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獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
10さい:『序章』 破壊の足音を聞きながら
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最終話.ストーカーへの道のり、はじめの一歩

 さりげなく、最終回です。




 何もかもがなくなった村に留まることは、難しく。

 ついでに村が消えたと関係各所に報告する必要もあるから。

 まだ年齢的に社会的な信用が得られない私達じゃ調査の報告を上げても信じてもらえる可能性は少ないし、たぶん話を聞いた誰かが真偽を確かめるべく本調査をしてくれるだろうし。

 私達は、近くの町役場に簡単に報告した後、アカペラの街に引き上げた。


 その足で、ミヒャルトやスペードと別れてから。

 私はトーラス先生を連れて、アカペラの街の表通りに面した建物の1つへと向かった。

 真っ白な外壁に、紫色の草花がペイントされた華やかで立派な建物。

 毎朝ぴっかぴかに磨かれている飴色の看板には、こう書かれている。


 ――『アメジスト・セージ商会』


 ………………うん、何の建物かなんて説明するまでもないよね。

 発足してから、まだ数年。

 なのになんでもう、こんな立派な商会本部があるんだろう……わあ、とっても不思議☆

 最初はロキシーちゃんの実家であるローズメリア商会の一画を間借りする形でスタートを切ったんだけど……そんな始まりだったから、ローズメリア商会の下部組織的なイメージが最初はあったんだけどね?

 そりゃ確かにロキシーちゃん単独で最初っから回すのは難しいし、軌道に乗るまで随分と色々ご実家の力を借りたそうだけど。

 事実と似て非なる『下部商会』なんてイメージはロキシーちゃんのやり手ぶりで早々に払拭しちゃってさ。

 今ではちゃんと独立した商会として名を上げて、こんな商業的に美味しい場所に拠点まで作っちゃって。

 ……まあ、何が言いたいかというと。


 ここは、ロキシーちゃん(と、私達?)の本拠地です。商売的な意味で。


 私達と同じセージ組の卒業生をほぼ丸々確保する形で纏まった事情通の人員まで確保して。

 学校を卒業してからがいよいよもって本格的なスタートとばかり、今年になってから活動は活発化の一途を辿っている。

 うん、ロキシーちゃんってばどんだけ稼いでるの?

 不思議過ぎるけど、その詳細は絶対に聞きたくないなぁって思う。

 この商会で取り扱っているメイン商品は、『アメジスト・セージ発』の商品だから……=メイちゃんの稼ぎとも取れるんだけど。

 だけどこんだけ稼げてそうな気配がするのは、確実にロキシーちゃんの功績です。足を向けて眠れないね、絶対に!


 その稼げる有能なロキシーちゃんに、前、頼まれたことがあって。

 それからずっと、メイは考えていたことがあった。


 知り合いと挨拶を交わしながらメイちゃんが真っ直ぐに向かったのは、『総合受付』って書かれたカウンター。

 あれ? 初めて見る顔の子が受付嬢(みせばん)してる……。


「ごめんねー、ロキシーちゃん……ロクシアーヌ・ローズメリアちゃん、いる?」

「何かお約束はございますか?」

「ううん、ないよー」

「……申し訳ありまs」

「あ、新人! その子は良いんだよ。開発部と契約している賞金稼ぎの子で、支配人の親しい友人だから!」

「えっ!? あ、た、大変失礼いたしました!」

「メイちゃん、ロキシーなら支配人室だぜ。悪いな、コイツ入ったばっかでさ。まだ教育中なんだ」

「大丈夫だよー。新しい子なら仕方ないよ! だってメイ、怪しいもん」

「ははは! 自分で言うなよー」


 気さくに笑って手を振る元同級生に、手を振り返して。

 メイちゃんは商会の中を物珍しそうにきょろきょろしまくってるトーラス先生の袖を引っぱり、建物の最奥に向かいます!


「め、メイちゃんはこの商会と賞金稼ぎとして契約? を交わしておるのですかな」

「表向きー。実際はちょっと違うんだけど、メイみたいな子がちょろちょろ出入りしてたらおかしいでしょ? 表向きの理由付けだとそうなってるってだけだから」

「なるほどのぅ……しかし立派な商会ですなぁ。長く田舎におったものじゃから、このような活気のある騒がしさは久々ですじゃ。流石は交易の街と言いましょうか」

「うふふ、トーラス先生ったら。他人事っぽいけど当分ここに住むんだよー?」

「え゛っ」


 ぎょっとするトーラス先生をタイミングよく、支配人室に引っ張り込んだ。

 そこにはいつもと変わらない様子で、複数の書類にいっぺんに目を通すロキシーちゃんが……


「まあ、メイファリナさん! いつアカペラの街に戻ってらしたの?」

「ついさっきー! ロキシーちゃん、元気そう! うん、元気いっぱいで商売に励んでるんだろうね」

「当然ですわ。自己管理なんて意識の持ちよう1つでどうとでもなる分野で後れを取っては、商売敵に付け入る隙を与えてしまいますもの」

「流石だ……!」

「ところでメイファリナさん? そちらのおじいさんはどなたかしら」

「前にロキシーちゃんに頼まれていた人材だよ!」

「メイファリナさん、本当に!?」

「そう! おまけにメイの正体を知っても大丈夫で、口の堅さは折り紙付き! しかも少なくとも5年はこの商会に腰を据えることが保証可能!」

「まあ、なんてお買い得!」

「……ロキシーちゃんもノリ良くなったねー」

「メイファリナさん達と親しくしているのですもの。当然です」


「あのぅ……メイちゃんや。儂、話についていけんのだが」


 いきなり2人だけでわかる話を始めた私達に、困惑した様子のトーラス先生。

 ただそれでも自分を話題にされていることは会話の節々からわかったらしく、どこかそわそわです。


 ……メイちゃんは前、ロキシーちゃんに頼まれたことがあります。

 この商会は人前に絶対に出ない『アメジスト・セージ』を名義上のトップに据えて、ロキシーちゃんを筆頭に実質社会的信用性の低い子供だけで走りだした。

 いくら能力があっても商品が魅力的でも、それだけじゃ商売を広げるに不利な部分はどうしたってある。

 私達には年齢と実績に裏打ちされた信用が足りない。それがないと、商売も限界にぶち当たる。ううん、多分もうぶち当たっていたんだと思う。

 だからそれを補う後ろ盾として、『顧問相談役』になってくれる社会的信用性の高い大人はどこかにいないかと人材探しを頼まれていた。

 本当はメイのパパにそれをやってもらえないかって打診されたんだけど、メイがそれは駄目って言っちゃったから。

 絶対に代わりの人間連れてくるから、もうちょっと待ってって。


 そこでメイちゃんが目を付けていたのが、トーラス先生。

 『ゲーム序章』が終わって、手も空いたし。

 リューク様達に見つからないよう、表だって派手な動きは出来ないし。

 潜伏しろとまでは言わないけど、それに近しい状況に身を置いてもらう必要がある。


 ついでに言うとトーラス先生は魔法使いとして大きな実績を持ってて、知名度だって高い。


 うん、ちょっとこの辺で商売に精を出してもらっても問題はないよね!

 まさかリューク様やラムセス師匠も、死んだ筈のトーラス先生がこんな所で商売に身を転換させてるとは思わないだろうし。


「それでね、ロキシーちゃん。トーラス先生に関わってもらうついでに、ちょっと開発計画組んでもらいたいモノがあるんだけど……」

「新作!? 新しいアイデアね、メイファリナさん! それは大至急、実現可能か商品化にメリットはあるのか検討する必要がありますね!」

「わぁいロキシーちゃん話が超はやーい!」


 同じセージ組出身者の絆は、『アメジスト・セージ』って秘密を共有していたから強い方。

 加えてメイのお友達には、有能な薬師の卵がいるわけで。

 そこで是非作りたいなって、前から思っていたものがある。


「ロキシーちゃん、メイ、今回の遠征で今後の課題に直面したよ」

「それは、どんな?」

「……いざって時、自分を立て直すには、生き残るには『切り札』って必要だよね」

 

 『ゲーム』に出てきた、回復用のポーション各種。


 ゲームにはあったのに、何故か現実のこの世界にはない。

 色々確かめたし、賞金稼ぎっていう怪我と無縁じゃいられないバイトを始めたことで良く効く薬関連は情報も入りやすくなった。

 なのに、どこのお店にも『ゲーム』で見た薬瓶はない。

 ウィリーもそんなものは聞いたことないって言っていたし。

 ポーションなんて便利過ぎるアイテム、現実にあったら絶対に噂くらいは聞くはず。それこそ『ゲーム』ではどこの町でも売っていた。

 これも『ゲーム』と現実の齟齬かなって思ってたけど。


 もしかしたら、これから予言の年までに開発されるのかも知れないけどさ。


 気がついたらロキシーちゃんがめっちゃ稼いでいて。

 そしてメイちゃんには薬師さんや魔法使いさんに伝手が出来ていて。

 

 ……こうなったら、開発するっきゃないよねっていう。

 なんかもう、ロキシーちゃんがこれだけ稼いでいることすら天啓の様な気がするよ。

 ラスボスの幻影と戦闘中、トーラス先生が栄養ドリンクがぶ飲みしているのもを見て、思ったんだ。

 あ、これ早く開発しとかないとって!


 まだまだ強さは目標レベルに届かないし。

 現実にスキルだって足りなくて、考えの浅い小娘に過ぎなくって。

 でもね、だけどね。

 メイちゃんは、『ゲーム』って形だけど未来を知っている。

 来るべき未来に、備えることが出来る。必要な物だって、的確に。

 だったら、だったらさ……リューク様達に必要な物だって、世に出すことが出来ると思うんだ。

 メイちゃんはストーカーで、表だって彼らの前に出ていくことが出来ないから。

 こういう形で影から力になるのも、支援の1つの形じゃないかなぁって思うの。


 今回のことで、メイちゃんは自分の未熟を思い知りました。

 それから、何でもかんでも『知識(ゲーム)』の通りにはいかないってこと。

 不測の事態はいつだって横からタックルかましてくる。

 だったらいざ不測の事態が起きた時の為に、準備しておかないと!

 マジでまだまだまだまだ準備、全然っ足りないから!


 現実には『ゲーム』の『ポーション』みたいな即効性も効能も冗談みたいに高い便利な回復アイテムはなかったけど。特に薬でMP的なナニかを回復する手段なんてなかったけど。

 なかったからって、それで終わりにして放っておいたらいけない。

 もしも薬を開発することで実現する余地があるのなら……

 こっちには薬師や魔法使いどころか神様だってついているのに、その知識を利用しないで何とする!

 特に命とか、生命線とか、補給とか……そういう生死に直結する物事には!

 やれることがあるならやれ、だよね!


 世界の影から支援する。それは勿論。

 それに、私もまだまだ強くなるよ……! ストーカーになる為に!!


 ラスボスに気付かれず、最終ダンジョンまでストーキングを実行する為。

 より高い位置にレベル目標を設定して、5年の間にどこまでやれるのか……

 夢の実現、その為なら我が身なんて惜しくない。努力なんてエベレスト並に積み上げてみせる!


 その一心で、気持ちも新たに。

 昨日も今日も、明日も、明後日も!

 獣人メイちゃん、ストーカーを目指して頑張ります!!


 





 さて、このお話はここでお終いなのですが。

 ……恐らく、読んでくださった方々には不完全燃焼をもたらしているのではないかと思います。

 此処で終わりかよ!みたいな。

 わかっています。小林も、中途半端だとは思っているんです……!

 元よりゲーム世界でゲーム主人公たちのストーカー志望で。

 その目的を達する為に準備したり立ちまわったりしている少女の、ゲーム開始前の世界って設定だったのでどうしてもこうなってしまいます。

 だってこれ、主人公の『修行(こども)編』みたいな立ち位置なので。

 終わり方が不完全なのは、それ故だとご理解いただければ幸いです。


 しかし『大人編』をやるか否かは未定です。

 何故ならまだ具体的なお話が固まっていないから……!


 いつかはやりたいな。

 そう思いつつも、まだ決めるべきお話や設定が曖昧。

 本当に書くかどうかすら確証なしという……本当に、いつか書けたら良いのですけど。

 今の状態では書き始めても更に中途半端なお話になるだけですので、続きを読みたいという方は気長にお待ちいただければ幸いです。いつになるとは、明言できないのですけれど。

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