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第6話 訪れた明日

 朝日を顔に浴びた隼人は跳ね起きる。

 彼は反射的に時計を確認した。

 デジタル表示は今日が四月八日であることを示している。

 それを見た隼人は、驚きと喜びでへたり込む。


「進んでる……」


 次に隼人は勉強机のプリントを掴み取る。

 そこには「今日の目標:先生に元気よく挨拶しましょう」と書かれていた。

 隼人は鼓動が速まるのを自覚する。


(こっちも変わってる……やっぱり目標をクリアすると明日に行けるのか?)


 ゲームや漫画の知識を参考に、隼人はループの法則性を考察する。

 彼は真面目に頭を巡らせていたが、プリントの目標を読み直した途端に呻いた。


「元気に挨拶かぁ……」


 根暗な隼人にとって、元気な挨拶と難しい目標だった。

 そもそも彼は大声を出すのが得意ではない。

 目立つことも嫌いであり、積極的にこなしたい内容ではなかった。


(ループには飽きてるけど、なにがなんでも明日に進みたいわけじゃないんだよな)


 弱気になりつつも、隼人は階段を降りる

 キッチンでは母が二人分の弁同を作っているところだった。

 隼人は控えめに挨拶をする。


「あ、おはよう……」


「おはよう、隼人。今日も早起きね。すぐにご飯用意するから少し待ってて」


「うん」


 母は手際よくテーブルに料理を並べていく。

 里芋との入った味噌汁。

 玄米と納豆。

 焼き鮭に甘めの味付けの卵焼き。

 すべて隼人の好物だった。


 隼人が朝食を食べ始めると、母はさりげなく話題を振る。


「昨日の始業式はどうだった?」


「まあ、普通。三年生が他にいなかったけど」


「そんなの今更でしょ。入学した時からずっと一人なんだから。過疎地域でもないのに不思議よね」


「…………」


 母の発言に隼人が箸を止める。

 雑談の中に生じた異変を認め、彼は小さく嘆息した。


(やっぱり僕以外の記憶が改変されている。いなくなった人間は存在ごと消された? それともここは三年が僕しかいないパラレルワールドで……)


 飛躍した妄想が膨らむ中、眠たそうな顔の父がリビングに現れた。

 父は隼人の正面に座って彼を気遣う。


「どうした、顔色が悪いぞ。無理して学校に行く必要はないが……」


「大丈夫、平気だから。ちょっと中間テストのこと考えてただけ」


「成績なんて気にするな。そんなものどうとでもなる。自分のペースを保つのが第一だ」


「うん、ありがとう。マイペースに頑張るよ」


 隼人はなんとか笑顔を作って応える。

 その後、彼はさっさと支度を済ませて玄関で靴を履く。


(父さんや母さんに相談しても意味がない……ループは僕だけの問題なんだ)


 隼人は「いってきまーす」と言って家を出る。

 その足取りは昨日よりも力強くなっていた。

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