表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
n回目の青い春  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/101

第18話 強引な少女

 彩は自然な動作で隼人に詰め寄る。

 上目遣いで見つめられた隼人は反射的に飛び退いた。

 その姿を彩はケラケラと笑う。


「何それ。驚きすぎでしょー」


「だ、だって……急に近付いてくるから……」


「えー? 別にこんなの普通だって」


 彩は隼人の両手を握って包み込む。

 隼人は逃げたかったが、力が強く振りほどけなかった。

 いたずらっぽく微笑む彩は隼人に告げる。


「突然だけどさ、家に入れてよ」


「え?」


「一時間も待ってて疲れちゃった。休みたーい」


 彩は隼人の背中をぐいぐいと押して玄関へと向かっていく。

 押される隼人は大いに慌てていた。


「ちょ、ちょっと!?」


「いいじゃん、いいじゃん。おじゃましまーす」


 彩は隼人の鍵をひったくって自宅に入った。

 騒ぎを聞きつけた父と母が玄関にやってきて驚愕する。

 息子が見知らぬ女子生徒を連れて帰ってきたことに、二人は目を丸くして戸惑っていた。

 隼人は気まずそうに目をそらしている。


 靴を脱いだ彩は、眠たそうな笑顔で自己紹介する。


「こんにちはー、隼人君の彼女でーす。美人のギャルでーす」


「えっ……」


「は、隼人の彼女……!?」


 驚愕する隼人の両親を横目に、彩は颯爽と階段を上がっていった。

 隼人は「ちょっ、待って!」と言いながら後を追う。

 彼が階段を上がり切った時、既に彩は自室の扉を開けていた。


「さーて、ここかなー?」


 彩はひょいと部屋に踏み込む。

 彼女は散らかった室内を見回して感心する。


「へえ、いい部屋じゃん」


「汚くてごめん……」


「気にしないよー」


 彩は本棚から漫画を抜き取ると、それを持ってベッドに寝転がった。

 そのまま彼女は読書を始める。

 隼人は気まずそうな表情で入り口に佇んでいた。


(臭いとか大丈夫かな……消臭剤とか使っとけばよかった……)


 心配する隼人をよそに、彩は「あっ」と何かを思い出した。

 彼女は漫画を読みながら言う。


「最初に言っとくけど、あたしは殺し合う気とかないから安心して」


「本当に?」


「うん、本当に」


 漫画を置いた彩は、姿勢を変えながらニヤニヤと笑う。

 彼女は隼人を手招きして尋ねた。


「まあ、それだけ警戒するのも分かるけどね。太一君に会ったんでしょ?」


「太一……?」


「吉良太一。あいつヤバいよー。見境なく斬ってくるからさ。飽きずにまだやってたんだ」


 そう語る彩の目には、軽蔑の色が見え隠れしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ