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自殺屋  作者: 桶十芭
22/29

Case4-3+鬱病

鬱病という病をご存知ですか。

誰でも、病名くらいは耳にしたことがあると思います。

鬱病とは何らかの原因で気分が落ち込み、生きるエネルギーが乏しくなった結果、身体に不調があらわれる病気です。

現在の日本では5人に1人が、一生のうちで一度は鬱病を経験するといわれています。

鬱病は日々のストレスからくるものが大半なのです。決してなる可能性の低い病ではないのです。

特にまじめな方や完璧主義の方、几帳面であったり、人目を非常に気にする方は鬱病になりやすいといわれています。

そして鬱病は、自殺に繋がりやすいのです。

「自分の存在理由がわからない」

「なにもする気が起きない」

「周りの人間にとって自分は必要のない存在なのではないだろうか」

そのような考えが、結果的に自殺という行為を引き起こす。

鬱病は不治の病ではありません。当然治療法がございます。

それでも、なかなか鬱病から立ち直れず、苦しんでいる方は大勢いらっしゃいます。

これからお話するのは、そんな病に今も苦しんでいる、一人の女性の話です。

   

   

彼女は普通の家庭に、普通の子供として生まれました。

小さな頃から母親に、

「女の子らしく」

育てられた彼女。

しかし彼女の人生は途中で急激に降下を始めるのです。

父親の転勤、そして転校先で受けた、幼い子供達のある意味では純粋な、いじめという行為。

純粋で、重く、暗く汚い。

暴力、罵倒。いじめは彼女の体と心を蝕んでいきました。

そして、いじめにあっていた事が両親の耳に入る。

その時の親からの仕置。助けを求める対象であるはずの親からの、厳しい言葉。

彼女の心に、深い恐怖が植え付けられました。

そんな彼女に、更に不幸がふりかかります。

中学生になり、彼女には友人ができました。

しかし、平和な日々がまたも崩れてゆく。

彼女は、様々な濡衣を着せられていました。

してもいないことで、"正しい教師"の皮を被った人間に責められ、酷い言葉を浴びせられ、彼女は何を信じたらいいのか、わからなくなっていきました。

そうして歪んでしまった心が、今度はいじめという行為をする側に姿を変える。

彼女は、今まで自分の心に切りつけられた傷を癒すかのように、いじめを続けました。

しかし、そのようなことでは傷は当然癒えない。

その時は快感を得ても、最終的に残ってしまうのは、深い後悔のみ。

高校に入り、彼女は変わります。

人当たりをよくする。

勉強をし、成績をよくする。

彼女は"優等生"を演じることに徹しました。

しかしそれには、酷く精神的疲労が伴いました。

それが、彼女の罪滅ぼしだったのでしょう。

   

そして大学生になり、彼女に告げられた病名――鬱病――。

周囲の励ましの言葉が、辛い。

「頑張って。」

何が?

「大丈夫だよ。」

どうしてわかるの?

「楽しいこと考えようよ。」

楽しいことって?

「あなたには私達がついてるから。」

私の気持ちなんてわからないくせに。

彼女は現在でも、生きることを悩んでいます。葛藤を続けています。

   

人は誰でも、生きる意味、自分の存在理由はわからないものです。

悩み、苦しみ、それでも生きた先に、本当の存在理由が見付かるのではないでしょうか。

苦しまずに生きる方はいません。

悲しまずに生きる方はいません。

そして誰もが人生の中で自分の生きる意味を探すのです。

それは簡単には見付かりません。

しかし、見付からないことを悲観することはないのです。それが、大抵なのですから。

   

けれど、私は思うのです。

存在理由などそれほど重要ではない。

私達は、"生きる"ために"生まれる"。

それだけなのです。

今回の話は、実在する方の話です。

鬱病の苦しみを、理解して頂けたらと思います。

あなたの周りには鬱病の方はいないでしょうか。

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