表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

第35話 新たな問題

 また沈黙が訪れた。

 彩は言いづらそうに話を切り出す。


「ところでさ、ずっと気になってたんだけど……菅井竜輝って知り合い?」


 隼人が動きを止めた。

 幾度か言葉に迷った後、彼は頷く。


「……うん、一応。小学校から同じだから」


「仲が悪いの?」


「菅井君が僕を集中的に殺すから?」


 訊き返された彩は黙り込む。

 その指摘が図星だったからだ。

 二十回以上のループのうち、竜輝は隼人の死因の大半に関わっていた。

 銃殺に至っては二度や三度では足りなかった。


 缶コーラを置いた隼人は、恐る恐る打ち明ける。


「ずっといじめられてるんだ。なんとか我慢してきたけど、高校二年で耐え切れなくなって不登校になった。僕にとってトラウマなんだ」


「それなのに訊いてごめんね」


「大丈夫だよ。もう、平気だから」


 そう答えた隼人の手はまだ震えていた。

 彼は拭い切れない恐怖に顔を曇らせて言う。


「菅井君は、昔より残虐で危険だった。十年分のループで人殺しを楽しんでいる。僕達をきっと逃がさない……目標達成を必ず邪魔してくるはずだ」


「ほんとに厄介だねー。今回から新しい問題も増えたのに……」


「そういえばそうだったね……」


 隼人と彩は同時にため息を吐く。

 ループする人間にとって、起床時に日付と目標プリント、集合写真を確認するのは習慣となっていた。

 それら三つから状況を把握するのである。


 公園に集合する前、二人は例に漏れず確認作業を行ってきた。

 日付とプリントに異常はなかった。

 問題は集合写真だ。

 写真には、これまでの回の文化祭には存在しない生徒が写っていた。


 彩は悩ましい顔で意見を述べる。


「消極的になるけど、しばらくは大人しくした方がいいかもね」


「僕もそう思う。今のところ打開策も見つからないし、当分は隣町で――」


「やれやれ、ここには臆病者しかいないようだ」


 公園の入り口から、二人の会話を遮る声が上がった。

 隼人と彩はぎょっとする。

 日本刀を携えて佇むのは吉良太一だった。


「陰口とは感心しないな。正面から言えばいいのに、ほら」


 微笑む太一は悠々と歩みを進める。

 片手はさりげなく日本刀の柄に触れていた。

 人差し指がカチカチと叩くように音を鳴らしている。


 凍り付く二人の前にやってきた太一は、やはり微笑を浮かべたまま尋ねた。


「高校最後の文化祭だというのに、なぜそんなに浮かない様子なんだ。説明してくれるかな」


「説明したら、あたし達のことを殺さない……?」


「それは約束できない。だけど、断れば今すぐに斬る」


 太一は淡々と宣言してみせる。

 隼人と彩に選択肢などなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ