表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺屋  作者: 桶十芭
10/29

Case2-4+闇

少女が自殺屋を借り始めて一ヶ月、最初あまり乗り気ではなかったが、いつの間にか違和感なく通うようになっていた。

いつものように店に立ち寄り、いつものように男に挨拶をする。つもりだったのだが、男はカウンターにいなかった。

入ってもいいものかと悩むが、本を借りるだけなのだからと思い、足を踏み入れる。

店の中はいつも以上に静まり返っている。

「あの…」

一言店の奥に声をかけるが、男が出てくることはなく、物音もしない。

少女の借りた本は三つ目の棚に入った。自分の借りていた本を手に、棚に向かう。

四冊を戻し、新しく五冊出した。と、そこでふと店の奥の方を見やる。

五つ目の棚から奥は、真っ暗で何も見えない。

しばらくそのまま暗闇を見つめていると、かたりと何か物音がした気がした。

少女は少し戸惑ったが、カウンターに取ったばかりの本を置き暗闇の奥へと進んだ。

一歩、また一歩と歩を進める。しかし、いくら歩いてもまた新しく暗闇が出てくるばかりである。

   

二十分ほど歩いただろうか。

棚は、終わりを見せる気配もない。

ただ真っ直ぐ、黙ってそこに立っている。

こんな小さな店、なぜ二十分も歩いて壁が見えないのか、恐怖すら感じる。

少女は途中で奥に向かうのを止め、元来た道を引き返した。

一本道の廊下なのに、迷うのではないかと思ってしまう。

また二十分ほど歩くと、五冊分の空きがある棚が見えた。

そこで少女はどきりとした。

その棚の前に、男が立っているのだ。じっとこちらを見つめて。

少女は一度足を止め、ゆっくりと男のいる方へ向かった。

少女が目の前まで来ると、男はにこりと微笑んで言った。

「棚の最後は見られましたか。」

「…いえ。」

「そうですか。…そういえば言いませんでしたね。不用意に店の奥に入らないでください。今回はよしとしますが、今度店の奥へ立ち入った場合は…わかっていただけますね。」

終始笑顔で話す男が、何か生き物ではないものに思えた。

少女は一度頷き、カウンターに置いた本を持って店を飛び出した。

男は急いで去っていった少女を見送り、ほうきで店の前の掃除を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ