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獣人メイちゃん、ストーカーを目指します!  作者: 小林晴幸
8さい:ストーカーの大きな一歩
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9-4.序章

3/10 感想欄にてわかりにくいとの指摘を受けて、文中の一部を訂正及び文章の追加を行っています。

 具体的に何が増えたかは、後書きに書き足しています。




 大好きだった、だけど題名を思い出せない『ゲーム』の中で。

 主人公が17歳の時、物語の舞台は予言の終末に向けて動きだす。

 でも、その前に。

 チュートリアルを兼ねた序章が存在する。

 育った村の滅亡という筋書きの、序章が。


 そして、この序章。

 実はセムレイヤ様が大事な要因として登場します。

 むしろ序章の佳境は、セムレイヤ様を引き金に発生する。

 それを考えれば、物語への介入自体は難しくないけど。


 だけどそれは、簡単に行って良いことじゃない。

 メイは、そう思います。


 だって。


 序章は『ゲーム主人公』であるリューク様が使命を知り、世界の滅亡に立ち向かう覚悟を抱く起因になる……重要な部分。

 物語全体を通してリューク様の戦う理由になる、発端。

 とても大事な部分。本当に、とても。

 とてもじゃないけれど、筋書きの改編なんて考えられない。

 それは、しちゃいけない。

 だってそれをしてしまえば、『主人公』の覚悟に大きな亀裂が入るかもしれない。

 世界を救う為の旅、その動機に狂いが生じる。

 下手をしたら、全て狂ってしまう。

 

 序章を無理に変えれば、物語全てが変わる。

 それは私の本意じゃない。


 確かにあったはずの大団円への道筋は閉ざされ、未来と信じるモノへの確信は消え失せ、世界は本当の暗中模索状態になる。

 世界が救われると、私の信じる根拠は崩壊するということ。

 世界救済の道筋が絶えてしまったら、そうなってしまったら……世界は本当に滅びてしまうかもしれない。

 考えたくない予測に、背筋がぞっと冷え込んだ。


 だから、この序章に手を加える勇気は、本当は私にはない。

 筋書き通りに達成できるかで、世界の今後は左右されてしまう。

 それを思えば、過度の干渉は危険だから。



 でもさ。

 でも、でもさ?

 人には勇気を振り絞らないといけない時って、あると思う。


 私は自分がそんなに勇敢だと思えないけど。

 影からひっそりストーカーすることが精々の、臆病者だけど。


 それでも変えたいと思う事態に遭遇した時、私はどうするのか?

 『ゲーム』のストーリーをストーカーと化して追っかけるのなら、同じような事態にこの先、何度も遭遇する可能性はある。

 そんな時、メイちゃんはどうするのか。

 もしかしたら今回のことは、いつか未来に遭遇する事態にどう対応するのか……その方針を定める、重要な転換点になるのかもしれない。


 そんなことをぼんやりと思いながら、セムレイヤ様と序章の場面を何度も何度も繰り返し見ていた。

 夢の中だけど、手元には温かいココア(星型マシュマロ入り)。

 セムレイヤ様には梅こぶ茶をおごりました。夢の中だけど。

 飲み物を片手に、神様と一緒に。

 序章の要点をまとめてみた。



 序章の舞台は、リューク様12歳の夏。

 物語はリューク様(少年期)の日常から始まる。

 それは、何気ない毎日の筈だったのに……

 

 突如、目の前に現れる謎の男(某竜神)。

 自分以外の誰にも見えない謎の男(実父)は、少年に手を差し伸べて言った。

『――このまま此処にいては、貴方に多くの苦難が降り注ぐことでしょう。防ぐ方法はありません……辛い目に遭いたくなければ、私と来なさい』


 こうして見ても、思います。

 思いっきり不審者全開だよ、謎の男(セムレイヤさま)……。


 ぶっちゃけ、警告なのか脅迫なのかわからない。

 

 まあ、こんな不審人物の求めが易々と叶うはずもなく。

 この時のセムレ……謎の男は、すぐに退散しちゃうんだよね。

 だけど、その直後。

 森にいたリューク様達は村の異変に気付いて駆け出した。

 ……で、炎の海と化した村に直面する、と。


 リューク様は知る由もないことだけど。

 それはセムレ……謎の男の気配を察知した、とある存在(ラスボス)の計略によるもの。

 業火に燃える村の中、リューク様は村の中で破壊活動に励みつつ、せっせと家々を燃やしまくる『謎の男(セムレイヤさま)(偽物)』と遭遇する。

 そう、見た目に騙されて、謎の男(セムレイヤさま)が村を滅ぼした……と、目撃者の面々は思いこんでしまう訳です。

 セムレイヤ様、超濡れ衣! 頭からずぶ濡れ!

 

 みんなの仇、と。

 (いきどお)りから戦いを挑む、リューク様達。

 だけど謎の男(偽)の強さは計り知れなく、リューク様達は森に逃げることを余儀なくされる。

 師匠キャラの1人を、後に残して。


 ちなみに足止めに残る師匠キャラは選択肢で分岐します。

 ラムセス師匠とトーラス先生。

 どちらの師匠が残るかで、ゲーム本編開始時のリューク様のステータスが変動するという仕様です。


 翌朝、村があった場所に戻るリューク様達。

 だけどそこには村の痕跡は跡形もなく……

 大地には大きなクレーターが残るのみで、村があったことを示すものは何もなかった。

 ただ、1つ。

 偉大な師の形見を残して……


 どうしてこんなことに……と嘆くリューク様に、生き残った方の師匠が少年の使命を告げる。

 村の皆の、死んだ方の師匠の仇を討ちたいという決意。

 皆の希望を守りたい、世界を守りたいという気持ちから来る覚悟。

 残された仲間達の支えと励ましを受けて、リューク様は旅立つ。


 ……というのが、序章の主な流れなんだけど。


「そういえば私、ストーリーが進むと息子(リューク)に殺されてしまうんですよねぇ」

「セムレイヤ様、それそんなほのぼのと言う事じゃないよ?」

「大丈夫です。その時に向けて、全力で『神をも欺く死んだふり』の修錬に励んでいますので。可愛い息子に、父殺しの業を背負わせる訳にはいきません」

「なんという受け身の覚悟! 無駄にキリッとしすぎだよ、セムレイヤ様ぁ!」


 メイちゃん的に、序章のポイントは4つあります。

  1.少年期のリューク様やエステラちゃんの可愛さ

  2.村の消失

  3.師匠キャラ(選択制)の殉死

  4.セムレイヤ様への復讐心

 これらが作用し合って、メインストーリー時のリューク様(青年期)が完成するのは確実です。

 だから、このポイントだけは外しちゃいけない。

 

 『ゲーム』だとルート発生条件を満たせば、師匠キャラが生き延びる選択肢もなくはないんだけど……ね!


「そういえば、村は派手に燃えていますが……特に誰かが死んだという描写は、ありませんね」

「あ。」

「リュークも村の消失を知った直後、残った師やエステラと共に旅立っているようですし……確か物語が後半まで進んだ頃合いに、村の生き残りに関するエピソードがありましたよね? ですが、村人がどれだけ死んだ、という描写はないような……」

「あ、ああ……!」


 村が滅んだ、消失した。

 そこにばっかり目がいっていたけど……

 改めて視点を変えて、物語を追って確認して。

 私とセムレイヤ様は、抜け道を見つけてしまったかもしれない。


 住民の安全や逃亡の成否については、特に語られていない。

 村が滅ぶなら滅ぶで、建物だけ滅ぼしちゃえば良いんじゃない?……と。



 ラストダンジョン直前で、村が再登場するから。

 その点を踏まえて考えると、安易に保護はしちゃいけないんだけど。

 命の有無に関して確証がないなら、避難させるくらいはしちゃっても……良いよね?




   ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 新しい朝が来た!

 昨日の夜とは打って変わって、しゃっきり気分でお目覚めです。

 なんていうのかな、ちょっと肩の荷が下りた感じ?

 物事は全然解決していない。

 だけど希望がちょっとだけでも見えたから、メイちゃんは今日も元気です。


 まだ朝の04:00だけど。

 バロメッツ家の朝は基本、早い。

 でもそれも、今日は好都合!

 セムレイヤ様情報によると、リューク様は毎朝早くから朝食の時間まで師匠さん達と朝の稽古をやるそうな。

 ラムセス師匠とトーラス先生が住んでいるのは、リューク様のお家の離れ。田舎は土地が広いから、大きなお庭が家と離れの間にあります。

 お祖父ちゃんのお家は、リューク様のお家のお隣さん。

 それってスリルもあるけど、とっても美味しい状況だよね!

 ストーカー(仮免)的には言うことなしの好条件だよ!

 勿論、お祖父ちゃんのお家の窓に関しては、昨夜の時点で全部配置をチェック済みです。

 リューク様の朝稽古を拝見するには、どこに位置取るべきかも検討しておきました。

 

 結果。


 メイちゃんは今、お庭の楠の上にいます。

 だって窓の向き、全部位置が微妙だったんだもん。

 ここからが1番良く見えると結論を出さざるを得ません。

 難点は、1つ。


「おねえちゃん♪」

「おねぇちゃん……」


 木の枝に座る、メイちゃん。

 そのお膝に何故かいる、双子ちゃん。

 弟妹ちゃんは、お姉ちゃんに似てとっても身軽に育ったみたい。

 あれ、馬や羊ってこんな木登り得意な獣人さんだっけ……?


「……って、ここ地上からどんだけ離れてるかな!? 危ないよ、ユウ君エリちゃん!」

「おねえちゃんも危ないよ?」

「……エリはだめなの?」

「う……っ」


 上目遣いでじっと見つめてくる、双子ちゃん。

 ふ、2人のあざと可愛さに負けた……!

 

 内気なエリちゃんは自己主張が苦手。

 でもちゃっかりさんのユウ君は、はっきりと自分の意見を言います。

 即ち、お姉ちゃんだけズルイと。

 自分達が駄目なら、お姉ちゃんも登っちゃ駄目だと。

 ここでお姉ちゃんは良いの!なんて言おうものなら、盛大に騒いでごねられそうです。

 そうなったら、樹上に潜んでいることを標的(ターゲット)に気付かれるかも知れない……!

 苦渋の選択で、メイは双子ちゃんの存在を甘受せざるを得なくなっちゃったよ!

 でも子供が3人とも、こんなところにいるってどうなんだろう?

 その内、心配したパパなりお祖父ちゃん達なりがメイ達のことを探し始めそうで……ちょっとだけ、心配。

 心配だと思いつつも、そこで「じゃあ止めよう」と思えないところがメイちゃんです。

 

『――メイファリナ、リュークが目を覚まして身支度を整え始めました。後5分とせずに庭に現れるでしょう』

(了解です、セムレイヤ様!)


 竜神様による親馬鹿通信で、もうすぐだと告げられて。

 私はわくわくとその時を待ちました。

 もうすぐ、もうすぐ!

 あとちょっとで、リューク様が剣を振るところが見える!


 地味に……ううん、地味どころか、とっても。

 凄く凄く、楽しみです!


 どんな不安や心配や、懸念事項があったとしても。

 観察(これ)だけは止められない。

 それが、メイちゃんの業ってヤツなのでした。





ちなみにセムレイヤ様は力の強い神様なので、殺されても何千年か経過したら復活します。


3/10追加部分↓

 ちなみに足止めに残る師匠キャラは選択肢で分岐します。

 ラムセス師匠とトーラス先生。

 どちらの師匠が残るかで、ゲーム本編開始時のリューク様のステータスが変動するという仕様です。

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