表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
5さい:修行開始の鬼ごっこ!
3/164

1-1.メイちゃんの憧れ

それでは、第一話。

時系列は冒頭部分を除いて、中頃は短編内容の翌日からスタートです!





 見たいと思ったユメは、すぐに見られた。

 明晰夢。

 

 生まれ変わる前、前世からの私の特技。


 色々な夢、様々な夢を見ては前世で見覚えた景色を堪能していた。

 だけど。

 

 あのRPGゲーム。

 私を史上かつてなくドはまりさせてくれた、あのゲーム。


 アレを思い出して以来、私の夢が一色に染まる。

 

 いつも夢の中で、今日は何の夢を見ようってわくわくしてた。

 でも、寝る前はそんなつもりが無かったりするのに、ね。

 いざ眠って夢の世界にいくと、私の無意識はいつも同じ選択をする。


 私の胸をどきどきさせて、わくわくさせて。

 きゅんきゅんいうくらいにドはまりさせてくれたゲーム。

 思い出すまでは、全然記憶にも掠めなかったのに。

 思い出してしまったら、やっぱり夢中になっていた。

 それくらいに好きだったことを、思い出させて。


 とてもとても好きだったから。

 思い出してしまったら、今でもやっぱり『好き』になっちゃったから。


 私の無意識は、今日も同じ選択をする。


 考えるまでもなく、一片の余地もなく。


 私は今日も、同じモノの夢を見る。

 前世で大好きだった、あのゲームの夢を。




 そして、私は今日も…



 夢の中の光の下で、私は見たいと思った夢を手繰り寄せた。






   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 



「――はあ…っ!」


 銀色の剣光が、闇を切り裂き鋭く走る。

 粘着質な赤い色を散らし、どす黒い瘴気を撒き散らす。

 魔物の醜悪な瘴気すら、一度に斬り捨てて。

 彼は聖剣と呼ばれた剣の威光だけではない輝きに、全身を包まれているようで。

 闇の中の仄かに明るい燐光は、目に見える希望だった。


 絶望の中に取り残されて呻くだけだった人々が、魅了される。

 青年の裂帛の気合いが込められた強い意志が、人々の勇気になる。

 

「薄汚い魔物め…お前が苦しめた人々を、返してもらう!」


 魔物への恐怖と苦しみで蹂躙されつつあった人々。

 その哀れな人々を救わんと、踊り出るのは青年の仲間達。

 彼らを率い、先頭に立った青年は瞳の奥に信念と怒りを燃やしていた。

 人々を苦しめ、町を破壊した魔物が、青年の瞳に映り込んでいる。

 人々を守る様に魔物の前に立ちはだかり、真っ直ぐに標的を見据えた青年は…



 ――青年は、最高に格好良かった。




   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



 ………という、夢を見ました。

 記憶が確かなら、あれは確か『ゲーム』本編のイベントの一つ。

 主人公の仲間キャラが集結して、最初のボス戦イベント…だったかな。


 昨日気付いた衝撃の事実に、思いっきり脳が揺さぶられているみたい。

 悟った途端に『主人公』を夢に見るなんて、我ながら現金過ぎる…


 私、獣人のメイちゃん。5歳の女の子。

 昨日、街行く人の噂から、ここがRPGゲームの世界だと悟ったばかり。


 そんな私は、獣人として生まれる前…いわゆる、前世。

 某惑星の某島国の、リアス式海岸が見える地にて。

 平和な日本人の女の子(多分ゲームオタク)をやっていました。

 


 私が前世でドン引きされるほどドはまりした、RPGゲーム。

 時勢にそぐわなかった部分もあってか、マイナーなゲームだったけど。

 私はもう何回も、本当に何回もプレイするくらいこのゲームを愛していました。

 グラフィックも世界観もお話も、何よりキャラクターが大好きだったの。

 そんな世界に、獣人として生まれ変わった…私。

 それに気付いた時、同時に私の将来の第一希望が決定しました。


 ねえ、一度でも思ったことはない?

 ゲームにのめり込んだことのある人なら、誰でも思ったことがあるんじゃないかと私は思う訳ですが。


 あの感動を!

 あの躍動を!

 あの名シーンを!

 あのキャラ達の私生活を! ←犯罪臭!


 実際に、間近で見てみたくないか?と……


 生まれ変わったからには、後悔をするような生き様はしたくないなぁ、なんて。

 子供時代を満喫する気全開だった、私。

 大きくなったらできないことも、いっぱいあるし。

 幸い、今生は獣人なんていう、身体能力に恵まれた種に生まれた訳だし。

 代わりに魔法適性が低いのは、ちょっと残念だけど。

 でも、私は決めました。

 決めちゃいました。


 この恵まれた身体能力を余すところなく、活用し!

 己を出来る限り最高値まで鍛えあげ!

 努力と前世では苦手だった根性論で自分を最強に高め!

 そして!


 ゲーム主人公とその一行を、追っかけ(ストーカー)する…と!!


 我ながら思考が犯罪者一歩手前というか、実行していないだけで既に予備軍です。なんて後ろ暗い決意!

 でもでも、だって!

 私の心をぐっと掴んで離さなかった、あの名場面の数々を直接、生で見られるかどうかの機会(チャンス)が与えられてるんですよ!?

 ここで挑戦しなかったら、女が廃ります。

 私は魂を腐らせるくらいなら、自分のやりたいことに正直に生きたい。


 でもそれも全てこれからの、先のお話。


 私は獣人のメイちゃん、5歳。

 ゲーム本編の開始まで…あと10年。

 その10年という時間をストーカーの為の準備期間とするのか…

 …それとも、全く新しい別の人生を拓くのか。


 それも全ては、これからのこと。

 


 今のところ、予定はストーカー一択ですが。



 でも、もしかしたら。

 うん、もしかしたら。

 もしかしたら途中で心変わりして、別の生きがいを見つけちゃう…

 ………かもしれないしね?

 それならそれで、私の心を躍らせるような楽しいことが待ち受けているかも。


 この時点で、私の未来に対する期待は希望に満ち溢れておりました。


 例え、目標がストーカーでも。

 ラスボス決戦までも物陰から主人公にばれず観察する為、ゲームキャラ並に己を鍛えあげるという茨の道を嬉々として選択しようとしていても。

 無謀極まりないストーカー予備軍でも。


 それでも、見たくて仕方ありません。

 ゲームのキャラクター達に、憧れちゃって仕方ないんだもん♪





今日からストックが尽きるまで、毎日投稿の予定。

書き溜めている分が尽きたら、不定期投稿に移ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ