表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺屋  作者: 桶十芭
12/29

Case2-6+別

少女が城田と付き合い始めてもうすぐ一ヶ月。

少女は軽い足取りで自殺屋に向かった。

珍しく店の扉が閉まっている。手をかけて横に引いてみても、扉はかたくなに少女が中に入ることを拒んだ。

「…また今度来ようかな。」

少女は本の入ったバックを肩にかけなおし、店の前をあとにした。

   

   

「城田さん!」

部屋に入った少女は、机に伏せてしまっている城田に声をかけた。

気だるそうに上半身を起こし、少女を見る。

その顔は、酷く青ざめている。

「…城田さん?」

少女はゆっくりと近寄り、城田のそばに座った。

俯いたままの城田が、口を開く。

その口からは信じられない言葉が飛び出した。

「……人を…轢いてしまったんだ…。」

「え!?」

「少し疲れて…うたた寝をしていた………こんなことになるなんて…」

「ね、ねぇ、その轢いちゃった人はどうしたの!?病院に連れて行ったんでしょう!?」

少女の必死の問いかけに、城田は首を横に振った。

「…即死だった……人も見ていなかったから…すぐそこの山に捨ててきたんだ…」

「そ…そんな……そんなのすぐに見つかっちゃうよ…城田さん捕まっちゃうよ…!」

体を震わせて動揺する少女の肩を、城田が突然掴んだ。

その手は、酷く冷たく、震えている。

目からは涙が流れていた。

「ごめん…君を守れなくて…」

「え…?」

「…………一緒に死んでくれないか」

思ってもみなかったその一言に、少女は衝撃を受け、怯えた。

これはつまり、心中ということであろうか。

自殺という考えを捨て始めていた少女に降りかかった、究極の選択。

愛する人を見捨て、一人この世界で生きるか

愛する人と共にこの世界から消えてなくなるか

選べるものは、二つに一つ。

少女は俯き悩んだ末に、首を一度縦に振った。

途端に何かが決壊したように涙が溢れる。

体の震えが止まらない。

その体を、城田が強く抱きしめた。

耳元で、何度も何度も「ごめん」と呟きながら。

   

   

「それじゃあ、先に。」

真っ暗な部屋の中、静かなその空間に、がたんと椅子の倒れる音が大きく響いた。

城田の体重に引っ張られ、ロープの軋む音が生々しい。

数分して、もがいていた城田の体が動かなくなった。

力なく垂れ下がった手は、もう、冷たい。

しばらく手を握った後、少女はその隣の椅子に立ち、自ら首にロープの輪を掛けた。

椅子がぎしりと軋む。

「さようなら。」

この世に別れを告げ、少女は椅子を勢い良く蹴った。

   

部屋の中には

  

二体の 首吊り死体。

   

その手は強く強く握られたままだった。

   

   

   

ああ、逝ってしまわれましたか。

残念ですね。規約を守ってさえ頂ければ、残りはあと五冊だけでしたのに。

なんと儚い。

   

男は部屋の中央、机の上に積まれた六冊の本を手に取った。

少女が借りていったものは、五冊。

残りの一冊には、少女の名前が記載されていた。

この本は、少女の一生を綴ったもの。

少女が自殺をするまでの、経緯。

   

また、一冊本が増えてしまいましたね。

   

溜め息ひとつ。

男は少女にぺこりと一礼し、部屋を後にした。

   

   

Case2+end

待っていてくださった方々、更新が遅く、本当に申し訳ありませんでした。

これからは出来る限りの早い更新を心がけたいと思います。

もう少しこの自殺屋、続きますので、お付き合いいただけたらと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ