて。


「う、うぐ…っ」


 何故か、ペーちゃんが胸を押さえました。

 どうしたんだろう??? 不整脈?

 まだこんなに若いのに、どこか悪いのかな…?



 それから程無くして、ペーちゃんは快く私を家に招き入れてくれました。

 顔が引き攣ってたけど、やっぱり何か駄目だったんじゃないのかなぁ…?



   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



「スペード、いいよって言っちゃうんだもんな…」

「し、しかたないだろっ!? だって、だってメイちゃんが!」

「むー…ちょっとムッとしちゃうけど、仕方ないか」

「ああぁぁぁ…家には入れたくなかったのに」

「いいよって言ったの、スペードじゃないか」

「だってメイちゃんが!」

「だからそれはわかってるよ」

「うぅぅぅぅ…」

「唸らないでよ、毛が逆立っちゃうじゃないか!」

「はあ…うちの野郎共に、メイちゃん見せたくないなぁ……」

「もう諦めるしかないよ…」

「何でうち、男ばっか6人兄弟なんだろ…」



 不満げな会話を、こそこそ交わして。

 私の見ていないところで溜息を吐く、2人のお友達。

 そんな彼らの姿を完全に見逃し、私は彼らの不満に全く気付きませんでした。





メイちゃん(Lv.2)

 職業:ストーカー見習い

 HP15 MP3

 攻撃力5 防御力3

 敏捷15  幸運7

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