第17話 日曜日の出会い
四月十三日、日曜日。
午前中に学校の課題を済ませた隼人は私服で外に出かけた。
プリントの目標である「自宅以外で食事」を達成するためだ。
近所のコンビニでおにぎりと緑茶を購入した隼人は、最寄りの公園のベンチで飲み食いした。
数分ほどで平らげた後、彼は不安そうにビニール袋を一瞥する。
(これでクリアかな……?)
隼人が気にしているのは、吉良太一の存在だった。
両者の滞在する日がずれたことで出会うことはなくなったものの、彼はまだ油断していなかった。
「一度でもループすれば、吉良が追い付いてくるかもしれない。ノーミスで進み続けないといけないんだ」
殺された時の光景や痛みがぶり返す。
それらの鮮烈な記憶は、彼の脳裏に消えることなく刻まれていた。
恐怖で動けなくなることはないものの、二度と死にたくないと思わせるだけの衝撃があった。
(吉良の他にも危険な奴が待っている可能性はある。この先も気を付けよう。あとは武装も用意して……)
丸腰でいることが急に怖くなった隼人は、駆け足で百円ショップに入店する。
そこで自衛用の包丁と金槌を購入してリュックサックに詰め込んだ。
他にも買いたいものはあったが、遠慮なく買い揃えると残金が危うくなるので最低限に留めた。
(火炎瓶もまだ調達するか)
隼人は今後について考えながら帰路に着く。
自宅の前に立つ人物を見た瞬間、彼は反射的に足を止める。
電信柱にもたれてぼんやりとするのは、同じ高校の制服を着た女子生徒だった。
艶やかな茶髪に銀色のピアス。
カラーコンタクトを着けた目は灰色だった。
隼人はその容姿に既視感を覚える。
(誰だったっけ……元のクラスメートにいたような……)
記憶を遡る一方、隼人はリュックサックに手を伸ばす。
彼が連想したのは、やはり吉良太一だった。
いきなり攻撃される可能性に警戒し、先制攻撃すら視野に入れる。
そうして指先が包丁の柄に触れた時、女子生徒が隼人に駆け寄ってきた。
「あっ、いたー。おかえりー」
「ただいま……って誰?」
「んあ。憶えてないんだー。そりゃそっかー、だいたい十年ぶりだし」
女子生徒は頭をぽりぽりと掻く。
それから眠そうな顔で微笑むと、親しげに隼人の肩を叩いた。
「あたしは立花彩。よろしくねー、隼人君」
「えっ、うあ……よろしく……」
困惑する隼人は、狼狽えながら挨拶を返した。