表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/164

2-9.母の未来操作術



 ちいちゃなちいちゃな、私のきょうだい。

 双子の、あかちゃん。


「う、うわぁ…これがメイちゃんの弟!?」

「ペーちゃん、そっち妹」

「それじゃあこっちが弟君かな。メイちゃん、名前は?」

「弟の名前はユウ君。ユウリリト君だよ!」

「妹ちゃんの方は?」

「え、えっとエリ……エリ………」


 い、妹の名前…確かに、ちゃんと聞きました。

 聞いたんだけど………


「エリフェルカちゃんよ、メイちゃん」

「あ、あう…」


 ママがにっこりと優しく微笑みながら、もう一度教えてくれました。

 でも、でもね?

 私はメイちゃん………本名は、メイファリナです。

 そしてママの名前はマリファルナ。

 ――女3人、似たような名前でとってもややっこしいんですけど!

 私は、途方もない挫折感を覚えつつありました…。

 私自身の名前と母の名前を言い間違えないようになったのは、割と最近。

 この上、妹の名前まで何だか似ている感じで…

 エリちゃんと呼ぶことは既に決定していますが、彼女の名前を間違えずに言えるようになるまで、どれだけの時間がかかるでしょうか…。


「ユウ君に、エリちゃんかぁ…僕の兄弟も、産まれたらこんな風なのかな」

「ちいちゃいな、可愛いなぁ………やっぱメイちゃんの弟妹だからだよな!」

「それもそうだね!」

「え、なにその遠回しな褒め言葉。もっと褒める時は率直に褒めようよう」

「メイちゃんは可愛いよな!」

「メイちゃんは可愛いよね!」

「違うよね! 今褒めるべきはメイじゃなくってユウ君とエリちゃんだよね!?」


 誕生時という、人生で最高に褒められるはずの日なのに…

 何故か、この2人は生まれたばかりの赤ちゃんじゃなくって私を褒めてくるのですが……2人とも、褒める相手を間違えてるよ…。


「それでお耳はぴるぴるだけど、2人もメイちゃんと同じ羊さん?」

「ああ、なんか似てるけど…でもユウ君の方はなんか違くないか?」

「あ、ユウ君の方はお馬さんだよ。パパと一緒! エリちゃんは私やママとおんなじ羊さんなの」

「へえ……あれ、でもエリちゃんの毛、黒くないか?」

「黒羊さんだね!」

「………毛が黒い羊なんているっけ」

「探せばどこかにいるんじゃないの。山羊にだって黒いのはいるんだし」


 赤ちゃんだけど、うっすら生えた毛色をみればもうしっかりと色が付いていて。

 ユウ君は白馬でエリちゃんは黒羊。

 獣人であることを示す柔らかそうな耳が、ぴるぴると揺れていました。


「マリ、元気そうじゃないか。それに子供も」

「ふふ、ありがとうシュシュ」

「私からも祝いを言わせてくんな。おめでと、マリ」

「ありがとう、クレシア」


 私達が赤ちゃんを囲んでわやわやしている間に、ベッドから出られない母の周りを猫さん家と犬さん家のママさん達が取り囲んでいます。

 ママさんズは仲が良いんだよね。

 それぞれタイプの違うママさん達。

 女傑と字に書いたような猫さんと犬さんのママ。

 それにうちのふわふわした母が加わると、不思議な3人組になるよ。

 うちの母は他の2人と気が合うのかなぁと心配したけれど、これが意外に本当、気の合うお友達みたい。

 どうやら3人は、私達が生まれるずっと前からの仲良しさんのようです。


「次はシュシュの番だねぇ。良い子を産みなよ?」

「うふふ。クレシアは6人のお母さんだものね。流石の貫録だわぁ」

「犬や狼は多産系の獣人だからね。ま、アタシも初産でいきなり4人も孕んじまった時は吃驚したけどね。勘弁してくれよ、なーんて思ったのもいい記憶さ」

「クレシアは案じるより産むが易しを地で行ったからな。いざ生まれてみれば大変大変などと言いながら、案外立派に育てているじゃないか」

「まあ、狼の子も犬の子も、育てるにゃ大差なかったってことだね」

「しかし怖いな…。猫も多産系だが、今まで1人ずつ産んでいたし。次あたり、私も双子だか三つ子だかを産みそうだ」

「次って、今その腹の中にいるじゃないか。そんなことを言ってると、本当に三つ子とかぽこっと産まれちまうんじゃないかい?」

「いや、何か本当に前より腹が重いから…これは何人か入ってるんじゃないかと」

「あらあら~…それはとても賑やかねぇ。うちのユウ君、エリちゃんと同い年になるんですもの。仲の良いお友達候補がたくさんいるのは素敵なことじゃない?」

「まあ、そりゃそうだ。うちのはスペードがミヒャルトと一緒になってメイちゃんを他のチビ共から遠ざけてるせいで、ちょっと他の子と距離があるしねぇ…分け隔てなくとはいかない友情築いちまって」

「メイちゃんは可愛いからね。私も何となくわかるよ。本当、うちのミヒャルトの嫁に来てくれれば良いのに」

「………シュシュ? アタシだって譲らないよ? メイちゃんには是非、うちに嫁に来てもらいたいねぇ」

「あらあら! うちのメイちゃん、本当にモテモテねっ。流石はうちの子ー!

…でもメイちゃんは、パパを倒せる人にしか渡さないって夫婦で決めてるのよ?」


「「――えっ!?」」


「? ミーヤちゃん、ペーちゃん、どうしたの?」


 3人で仲良く生まれたばかりの赤ちゃんを愛でていたんですけど…

 急にいきなり、2人がぎょっとした顔で振り向きました。

 その方向には、女3人で仲良く話しこんでいたママさん達が…

 ??? ママ達がどうかしたのかなぁ?

 

 私が首を傾げていると、母がにこにこと笑いながら声をかけてきました。


「メイちゃん、強い男の人ってどう思う?」

「??? んー…強いなぁって?」

「ふふ、メイちゃんったら! そうじゃなくって、将来結婚するならどんな人が良いかしら?」

「えうっ? え、なんで?」

「強いひとが良い? それとも賢い人? あとは格好良い人とか…」

 

 えっと………これは、結婚に際する理想を聞かれているのでしょうか。

 なんでいきなりー…私、まだ6歳なんだけど。

 アレかなぁ。赤ちゃんを愛でてる図からの連想?

 何にしても気が早いと思うけど…

 でもまあ、理想は理想だし。

 私はまだ6歳だし?

 ここは適当に、気軽に答えても大丈夫かな。

 うんうん、ちょっと6歳児らしく、無茶な理想でも1つ。

 えっと…母はさっき、なんて言ってたかな?

 多分あれが、6歳児の語る理想の相手の基準と考えて…


「メイ、結婚するならメイやパパより強くて賢くて格好良い人が良いー」

「「っ!!」」

「あらー、メイちゃんったらおマセさんね! パパが泣いちゃうわぁ」

「えー……ママがきいたのにぃ」

「うふふっ でも絶対に妥協しちゃ駄目よ? 結婚は一生ごとなんだから」

「はーい」


「……………修行、頑張ろう」

「ああ、死ぬ気で頑張る…」


 ――あれ?

 何だか知らない間に、ミーヤちゃん達の顔が悲壮なことに…

 真っ青だけど、どうしたの!?


「み、ミーヤちゃん、ペーちゃん、どうしたの!?」

「なんでもない…なんでもないよ、メイちゃん」

「ああ、将来ぶち当たるべき壁の存在をはっきりと認識しただけなんだ………最低でも、小父さんを倒せるようになんないといけないんだな…」

「あの人、1人機動兵とか呼ばれてるよね…職業軍人だし」

「う、う???」

「メイちゃんはわからなくっても大丈夫だよ」

「ああ、これは俺らの試練だから…うん、修行頑張ろう」

「僕も今日から死に物狂いだよ…」

「が、がんばってねっ?」

「「うん!」」




「うふふふふー♪ メイちゃんの為に頑張って精進してね、男の子たち♪」

「………マリ、アンタ…本当に大物だよ」

「偶に、君には敵わないんじゃないかと思うよ、マリ…」




 結局、母達が何を話していたのか、私にはわかりませんでしたが。

 この日から何だかやけに2人の幼馴染は修行に全力投球で。

 なんだか、私も追い抜かされそうだと思うと焦ります。

 折角、僅かな差だけど2人をリードしてるのに!

 思考力ではミーヤちゃんに負けていて、ペーちゃんには体力で勝てなくて。

 それなのに戦闘技術でも抜かされたら、本当に私は良いとこナシです。

 そんなの………そんなの、超・絶・悔しいじゃないですか!


「目指せ! いっちばーんっ!!」


「メイちゃん、君に一番でいられたら僕達の立つ瀬がないんだよ…っ」

「これも未来の為、絶対に追い抜いて見せるからな!?」

「メイ、負けないもん…っ!!」


「……………何だか知らねぇが、修行に身が入ってて結構なこった」

 


 何があったのかは知りません。

 どんな心境の変化があったのかも知りません。

 でも、2人に負けているようじゃ将来の夢なんて果たせない…!

 ストーカーになる為にも、ここでへこたれる訳にはいかない!!


 ………この日から、私達3人の修行に対する姿勢は格段に熱意あふれる物へとレベルアップを果たしました。

 それに付き合わされるヴェニ君も、最初は嫌そうな顔をしていたけれど…

 ………いつしか、私達につられるように真剣に付き合ってくれるようになって。

 私達は、本気も本気。

 危機迫るくらいの真剣さで、修行に取り組む様になっていきました。


 




メイちゃんのパパ(ラスボス)が現れた!

 シュガーソルト・バロメッツ(24) Lv.74

  職業:親馬鹿/アルジェント伯爵領軍 魔物対策本部部長(大佐)

  HP ***** MP 10

  攻撃力 ***** 防御力 **** 敏捷 **** 幸運 ****


シュガーソルト(ラスボス)

「うちの娘が欲しければ、この私を倒してから連れ去るが良い…

そして花嫁の父をマジ殴りする男として、メイちゃんに嫌われろッ!!」

部下(ルッツ君)

「大人気なっ! バロメッツ大佐、大人気ないっすよ!? そこはもっとこう…!

なんか違うでしょ!? もうちょっと穏当に、何か!」

シュガーソルト

「コルベスタ…いや、ルッツ。貴様も考えてみるといい。

――自分にとって世界一可愛い妻との間に生まれた、世界一愛らしい至宝(ムスメ)だぞ。

それを奪い去る、憎い盗人のことを………貴様なら、黙ってくれてやるのか?」

ルッツ

「俺なら人中殴った後で鳩尾→弁慶→足の甲蹴り砕いてから後頭部に一発っすね」

シュガーソルト

「そうだろう。で、あるならば、人一倍妻子を愛する私が少々度を越した態度に出ても問題はあるまいな?」

ルッツ

「……………大佐、どうか犯罪沙汰にはならないようにして下さいよ」

シュガーソルト

「大丈夫、私は玄人だ。加減は任せてもらおう………

…………………………………………………少々、手元が狂うかもしれんがな」

ルッツ

「この大佐本気だ!!?」



 メイちゃんのパパは現場(戦場)で功績を挙げて大佐まで駆け上がった将校さん♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ