ひとまずend
数日後。
国中に走った知らせは、国民を大いに驚かせた。
元気そうだった国王が突然崩御した、というのだ。
その上、その弟が後継として新王にたった、というのだからあわただしい限りである。
そのあわただしさを見た一部の国民の間では、弟が兄に手を掛けたのではないのか、という噂が流れた。
が、しばらくして。
そんな噂はたちまち霧散してしまう。
前王以上に意欲的に政治をこなし、新しい政策を起こして国を盛り立てていくその手腕に、誰もが口をそろえて、前王以上にすばらしい王だ、と褒め称えた。
そして、数ヵ月後の隣国。
辺境の酒場に、一人の男が酒瓶を傾けていた。
すると、隣に座った男達が話している内容が耳に飛び込んできた。
「トゥエル国の新王が長老達を処断したんだとよ。それもすっぱりと」
「えらく思い切ったことをしなすな。全員を処断したんか?」
「いや、一部の長老を処断したんだとさ。なんとその長老達、国庫の金を自分の懐に収めていたとか」
「ひでえ話だ。だからすっぱりと切れたんだな。これであの国もさらによくなるんでねえか」
「きっとそうなるさ」
話を聞きながら、男の口元には自然と笑みがこぼれる。
あいつはきっとやってくれると思ったよ。
思ったとおり、自分以上にあの仕事に向いているようだ。それに自分にできなかったことを、色々と成し遂げてくれたのであるから。
男は席を立ち上がると、荷物を抱え酒場を後にした。
一方、男が後にした酒場では。
「何かさっき出て行った男の顔。どっかで見覚えがないか?」
「?気のせいだろ。それより、今度の山向こうの国の内乱、どうなっているんだ」
「……そうだな。気のせいだよな」
頭を振って、彼はその考えを打ち消した。
さっき出て行った男の顔が、死んだはずの国王に似ていたなんて、まさかな。
彼は気を取り直して、改めて相手の話に乗った。
「そういや、えらくそのことを気にしてたな。何かあるのか?」
「家の女房の実家があの近くなんだよな」
「そうか。それじゃあ……」
先ほど考えた事を振り払い、彼らは自分達の話で盛り上がっていった。
街道を進んでゆく男はこんな会話があったことは露知らず、こんなことを考えながら歩いていた。
さーて、次はどこへ行こうかな。
蒼天の空の下、ウルトは鼻歌を歌いながらのんびりと歩き始めた。