表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
n回目の青い春  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/101

第54話 十年分の経験値

 対戦する二校がグラウンドに入場する。

 一方が隼人達の高校の野球部だった。

 向かい合うように並んだ両者は礼をする。


 彩は集合写真と実際の選手を見比べて語る。


「三年は四人……全員がスタメンだね。他のメンバーはループの自覚が無いけど、どんな試合になるんだろうね」


「うーん……」


 隼人は、ループする四人の野球部員に注目する。

 ぎらついた目に不敵な微笑。

 緊張や不安を感じさせない、やる気に漲った姿である。

 居並ぶ選手の中で、その四人だけが異様な雰囲気を醸し出していた。


 彼らの年齢不相応な佇まいを観察し、隼人は予測を進める。


(殺意は感じられない……ただ試合に対する熱意っぽいけど……断言はできないな。何が目的か分からないうちは油断すべきじゃない)


 隼人が疑いの目を向ける中、試合は始まった。

 先攻は隼人達の高校だった。

 一番バッターとして三年の一人が登場する。


 溶けかけのアイスクリームを舐めつつ、彩は隼人に尋ねる。


「どっちが勝つと思う?」


「どうだろう。向こうは強豪校らしいから、順調にいけばうちの学校が負けると思う」


「でもループ組がいるからね」


「そうなんだよ。十年分の経験は大きい。ひょっとすると、プロ選手くらい上手いかもしれない」


 隼人の推察を聞いた彩は、苦笑気味に手を振る。


「えー、さすがにそれはないでしょー。同じ日を繰り返すってことは、身体を鍛えても意味ないし……」


 彩の言葉を遮るように、爆発的な歓声が上がった。

 力強いスイングが第一球を天高く飛ばしたのだ。

 ボールは勢いを落とさず、緩やかな放物線を描いて伸びると、そのまま球場の外へと消えた。

 開幕直後に場外ホームランを披露したバッターは、大歓声を浴びながら悠々とベースを一周する。


 さらにそこから怒涛の攻撃が続いた。

 打席は残る三人のループ経験者に回り、全員がホームランを見せつける。

 絶望的な展開での四点差に、相手チームの投手は顔面蒼白で固まっていた。


 熱狂する周囲とは対照的に、隼人と彩は冷静だった。


「……前言撤回。十年分のトレーニングってヤバいんだね」


「まさかここまで強いなんて……」


 その後、試合は一方的な展開が繰り返された。

 相手チームも懸命に対抗したが、ループ経験者の猛攻を前に点差は開くばかりだった。

 加えて各選手の癖を完璧に把握したピッチングには敵わず、一点も取れずに敗北した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
4人全員二刀流か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ