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第49話 ループの経験

 咳払いをした彩は、少し居心地が悪そうにしつつ、隼人に質問をする。


「美穂さんがループ経験者なのは分かったけど、どうやって見つけたの?」


「終業式の翌日、学校の図書室で卒業アルバムで、過去の生徒を調べたんだ」


 隼人はアイスコーヒーを一口飲む。

 それから彼は続きを話した。


「僕らの学校には、生徒数が自然に少ない年がある。酷い時は卒業生が数人だった」


「それってもしかして……」


「たぶんループが発生した年なんだと思う。未だに抜け出せていない人がいるから、生徒数が少ないままなんだ」


 隼人は己の説明に底知れない恐怖を覚える。

 今まさに自分達が同じ末路を辿りかねないことを理解しているからだった。


「僕は生徒が少ない年のアルバムを集中的に調べた。そこで知り合いだった美穂さんを見つけた」


「隼人君はご近所さんで、小学生の時に同じ班で通学してたんだよね。それで昨日、私の家まで来て事情を話してくれたんだ。まさか隼人君もループに巻き込まれるなんて……」


 美穂は深刻そうに呟く。

 一連の話を聞いた彩は、感心した様子で隼人を見た。


「それにしても、すごい行動力だね。ループからの脱出は私から提案してけど、まさかこんなに早く進展するなんて思わなかったよ」


「僕はいつも立花さんに任せきりだった。だから今回は役に立ちたかったんだ」


「ありがとう、隼人君。最高だよっ」


 笑顔になった彩は、テーブル越しに隼人に抱き着こうとする。

 慌てる隼人は力いっぱいに仰け反って躱した。

 彩は頬を膨らませて不満そうにする。

 それを眺める美穂は、苦笑しつつ手をひらひらと振った。


「お二人さーん、イチャイチャしてるところ悪いけど、本題に入ってもいい?」


「あっ、お願いしまーす」


 彩はすぐさま席に座り直し、話を聞く態勢になる。

 美穂は自分の運んできたクリームソーダを飲んでから語り始めた。


「ループについて、私は過去に何度か調べたことがある。ループ中も、卒業後も調査したよ。それでいくつか分かったことがあるんだ」


「何がわかったんですか」


「まず、ループはあの高校の三年生にだけ発生する。ただし毎年じゃない。数年に一度、ランダムに発生してるんだ」


「発生条件や法則はありましたか?」


「それが何も分かんないんだよねえ……ループの正体とか黒幕も謎だし……そもそも明確な答えがあるのかも微妙って感じ。誰の悪意も存在しない……ちょっと理不尽だけど"そういう現象"として解釈するのが一番じゃないかな」


 苦い表情で述べる美穂は、悔しそうにため息を洩らした。

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