表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
n回目の青い春  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/101

第74話 逃避行

 隼人は自室で跳ね起きた。

 ベッドから転がり落ちた彼は、深呼吸を繰り返す。

 身体を打った痛みはあるものの、ナイフで刺された傷は一つも残っていなかった。


 起き上がった隼人は、スマートフォンに表示された日付でループを確認する。

 次に集合写真を手に取った。

 そこには隼人、彩、英仁の三人が写っている。


「あいつも今日に留まっている……立花さんが狙いだな」


 スマートフォンに彩からの着信が来た。

 隼人はすぐさま画面をタップする。


「もしもし」


「隼人君、いつもの公園まで来れる?」


「すぐ行くよ」


「出かける準備もしといてね」


「うん」


 家を飛び出した隼人は早足で公園へと向かう。

 到着したのは数分後だった。

 ほぼ同じタイミングで彩も公園に現れる。


 二人は挨拶もせずに並んで歩き出した。

 公園を出ると、外灯の明滅する住宅街を進んでいく。


「移動しながら話そっか」


「そうだね。あいつから少しでも離れないと……」


 淡々と歩く二人の間には緊張感が満ちる。

 彩は大きくため息を吐いて愚痴った。


「告白を断ったら殺すなんて、いくらなんでも酷いよね。なんか妄想とか思い込みも激しかったし」


「あれは話が通じないと思う……近付かない方がいい」


「さっさと目標をクリアして明日に進もう」


「それが一番だね……」


 会話する隼人の目は、絶えず周囲を観察していた。

 僅かな違和感も見逃さないように注意している。

 彼は英仁の襲撃を警戒していた。


 一方、彩は地図アプリで周辺を調べる。


「駅でタクシーに乗る? この時間ならギリギリいると思うけど」


「いや、あいつに待ち伏せされているかもしれない。目立つ場所は避けよう。時間はかかるけど、徒歩で移動するのが安全だと思うよ」


「でも徒歩で行ける範囲だと場所は限られるよ。どこに行くの?」


「もう決めてある。ちょうどいい場所があるんだ」


 隼人の先導で移動すること数十分。

 県境の道路を歩く二人は、前方に寂れたラブホテルを発見した。

 外観で察した彩は納得する。


「あー、なるほどね」


「ごめん。でも確実に安全なんだ。ここに閉じこもれば、安全に"明日"を迎えることができる」


「別にいいよー。分かってるからさ。高校生二人じゃ、この時間に普通のホテルは取れないからね。仕方ないよ」


 落ち込む隼人をフォローしつつ、今度は彩が先行する。

 そうして二人は建物へと入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ