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第9話 勝利の後は

 夜は更け、村の中にはかがり火が()かれている。


 野盗に襲われたばかりだと言うのに、そこにいる者達の雰囲気は明るい。


「ユマ様! ありがとうございます!」

「あなたのお陰で村は救われました!」

「一生あなたについて行きます!」


 俺達は馬を降りて、村の中を歩く。


「ユマ様素敵!」

「次期領主様はとっても素敵よ!」

「通してくれないか?」


 村の人達は口々にお礼をいってくれるのは嬉しい。

 でも、今は先を急がねばならない。


「この村の村長はいるか?」

「は、はい。ここにおります」


 そう言って出て来たのは、50代くらいの白髪の混じった男性だった。


「そうか。話がある。兵士達は……」


 俺はそう言って後ろを見ると、既に酒盛りを始めている。


 あれだけ戦った後だと言うのに、飲めや踊れやととても楽しそうだ。


「やめさせますか?」


 ルークが不安そうな目で俺を見るので、俺は首を横に振る。


「いや、必要ない。ルーク。お前も好きにしろ。数人……見張りだけは立てておけ。それ以外の者達は許してやれ。今日は……よく戦ってくれたからな」

「は! ありがとうございます!」


 そう言ってルークは村の集団の中に入っていく。


「ユマ様は一緒に来られないですか? 次期領主様の英雄譚(えいゆうたん)をお聞きしたいのですが」

「私もです!」


 そう言って来るのは若い女性達だ。

 俺の手をからめとって柔らかい物を当ててくるけれど、流石に今はそんなことをしている場合ではない。


「悪いな。俺はやることがあるんだ。君達は楽しんできてくれ」

「はい……でも、いつでもお待ちしております」


 そういって女性達は名残惜しそうに離れていくけれど、俺は村長と共に村長の家に向かった。


 部屋の中は誰もいないので、俺と村長の二人だ。


「それで……どうして野盗が300人もこの村を襲ったのだ? いくら何でもおかしいと思うが……」


 俺達は村長に座るように促すと、彼は座って話し始める。


「それが分からないのです。確かにこの村は周辺ではそれなりに大きく豊かであることは間違いありません。ですが、300人もの野盗が攻めてくるなんて……理由が思い当たらないのです」

「そうか……しかし、よく1日も持ちこたえていたな。いくら守備だとはいえ、ここまで粘るとは……指揮官は誰だ?」


 俺がそう聞くと、彼は首をかしげる。


「1日……ですか? ワシ等が攻められたのは昼過ぎからなので、半日程度ですが……」

「昼過ぎ?」


 それはおかしい。

 俺達は昼過ぎに伝令が到着して、出立したはずだ。


「では……伝令は誰が送ったのだ? というか、いつ送ったのだ?」


 もしかしたら、魔法で足を速くする持ち主がいるのかもしれない。

 でも、この近辺でそんな魔法の持ち主はいなかったはず……。


 しかし、村長の言葉は予想以上の言葉だった。


「伝令……ですか? ワシ等はそんなことをする余裕などありませんでした。兵士1人惜しい状況でしたのでしたし、すぐに囲まれてしまったので」

「なんだと……では……誰が……グレイロードの俺達を呼びに来たと言うんだ?」

「それは……分かりかねます」


 村長は何か答えようとして、目を泳がせた後にはぐらかした。


「何か知っているのか?」

「いえ、本当に分かりません。申し訳ありません」


 彼はそう言って深く頭を下げる。


 そう言う彼は敵意があるようには見えない。

 何か……言えない事情があるのか。

 今度調べさせるとしよう。


 後で聞いておかないといけないことは……。


「他に何か困っていることはないか? 今回は撃退したが、周囲にまだ山賊がいたりはしないか?」

「……今回の奴らだけですので、問題ありません」

「分かった。ではまた後程調べるかもしれない。今日のところはこれで休む」

「この家を使って頂いてもいいのですが」

「いらん。天幕で寝る」


 問題ないとは思うが、一応警戒をしておくべきか。

 俺は村長の家を出ると、張ってあった天幕に入って装備を外す。


「ふぅ……初陣……」


 俺は初陣のことについて考える暇もなく泥の様に眠りについた。


******


 男達はバメラルの村近くの森で村の様子を伺っていた。


「どうなっているんだ。領主が来なかったし、あの脳筋バカ息子は矢を切り飛ばしたぞ。ありえるのか?」

「信じられん……しかも、そのまま速度を落すことなく突っ込んで行ったからな……あんな化け物どうやって殺すんだ」

「それに、敵が来るのが早すぎる。本来であれば、村を落とし、中を占拠してから領主に村を攻撃させている時に後ろから撃つ予定だったのだろう? そのための陽動で騎士団にまで陽動をかけたのに……どうしてこんなにも早く来たのだ?」

「恐らくだが、山猫達がやったのだろう」

「奴らか」


 男達は彼らの視線をここと隣り合う領地の間に陣取る盗賊達の山をにらむ。


「あいつらがグレイル家と手を結ぶことは避けたい。どうにかならないか」

「一応、村の中には仕込んでいる。あの脳筋バカ息子なら、手を組もうとする前に滅ぼしにいくに違いない」

「確かに、あそこまで戦闘には長けているが、交渉まではできまい。共倒れが最善だが、片方がなくなるだけでも大分動きやすくなるだろう」

「ああ、どちらにしろ、この領地の奴らはさっさとくたばってもらわないとな」

「それなら、今の内に暗殺はどうだ? 楽しく村で飲んで騒いでいるのではないか?」


 ある男が提案して、他の男も立ち上がろうとするが、1人の男がそれを止める。


「ダメだ」

「なぜ」

「ちゃんと数人は見張りを立てている。勝ったばかりだと言うのによくやる。俺達は誰か1人でも捕まってはならない。だから行くのはなしだ」

「っち。脳筋バカ息子だと思っていたのに……脳筋息子くらいにしてやるか」

「ああ、だが、それも明日までだろう。明日にはやつらで……潰し合ってもらう」

「だな。俺達の領地のために、邪魔な奴らは少しでも減っていてもらわなければならない」

「俺達の領地のために」


 男達はそう言うと、夜の森の中に姿を消した。


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