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n回目の青い春  作者: 結城 からく


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第24話 新たな生徒

 その後、隼人と彩は二人で"明日"へと進んでいく。

 特に大きな問題もなく、学校生活を楽しみながら毎日の目標をこなし続けた。

 そうして一度もループせずに四月を過ごし、五月を迎えた。


「隼人君、おはよー」


「お、おはよう」


「なんか緊張してるー?」


「そりゃそうだよ。だって……」


 隼人は張り詰めた表情で集合写真を取り出す。

 そこには隼人と彩の他に、眼鏡をかけた男子生徒が写っていた。


「これ……誰だ?」


「滝川俊司君。学年トップの秀才だよー。どんな子だったかは忘れちゃったけど」


「同じ学年って言っても、十年前だもんな」


「うんうん。面と向かって喋ったこともないし」


 頷いた彩は眉間に皺を寄せた。

 彼女は写真をじっと見つめて疑問を呈する。


「俊司君、こんな日に留まって何してるんだろう?」


「吉良みたいに人殺しを楽しむタイプじゃないといいんだけど……」


「そのパターンならすぐ逃げよっか。今日の目標は"電車に乗ること"だし、まあなんとかなるでしょー」


 彩は気楽に笑って言う。

 隼人はやや不安を滲ませながら写真を仕舞った。

 その横顔を一瞥した彩は、言葉を選びつつ提案する。


「ぶっちゃけさ、学校サボって電車に乗るのもアリだよ? そっちの方が安全じゃん」


「でも、僕は会ってみたい。どんな人間か知ってみたいんだ」


「隼人君は変わり者だねえ。いいよ、付き合ってあげる」


「ありがとう。心強いよ」


 隼人達は教室に向かう。

 がらんとした教室には三つの机が置かれていた。

 そのうち一つに座るのは滝沢俊司だった。

 彼は大量の参考書を積み上げて、一心不乱に猛勉強している。


 その後ろ姿を目撃した二人は、教室に入らずに無言で顔を見合わせた。

 重苦しい空気に耐えられなくなった彩は、隼人の耳元で囁く。


「これってさ、入っちゃ不味いかな。邪魔そうだし」


「許可を取る必要はない。君達には権利がある」


 手を止めた俊司が立ち上がった。

 彼は毅然とした態度で隼人と彩を見据えていた。

 彩は小声で隼人に尋ねる。


「どうする?」


「とりあえず入ろうか……」


「うん」


 隼人と彩は教室に入って席に座る。

 そこまでを見届けた俊司は、顰め面のまま勉強を再開した。

 私語をする空気でもなかったので、隼人と彩は黙ってホームルームを待つことになった。

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