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第1話 10年目のループ
中島隼人は、四月七日のループに囚われていた。
彼が異変に気付いたのは、ちょうど十回目のループの時だった。
変わらないテレビ番組。
進まない日付。
リセットされるテレビゲーム。
同じ時間に出される同じ食事。
機械的に繰り返される四月七日を何度も味わい、隼人はようやく異変を認識した。
隼人は引きこもりの高校生である。
一日の大半をベッドで過ごし、自室の漫画やゲームで時間を潰す。
精神的な煩わしさからネット環境を完全に断っているため、当初はループに気付けなかった。
十一回目のループを迎えた隼人は、しかし何も行動しなかった。
四月八日が訪れない事実より、平穏な日常を壊す方が遥かに恐ろしかったのである。
狭く薄暗い自室だけが彼のすべてだった。
それをただ守りたいのだ。
外の世界……ましてや超常的なループなど知りたくもないというのが本音だった。
だから隼人は目を逸らして耳を塞ぎ、引きこもりの生活を繰り返した。
四月七日から進まない世界を彼なりに受け入れた。
――そうして十年分の月日が流れた。