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獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
7さい:アカペラ第1初級学校の春
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4-2.新しいお友達



 入学式は、15分くらいで終了しました。

 うん、こっちの世界は無駄が少なくすっぱりしていて良いですね!

 校長先生のお話なんて、そもそもありませんでしたし!

 訳のわからない訓告も思い出話もなく。

 内容も今後の学生生活における諸注意と忠告が主で。

 お陰で、寝なくて済みました。

 地味に寝ちゃったらどうしようって思ってたんだよね…。

 だけど今後の為になるお話ばっかりだったので最後まで聞くことが出来たよ。

 うん、前世で苦痛に満ちた校長先生のお話に悩まされたことが1度となくある身としては、感動せずにはいられません。

 私、この学校の校長先生好きだな…!

 だって無駄話しないもん!



 その後、担任の先生や今後の生活で関わる職員さんの紹介を受けまして。

 無事に入学証明書と学生証の配布が終わった、後。


 私達は、これから1年間お世話になる学級にいました。

 場所は2つの校舎の内、南棟と呼ばれている2階建ての建物。

 その1階奥にある、日当たりの良い教室です。

 この学校は3年間クラス持ち上がり。

 なので、留年さえしなければ今現在クラスメイトになっている子達が卒業までずっと同じクラスの『おともだち』ということになるのかな?

 人数は、メイも入れて24人。

 殆どは同じくらいの年の子ばっかり。

 だけど何人かはちょっと年上っぽい感じかな?

 うーん…1番大きい子は、ヴェニ君と同じくらいの年齢かも。


「メイちゃん、隣同士に座ろう!」

「あ、うん――」

「おい、ミヒャルト? メイちゃんの隣は俺だから!」

「何を張り合ってるのさ。隣の枠は2つあるんだから、僕とスペードで両隣を固めれば良いじゃない」

「あ、メイちゃん廊下側の席が良いー。一番はしっこー」

「「……………」」


 あ、ちなみに凄く偶然(・・)だけど、ミーヤちゃんとペーちゃんも同じクラスだよ。

 1学級20~30人というクラス編成で、1学年3学級。

 そんな中、仲の良いお友達3人組が固まって同じクラスになるなんて凄く運が良いのかもしれません。

 誰もバラけずに同じ教室ってちょっと嬉しいよね。

 メイ、他にお友達らしいお友達もいないから何だかほっとしちゃった!


「メイちゃん、どうしても廊下側が良いの?」

「うん! 理想はねぇ、後ろから2番か3番目の席―」

「へぇ…」

「ふぅん?」

「……って、あれ? どうしたの2人とも」

「「別にっ?」」

「え、えぇ…? なんで火花散らし合ってるのー!?」


 私達のクラスの名前は、セージ組。

 この学校は担任の先生に1人1人ハーブのマークが名札代わりに与えられています。それがそのまま学級の名前なんかになったりするの。

 ちなみに同じ学年の他2組はガラムマサラ組とコリアンダー組です。

 んっと、ハーブ…?

 ……………。

 ………メイ、担任の先生がセージの人で良かったな!

 これで担任の性格が良ければ最高です。

 外見は優しそうな…気弱そうな女の人だったけど、どうかなぁ?


「ねー、2人ともー、席決まったぁ?」

「ううん、まだ」

「ちょっと待っててな、メイちゃん!」

「もーう…メイ、先に座ってるからねー?」

「本当にすぐ済むから、待っててねメイちゃん」

「あ、その前にメイちゃんの隣と斜め前の席取られねーように牽制しとかねーと」

「あ、そうそう、そうだね。取り合えず荷物を置いておこうか」

「もー…先生来ちゃうよー? 待ってる間に適当に席についておいて下さい、ってミルフィー先生言ってたのにー」

「大丈夫、勝負は一瞬だよ…」

「手加減は、無しだからな。ミヒャルト」

「当然だよ。スペードこそ、ずるは無しだからね」

「はっ ミヒャルト(おまえ)じゃなしに、そんなせこいことするかよ」

「ふん…っ 言ってくれるじゃないか」


「はいはい、2人ともー。良い気分のところ水差すけど、早く決めようよー」

「分かったよ、メイちゃん」

「ああ、この一発に賭ける…!」



 案内された教室の、真新しい机を前に私達はわくわく、そわそわ。

 担任の先生は1度教室を出て行ってしまったので、いわゆる無法地帯状態…とまではならないのは、やっぱりクラスメイトに年長者が混ざっているお陰かなー?

 最年長っぽい男の子は厳しそうにも怖そうにも見えなかったけれど、そのやんわりとした口調で発される注意には何となく逆らい辛い。なんか、うん、聞いているだけでちょっと頭が冷静になって、大人しくしなきゃってなる。

 父兄の皆さんは今後の学校生活に関する諸注意を聞きに別室に。

 落ち着きのない子供じゃなくて、その保護者に注意をしたり説明をしたりする当りは流石だと思う。

 

 暴れる子はいないけど、無法地帯にはなっていないけど。

 それでも年長者が監督しているからとはいえ、限度はあって。

 ある程度の許容は、我慢の出来ない子供達の性質上仕方がないよね?

 完全に大人しくさせるのって、絶対に無理だと思うの。


 そんな訳で。

 現在、セージ組の中は子供達のおしゃべり天国と化しています。

 最初は大人しく席に座っていた子達ですが、何人かは立って移動とかしちゃってますね。

 私の席は廊下側の前から3番目。

 出席番号とか決まっていないので、席順は自由です。

 だから私は、ついつい前世の癖で席を選んでしまいました。

 この辺りが意外と死角なんですよねー…

 1番後ろの窓際が定番だけど、定番なだけに先生が注意して見るんだもん。

 それに窓からの採光で明るい分、意外に窓際って目立つんだよ?

 だからこその廊下側、目立たない位置がベストです。


「――っくそ! 負けたー!!」

「やった。僕の勝ちだ」

「あ、終わったー?」


 そんな私の隣にミーヤちゃん。

 斜め前にペーちゃんが座っています。

 2人はどっちの席に座るか、じゃんけんで決めたみたい。

 

「ふふ♪ メイちゃん、お隣よろしくね?」

「ちぇっ メイちゃん、斜め前ともよろしくしてくれよ?」

「うん、2人ともよろしくー♪」



 若干拗ねちゃったペーちゃんと、満面の笑みで清々しいミーヤちゃん。

 たったいま決着がついたばかりの席に、2人は大人しく座りました。

 しかし、えらく何度もあいこが続いてたみたいだけど…


「あっはははは! キミら、ずいぶん何度もあいこが出てたみたいだけど、よっぽど気が合うんだねっ?」


「ぅ!?」

「ふぇ!?」

「…うん?」


 2人が着席し、でも前を向く気は欠片もないようで体ごとメイの方を向いて。

 さあ、お喋りでもと口を開いたタイミングで、横から声が!

 正確にはペーちゃんのお隣さんの、男の子。

 何だか明るい感じの男の子が、何の屈託も躊躇もなく話しかけてきました!

 いきなり背後から話しかけられる形になったペーちゃんは吃驚。

 ぎょっと跳び上がった体に、私とミーヤちゃんも驚きました。

 一気に私達3人の視線が殺到して、男の子がちょっと気まずそうにします。


「うわぁ…ごめん。そんなに驚くと思わなかったんだ。君らの前に回って声をかけるべきだったかなー」

「あ、ううん…それは良いんだけどー…」

「ね、狼君、大丈夫?」

「おっ おおかみくん…」

「あ、うん。僕、君らの名前知らないからさ。何かさっきからちょっと聞こえてはいたけど、やっぱり呼ぶ前に許可取んなきゃでしょ」

「お、おう…そう、だな。うん、お前の言う通りだ」


 かなり親しみやすい態度で、戸惑うペーちゃんを圧倒する勢いです。

 …わあ、ペーちゃんとミーヤちゃんに見習わせたい社交力!

 にこっと人好きのする笑顔を浮かべて、とっても友好的に椅子から転げ落ちたペーちゃんへと手を差し伸べました。


「僕の名前はウィリー! ね、君達は?」

「僕はミヒャルトだよ。君に驚いて椅子から落ちたのが、スペード」

「お、落ちたとか言うなよ!」

「あははっ ペーちゃん、顔真っ赤! あ、メイはメイだよー。メイファリナ。

長いからメイちゃんって呼んでー」

「うん、よろしくね。ミヒャルト君、スペード君、メイちゃん!」




   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



「…スペード、僕らのやるべきことは分かってるよね?」

「おう、勿論だ」

「じゃあちょっと言ってみてよ」

「あれだろ? メイちゃんの傍でメイちゃんに必要以上に近づこうとする野郎を牽制して、メイちゃんを奪われないようにするんだろ」

「それだけじゃないよ。全部が全部遠去けてたらメイちゃんに怪しまれるから、見極めが必要だね」

「んっと、つまり?」

「メイちゃんが自然な流れとして誰か僕ら以外の男と仲良くなりそうだったら間に立って、まず先んじて僕らがそいつと仲良くなる」

「あ、わかった! つまり俺らが仲立みたいに間に立つことで、仲良くなる度合いを制限しよーってことだよな?」

「その通り! スペードも中々察しが良くなってきたじゃないか」

「はっ お前と何年の付き合いだと思ってるんだよ」


「――ふぅん、なるほどー」


「「!?」」

「やっほー、ウィリー君でーっす!」

「な、な、ななな…」

「………どこから、聞いていたのかな?」

「んー? えっと『僕らのやるべきことは』…からかな!」

「思いっきり最初の方からじゃねーか!」

「ふふん! 壁に耳あり障子に目あり、だよ。僕、聞き耳とか得意なんだよね!」

「全っ然、褒められねー特技だな!」

「まぁね♪」

「さらっと流すなよ!」

「もう落ち着いてよ、スペード。興奮すればするだけ、煙に巻かれるだけだよ」

「おお、ミヒャルト君は頭脳派なのかな?」

「さあ? そんなことはどうでも良いよ。それよりウィリー? 君、全部聞いていたみたいだけど、それでどうしたいの?」

「ん?」

「僕等は君が聞いていることに気付いていなかった。どうともするつもりがなければ放っておけば良いだけなのに、君は自分の存在を明かした。それってつまり、僕らに何らかのアクションを取りたかったからじゃないの?」

「おー…やっぱミヒャルト君、頭脳派じゃん」

「茶化すのは後でも出来るでしょ。で? 何がしたいのかな」

「んー…僕としては、君達が見るからに面白そうだから仲良くなりたいだけなんだけど? あ、あと僕って安全牌だからって主張?」

「安全牌? 何を持ってそう言っているのさ」

「僕、メイちゃんには惚れないよー。だって、もう好きな人がいるから」

「え、マジ。って、俺らだってメイちゃん好きなんだから、他の奴が好きな子いたっておかしくねーか」

「ふぅん? その子に振られても、メイちゃんに乗り換えないって保証は?」


「僕、羊より猫派」


「「……………」」

「あの気まぐれで小悪魔な感じが堪らないね」

「………君が将来、性質の悪い女性に騙されないことを祈っておくよ」

「メイちゃんも可愛いけどさ、僕どっちかっていうと黒い猫耳と長い尻尾にすらっとした細い体のー…」

「あ、いや、良いよ。別に好みについて語らなくてもいいから」

「そーう? ま、そんな感じで僕、残念だけどメイちゃんは女の子として好きになれそうにないかなー。武闘派より大人しい子が良いし」

「………何だか、僕らについても色々知ってそうだね?」

「いや、だってさっきナイフの使い方がどうのって物騒な話してたじゃん」

「「……………」」

「何にしろ、君達の敵にはなりようがないから! まあ、仲良くしてよ」

「まあ、そういうことなら…」

「良いんじゃね? よろしくな、ウィリー!」

「うん!」



   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



 何かメイに聞かれたくないことがあるのか、男の子同士のお話なのか。

 たまにミーヤちゃんとペーちゃん、2人で内緒話する時があるんですけど…

 今日は気がついたら、そこにウィリー君が混ざって輪を作っていました。

 仲良くなるの早っ!

 何が気に食わないのか、あの2人、他の男の子を寄せつけようとしないところがあるのに…人見知りなのか、どうなのか知りませんけど。

 そんなミーヤちゃん達と、こんなに早く打解けるなんて!


 早々と仲良くなるのは結構だけど、ね。

 でもメイの方がずっと先にお友達だったのに…

 それでもウィリー君は仲間に入れるのに、メイは内緒話に入れてもらえない。

 新しいお友達が出来るのは良いことなのに…

 何だか、仲間外れがちょっと寂しく感じたメイちゃん7歳でした。






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