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第31話 殺戮の日

 六月中旬。

 晴れやかな青空が広がるその日、学校の敷地全体が阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 炎に包まれた校舎から幾人もの人々が飛び出す。

 彼は恐怖に染まった顔で校門に向かう。


「た、助けてえっ」


「こんなの滅茶苦茶だ!」


「誰か警察を」


 そこに軽トラックが追突して人々を容赦なく轢き潰す。

 追突が当たらなかった者も、背後から忍び寄る数人の生徒に刃物で滅多刺しにされた。

 徒党を組む生徒達は、血の付いた凶器を片手に言葉を交わす。


「今ので何人?」


「合計で十三くらい」


「少ないな」


「ペース上げるか」


 頷き合った生徒達は中庭へと走り去った。

 そしてまた悲鳴と喧騒が響き渡る。


 正門付近では屋台が爆発炎上していた。

 血を流す生徒や一般客があちこちに倒れている。


 中島隼人は、昇降口の端で震えていた。

 彼は顔を手で覆って涙を流す。


「ああ……あああっ……そ、そんな……」


 そこには彩がうつ伏せに倒れていた。

 隼人は彼女の肩に恐る恐る触れて揺さぶる。


「ねえ、立花さん……起きて……お願いだから……」


 彩は反応しない

 彼女の後頭部は大きく陥没している。

 鈍器で激しく殴られた痕だった。


 絶望した隼人は呻く。


「なんで……どうして、こんなことに」


 刹那、銃声が轟いた。

 腹に強い衝撃を受けた隼人は倒れて悶絶する。

 出血がワイシャツを赤く染めていった。


「うあ……ああああああっ……!?」


「騒ぐなよ。周りに迷惑だろうが」


 苦悶する隼人を嗜めるのは、長身の男子生徒だった。

 その生徒の手には拳銃が握られている。


「よう、中島。久々だなぁ。もう学校に来んなって言ったのに、なんでここにいるんだ?」


「す、菅井君……」


「そんなにビビったどうした。昔のことでも思い出したか」


 菅井竜輝は悪意に満ちた笑みを湛え、煽るように隼人の頭を何度も叩く。

 隼人は苦しそうに唸ることしかできなかった。


「ううっ……ううう……」


「はっはっは! 情けねえなおい!」


 竜輝は隼人の腹を執拗に蹴り始めた。

 出血が悪化し、床に血だまりが広がっていく。

 ひとしきり満足したところで、竜輝は隼人のこめかみに銃口を押し付けた。


「せっかく再会できたんだ。これからもよろしくな」


「ま、待っ――」


 放たれた銃弾が隼人の脳を貫く。

 そこで彼の意識は途切れた。

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