第23話 明日に君はいるのか
夕暮れが迫る公園。
隼人と彩はブランコに乗っていた。
大きな買い袋を抱えた彩は、満足した顔で感謝を述べる。
「いやー、今日はありがとうー。楽しかったよー」
「こちらこそ……面白かった」
「それは良かった」
彩は少し勢いをつけてブランコから飛び降りる。
緊張した面持ちの隼人は、その背中に話しかけた。
「賭けは……立花さんは明日に……」
「ストップ。ここで訊くのは野暮だよー」
振り返った彩が言葉を遮る。
彼女は大股で隼人に近付くと、その頭を乱暴に撫で回した。
「結果は内緒。"明日"のお楽しみってことで。じゃあねー」
彩は手を振りながら公園を去っていく。
それを見届けた隼人は、ブランコに乗ったまま考える。
(一緒に明日へ来てくれるのか、それとも……)
しばらく悩んだ後、隼人は帰宅した。
彩との関係について両親から質問攻めになったが、適当にはぐらかして就寝する。
そして翌朝。
隼人はループすることなく目覚めた。
彼は昨夜のうちに見つけておいた集合写真を確認する。
写真は一年生の時のものだった。
そこに写る生徒は二人。
隼人と彩だった。
「明日……いや、今日に進んだのか」
安堵した隼人は、机のプリントを手に取る。
プリントには「今日の目標:放課後に文房具を購入しましょう」と書かれていた。
「今回も簡単だな。帰り道の本屋かコンビニで買うか」
頭の中で計画を立てつつ、隼人は一階に下りて朝食を取る。
着替えて教科書をリュックサックに詰めていると、窓の外から声が聞こえてきた。
リュックサックを置いた隼人はカーテンを開ける。
「隼人くーん」
家の前に制服姿の彩がいた。
彼女は大きく手を振って呼びかける。
「隼人君、おはよー。早く学校行こうよー。あっ、放課後は文房具買いに行こうねー」
「ちょ、ちょっと待って……!」
隼人は大急ぎで支度をする。
嬉しそうな両親の追及を避けつつ、彼は家を飛び出す。
彩はスマートフォンをいじって待っていた。
息を切らした隼人は頭を下げる。
「遅くなってごめん……!」
「大丈夫だよー。アポなしで来たのはあたしだからさー」
「……結局、一緒に来てくれたんだ」
「まあねー。隼人君の彼女だもん」
彩は涼しい顔でピースサインをする。
冗談を聞いた隼人は苦笑気味に笑うのであった。