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n回目の青い春  作者: 結城 からく


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第28話 努力と決意

 その日から隼人、彩、俊司は三人で勉強に励むようになった。

 授業を真面目に受けて、放課後は教室や図書室で下校時刻まで予習と復習を反復する。


 彩と隼人は十年ぶりの猛勉強に苦戦を強いられた。

 分野によっては中学校の範囲すら憶えておらず、解説役の俊司を大いに悩ませる。

 俊司自身が他人に教え慣れていないこともあり、当初は思うように指導できていなかった。

 しかし、次第に要領を得て二人分のスケジュールを組み、効率よく進められるようになっていた。


 そうして三人はループすることなく二週間を過ごし、中間考査の当日を迎える。

 三人は各教科のテストに挑み、学校帰りにファーストフード店へと駆け込んだ。

 テーブル席に座った彩と隼人は、解放感を味わいながらぐったりとする。


「やっと終わったー。一日で全教科とか、うちの学校厳しいよねー」


「疲れた……」


「とりあえず追試は回避できたかな。数学がキツかったけど」


「僕は英語が大変だったな」


「わかるー。もう一生分は勉強したよねー」


 会話する二人の目の前に、山盛りのポテトとハンバーガーが置かれた。

 それらを運んできた俊司は、眉間に皺を寄せて苦言を呈する。


「ふざけるな。まだ一学期の中間だぞ。高校だけでも勉強の機会は何度もある。そもそも人生というのは学びばかりで――」


「説教はいらないよー。というか、人生を語れるほど生きてないでしょ」


「僕達の体感年齢は三十歳手前だ。大人と称しても差し支えない」


「いやいやー、同じ日の繰り返しで十年って、何も成長してないと思うよ。成長する気があるなら、とっくに別の日に進んでるだろうし。四月に留まってるあたし達は、本物のアラサーとは程遠いんじゃないかなー」


 的確な指摘を受けた隼人と俊司は黙り込む。

 言い返す立場にないことは、発言した彩自身を含む全員が理解していた。

 自虐的な笑みを浮かべた彩は手を鳴らして空気を変える。


「まあいいや。とりあえず今日は楽しもうよー」


「その前に話したいことがある」


 俊司が真面目な顔で切り出す。

 ポテトをつまもうとした他の二人は手を止めた。

 深呼吸の後、俊司は重い口調で告げる。


「僕はループに残る。君達だけ先へ進んでくれ」

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