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第15話 平凡な目覚め

 隼人は目を開ける。

 そこには自室の天井があった。

 彼は神妙な動きでベッドから起き上がる。

 日付は四月十二日だった。


(目標達成後に死ぬと、生き返った上で翌日に進めるのか。憶えておいた方がよさそうだ)


 新たな発見をしつつ、隼人はパジャマをめくって腹を確認する。

 日本刀に刺された傷は無くなっていた。

 隼人は心の底から安堵する。


「よかったぁ……」


 四月十一日。

 深夜に家を出発した隼人は、吉良との遭遇を避けるため隣町に移動した。

 駅前のファミレスに入った彼は、明日へ進むための計画を練り始めた。

 計画の中には、吉良の殺害も含まれていた。

 自分と家族の死を目の当たりにした隼人は、この時点で法や倫理を厭わない行動を決意していた。


 午前十一時頃、隼人は高校へ向かう。

 目標達成のため校長室に赴くも、彼は校長が出張で不在だと知った。

 その後は校庭の端で待機し、昇降口から出てきた吉良を発見して不意打ちを仕掛けたのだった。


(結果として四月十二日に進めたけど、色々と雑な作戦だったよなぁ……本当に運が良かっただけだ。吉良を殺して生き延びるつもりだったのに、普通に死んだし)


 己の失態に苦笑しつつ、隼人はプリントを確認する。

 内容は「今日の目標:朝食を食べる」だった。


「簡単すぎるだろ」


 隼人は階段を下りる。

 キッチンでは母が料理中だった。


「おはよう、隼人。朝ごはん食べれそう?」


「うん、食べたい」


「ちょっと待っててね」


 母は手際よくテーブルに料理を並べていく。

 今日の献立は焼き魚と卵焼きがメインの和食だった。

 隼人は「いただきます」と手を合わせて味噌汁を啜る。


 食べ慣れた味に微笑んだ時、彼はふと自分の手を見やる。

 同時に"昨日"の出来事がフラッシュバックした。


 人間の焼けた独特の臭い。

 腹を突き刺された際の激痛。

 吉良の首を刺した感触。


 鮮烈な死と殺人の経験が蘇り、急速に吐き気が込み上げる。

 それでも隼人は我慢し、平然と朝食を頬張った。

 生きるために力強く箸を進めていく。


(殺されたくなかったら……明日には進むためには、殺すしかない……。手段を選んでいる余裕はないんだ)


 自分にそう言い聞かせながら、隼人は朝食を完食する。

 窮地を乗り越えた彼は、仄暗い覚悟を捨てずに抱えていた。

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