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n回目の青い春  作者: 結城 からく


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第47話 三分の一

 翌日になると、臨時休校は無かったことにされていた。

 菅井竜輝の前日に取り残され、彼が原因である文化祭の事件が丸ごと消失したためだった。

 真実を知る者は、隼人と彩の他にいなかった。


 そして七月下旬。

 一学期の終業式を終えた隼人と彩は、昇降口から正門へと向かう。

 彩は晴れ晴れとした面持ちで伸びをした。


「ふうっ! やっと夏休みだ―!」


「長い一学期だった……」


「本当だよ。十年と数か月だからねー。この解放感も久々だもん」


「文化祭の後は他の三年と会わなかったね」


「夏休み直前で止まる人なんていないんでしょ。みんな八月で待ってたりして」


「確かにありそう……」


「永遠の夏休みって響きが良いじゃん」


 冗談めかしたことを言いつつ、彩は通知表を広げた。

 彼女は一学期の成績を改めて確認すると、何度も頷いて笑顔になる。


「期末テストはギリギリだったけど、追試も補習もないからセーフだね! 隼人君はどうだった?」


「僕も大丈夫……」


「よしよし、じゃあいっぱい遊べるねー。実はもう色々と予定を立ててるんだー。隼人君も忙しいとは思うけど、メインイベントは参加してもらうよ」


「メインイベント?」


 隼人がオウム返しに尋ねる。

 立ち止まった彩は、胸を張って宣言した。


「この夏休み、二人でループから抜け出す方法を探すよ」


「え? そ、そんなこと可能なのか……?」


「わかんない。でも調べる価値はあるんじゃないかなー。せっかく時間に余裕ができるんだし、チャレンジしてみようよー」


「そ、そうだね。頑張ろう」


 控えめに応じた隼人だったが、一抹の不安を覚える。

 それは達成困難な目的に対するものだった。


(ループを脱出する……一体どうすればいいんだろう)


 隼人は色々と頭を巡らせる。

 これまでに触れてきたゲームや映画、漫画等の知識を総動員するも、明瞭な解決策は思いつかない。


(僕はこのまま目標に従って進み続ければいいと思っていた。でも立花さんは違うんだ。流れに身を任せず、自分でループを乗り越えようとしている)


 感心すると同時に、隼人は己の不甲斐なさを認める。

 ここで落ち込んでも心配させるだけなので、彼は表面上は笑顔を崩さない。

 一方、心の内ではループ脱出に向けての策を練り始めていた。


(頼ってばかりじゃ駄目だ。僕自身も成長する……役に立つんだ)


 そう決意する隼人の横顔は、四月時点よりも凛々しく、固い意志を宿していた。

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