第67話 警戒心
放課後、隼人と彩は教室に集まっていた。
問題集を解く彩は、シャーペンを回してぼやく。
「まさかループ経験者の先生がいるとは思わなかったなー」
「佐伯先生だよね」
「うん。しかも七十年って! やばすぎでしょ。仙人みたいだもんね」
「せ、仙人……?」
彩の独特な感想に、隼人は勉強の手を止めて戸惑う。
彼のリアクションも気にせず、彩は話を続行した。
「隼人君はさ、佐伯先生のこと信じていいと思う?」
「……正直、素直に信用するのは危ないんじゃないかな」
「どうして?」
「佐伯先生が具体的にどんな研究をして、何を知っているのか分からない。主義主張だって謎だ。優しい言葉で僕達を騙すつもりかもしれない」
隼人は声量を落として意見を述べる。
その視線は廊下側に向けられており、盗み聞きされることを恐れていた。
「先生は僕達に武器を用意してくれると言っていた」
「親切だよね」
「違う。これは裏を返せば、通常なら用意できない武器を保有している……もしくは購入するルートを知ってるってことなんだ」
「通常では用意できない……銃とか?」
彩の言葉に隼人は頷いた。
彼はまた廊下を一瞥してから語る。
「文化祭の時、銃を持ってる人間がいた。単に警察や自衛隊から奪っただけかもしれないけど、佐伯先生が提供した可能性がある」
「でもそんなことするかなぁ……」
「僕達は佐伯先生のことを何も知らない。十分にありえると思うよ」
「なるほど……隼人君がそう言うなら信じる」
「とにかく信用しすぎない方がいいってことだね」
「うん、分かった!」
佐伯に関する話題が終わり、二人は宿題に集中する。
先にすべての問題を解いた彩が、ニヤニヤと笑って隼人を見つめる。
視線に気づいた隼人は、困惑気味に尋ねた。
「ど、どうしたの」
「突然ですが……一週間後、大事なイベントがありまーす! それは一体なんでしょう!」
「いきなりクイズ……?」
「そう、クイズ! 答えてみて! 正解したら一億点あげる!」
「えっ、えー……」
突然の展開に隼人は混乱する。
期待の眼差しを受ける中、彼は慌てて考察を始めた。
(中間テストはもう少し後のはず……他に行事なんてあったっけ……)
十秒ほどの思考を経て、隼人は両手を上げて降参した。
「ごめん、分からないや」
「仕方ないなー。正解は……あたしの誕生日ですっ!」
彩はここぞとばかりの笑顔でカミングアウトした。




