第42話 殺意の刃
激怒する竜輝は隼人と彩に拳銃を向けた。
「てめえら……ふざけやがって。クソが」
「待って! もう戦っても遅いよ! あなたも閉会式の放送を聞いたでしょ。今日はもうループできないよ!」
「うるせえ! 変なこと言ってんじゃねえッ!」
竜輝が怒鳴りながら発砲した。
弾は逃げ惑う一般客に命中する。
倒れた一般客を踏み付けて竜輝は叫ぶ。
「ループだとか目標だとか知らねえよ! 舐められたまま逃がすわけねえだろ! ぶち殺してやる!」
竜輝が大股で歩き出した。
彩はすぐさま後方へ走り出そうとする。
「隼人君、逃げよう!」
「いや、駄目だ。僕は立ち向かう」
「どうして! 殺し合っても意味はないんだよ!?」
「意味はある」
断言した隼人は、ポケットから折り畳みナイフを取り出した。
震える指で刃をパチッと展開すると、深呼吸をして歩く。
「僕は過去に打ち勝ちたい。克服して"明日"へ進むんだ」
次の瞬間、隼人は全力疾走で竜輝に迫る。
竜輝は目を血走らせて拳銃を構えた。
「こっち来るんじゃねえよ、ボケ!」
二度の銃声。
隼人の動きは止まらない。
弾は当たらなかった。
勢いのまま踏み込んだ隼人は、竜輝の腹にナイフを突き立てる。
強烈な痛みに竜輝は顔を歪めた。
「ぐあっ!?」
反射的に振られた拳が隼人の顔面に炸裂した。
尻餅をついた隼人は鼻血を垂らす。
その額に銃口が突きつけられた。
「死ねよ、グズ」
「うあああああああああっ!」
大声を上げて跳びかかった彩が、竜輝の腕にスタンガンを当てた。
電流を受けた竜輝は怯み、拳銃を落としてしまう。
隼人は咄嗟に拳銃を拾って構える。
竜輝は彩を羽交い絞めにして人質に取っていた。
「へへっ……う、撃ってみろよ。こいつが死ぬぜ?」
「隼人君……」
「…………」
怖がる彩を見て、隼人は引き金から指を離した。
ほくそ笑んだ竜輝は、勝ち誇った様子で要求する。
「おら、銃を寄越せ。そしたら楽に殺してやる」
「渡す必要はないよ」
落ち着き払った声がした。
刹那、竜輝がよろめいて倒れる。
シャツの背中が裂けて、じわじわと血が滲み出していった。
解放された彩は腰を抜かして地面に座り込む。
「やれやれ、詰めが甘いね」
ため息混じりに日本刀を鞘に納めるのは、満身創痍の吉良太一だった。