第34話 死を伴う試行錯誤
数時間後、隼人と彩は学校に忍び込み、鍵を盗んで体育倉庫に隠れた。
閉会式まで時間を稼ごうという魂胆だった。
しかし文化祭が始まってすぐに他の三年生に見つかり、袋叩きにされて死亡した。
次に隼人と彩は、より安全な策を選択した。
まず学校には近づかず、隣町まで移動して時間経過を待った。
そうして閉会式の時間が迫ったタイミングで学校へ向かう。
二人が学校に到着した時、敷地は警察によって隔離されていた。
焼け焦げた校舎に夥しい数の死体。
マスコミと遺族がごった返して現場はパニック状態だった。
閉会式など行われるはずもなく、二人はあえなくループした。
殺戮を止めなければ目標を達成できない。
それを悟った隼人と彩は文化祭が始まる前に三年生の捕縛を試みるも、返り討ちに遭って殺された。
同じような挑戦を手段を変えて繰り返すが、やはり対応されて失敗する。
十年分の殺し合いの経験は埋めがたい差となり、隼人と彩を死に追い込む一方だった。
何度も隠れ、逃げて、そして戦う。
二人は諦めることなく解決方法を模索し続けた。
それでも有効な手段は見つからず、文化祭の日だけループ回数は二十回を超えた。
精神的に疲弊した二人は、深夜の公園で休息する。
度重なる失敗によって重苦しい空気が漂う。
缶コーラを一気飲みした彩は、足をばたつかせて喚いた。
「もう、何なの! こんなのクリアできるわけないじゃんー」
「予想はしてたけど、結構厳しいね……」
「うんうん。殺されるのに慣れてきた気がするもん」
「僕も……」
下を向いた隼人は吐き気を堪える。
繰り返し惨殺される感覚は決して気持ちのよいものではなかった。
ループのたびに肉体は回復するが、心はそうもいかない。
「閉会式の時間を早めればいいと思って校長先生に直談判したけど、普通に断られちゃったね」
「完全に冗談と思われたね」
「そりゃそうだよー。文化祭で生徒が殺し合いを始めるとか想像できないもん」
彩はぐったりとベンチに座って嘆いた。
コーラを飲んだ隼人は、慎重な口調で意見を述べる。
「でも、閉会式をどうにかするという発想は間違ってない……と思う。他の三年に対処するのは難しいし、それしかないはずだ」
「じゃあどうする?」
「そ、それはちょっと分からないけど……」
隼人は視線をそらして言葉を濁すしかなかった。




