オタク君と幼馴染ちゃん
あるところに1人の男子高校生と1人の女子高校生がいました。
「ねー。それ楽しい?」
「楽しい。楽しいから邪魔しないで」
「邪魔ってなによ。隣で見てるだけじゃない」
「はぁ・・・」
何を言っても無駄だと判断したのか、男の子は小さくため息をついて、またパソコンの画面を見ながらカチカチとクリックする作業にのめり込んでしまいました。
そのことに少しカチンときた女の子でしたが、いつもこんな感じだったので、お返しとばかりに大きな大きなため息をつこうとして大きく息を吸うと、
「すぅー・・・ふぁあああ・・・」
大きなあくびが出てしまいました。
そのあくびとともに伸びをすると、どうでもよくなってきてしまったのか、男の子のいつも寝ているベッドにダイブして寝息をたて始めました。
「ぐーぐー・・・」
「・・・はぁ」
男の子はやれやれといったようにため息をついて、掛ふとんと掛けてあげると、女の子はいつもそうしているかのように鼻の下まで掛ふとんを引き上げて幸せそうにしました。
男の子は健全な高校生らしく、女の子の下着チェックでもするのかと思いきゃ、またパソコンの前に戻ってしまいました。もったいない。
そして表情を変えずにパソコンの画面を見てはカチカチいうとクリックの音だけが聞こえてきました。
男の子が見ているパソコンの画面には、可愛い女の子が話しているであろうセリフの文字に合わせて微妙に女の子が赤面したりあわあわと慌てたりしている画面が映っていました。そうです。ギャルゲーというやつです。
男の子は何を隠そうオタク君なのです。
そこで寝ている女の子は、小さい時からの幼馴染みちゃんなのです。
そしてそこらへんのオタクならば反応せざるを得ない『妹』の次に羨ましがられる『幼馴染み』がいるにも関わらず、オタク君は二次元の世界にどっぷりと浸っており、すでに『二次元にしか興味ないです』
宣言をしていました。
また、それなりに2人の付き合いも長いため、幼馴染ちゃんもそれなりに知識はあるのですが、全然面白さがわかりませんでした。こうやって暇なら遊びに来るのですが、隣でボーッとしていたり、ゴロゴロしてみたり、Hなビデオを探したりするのですが、特に何もせずに日が暮れて帰っていくことがほとんどでした。もちろんHなビデオも見つかりません。
そんな2人は学校ではしっかりとした生徒を演じているため、学校で一番モテモテな2人でもありました。
ある日のこと。
「私と付き合ってください!」
「ごめん。俺、二次元にしか興味ないんだ」
学校帰りに告白されたオタク君は、そう言ってあっさりと断りました。
断られた女の子は学校でのオタク君のことしか知らないため、『二次元=ゴッホとかピカソ的な画家』をイメージしており、それはそれでクールなイメージのオタク君の株を上げるだけとなっており、顔を赤面させていました。
「俺と付き合ってください!」
「ごめんねー。今は付き合うとか考えてないんだー」
幼馴染みちゃんは幼馴染ちゃんで、さらっとそう言って断りました。
そのサバサバ感と、誰にでも壁を作らないオープンな性格で人気を得ている幼馴染ちゃんは、なかなか告白でOKを出しませんでした。女心と秋の空は変わりやすく読めないものです。
そんな2人は家が隣同士なので、何かあるとき以外は一緒に帰っています。これは小さい頃からの習慣であって、決して付き合っているわけではありません。
しかし他人から見てみると、『学校で人気の2人が並んで帰っている』という風に見えるもので、『もしかすると2人が付き合っているのでは?』という噂が流れていたりもしました。
しかししかし2人は全然周りのことなど気にせず、ただいつも通り平和に過ごしていましたとさ。
おしまい