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n回目の青い春  作者: 結城 からく


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第92話 最終日

 朝の七時。

 穏やかな気分で隼人は目覚める。

 彼は深呼吸をしてからベッドを出た。


(いよいよ今日で卒業……ループを脱出できるんだ)


 気持ちを落ち着かせつつ、隼人は目標のプリントを手に取る。

 そこには「最後の目標:母校を卒業する」と書かれていた。

 隼人は短い文言を何度も読み返して微笑む。

 早くも達成感に近いものを覚えたのだ。


 次に隼人は集合写真を手に取った。

 刹那、彼はぎょっとする。


「えっ……」


 写真には数十人の生徒が並んでいた。

 隼人は大慌てで部屋を漁り、別の写真や手紙類を確認する。

 結果、今日の三年は六クラスだと発覚する。

 過去に遭遇した生徒数を除くと、それは学年のほぼ全員が卒業式に留まっていることを意味していた。


「な、なんで……十年間も最終日に……?」


 戸惑う隼人は写真を置いて震える。

 本能が警鐘を鳴らす。

 この時点で、平和な卒業式にならないであろうことを彼は察知した。


 隼人はスマートフォンで彩に連絡を取る。

 彩は挨拶を省いて隼人に尋ねた。


「ねえ、ニュース観た?」


「いや……」


「いつもの公園に来て。今すぐ」


 真剣な彩の声を聞いて、隼人は荷物を持って家を飛び出した。

 二人はほぼ同時に公園に着いて合流する。

 彩は隼人の手を引いて学校の方角へと向かう。


「ニュースがどうしたの」


「あたし達の学校で放火と大量殺人だって」


「え?」


 隼人は顔を歪める。

 彼の脳裏には、文化祭の殺戮が浮かんでいた。

 早足になった彩は、険しい面持ちでぼやく。


「佐伯先生の言う通りだったね。スムーズに卒業はできないなー」


「少なくとも……今回でクリアするのは厳しいね」


「うんうん。学校が台無しだもん。目標も"母校で卒業"って書いてあったから、他の学校を使う作戦も厳しいし」


 二人の前で横断歩道が赤信号になる。

 車の往来がないことを確かめてから、彩はいきなり駆け出した。

 隼人も引っ張られながらなんとかついていく。


「でも、まずは学校に行かなきゃ。何が起こったのか調べないと、対策できないからね」


「そうだね。気を付けて向かおう」


 頷く隼人は鞄の中を覗き見る。

 そこには筆箱や参考書ではなく、無骨な拳銃が入っていた。


(使う機会がないといいけれど……)


 頼りなさげに祈る隼人であったが、その願いが叶わないであろうことを直感的に理解していた。

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