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凶悪な悪役貴族に転生した俺は、ほぼクリア不可能なルートを努力とゲーム知識で生き残るために斬り開く  作者: 土偶の友@転生幼女3巻12/18発売中!


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第89話 報告と次の場所

 俺達は領内の顔見せと、今仲間に出来そうなキャラを勧誘して回った。

 全ての顔見せとキャラがある程度は集まったところで、領都グレイロードに戻る。


 キャラ集めも必要だけれど、時間経過で現れるキャラや特定のイベントが起きていないと現れないキャラもいる。

 それらは当然と言えば当然かもしれないがいなかった。

 そんなキャラ達を探すよりも、今絶賛大変な政務を進めるべきだと判断したからだ。


 グレイロードについてすぐ、メア殿下はとても興奮気味に話しかけてくる。


「ユマ様! この度は本当にありがとうございます! とても参考になりました!」

「ああ、後はグレイロードでの仕事でやっていただくが、問題なかったかな?」

「はい! それで構いません! これだけ……多くの町の長の方々に話を聞かせていただいたのです。使えなければ人形にされても文句は言えません!」

「人形……」

「必ずや成果を出してみせます。わたくしはやりますわ!」

「が、頑張ってほしい」


 彼女は元気よく走り去っていく。

 そこまでしてやりたかったのか……と思わなくもないが、彼女がやる気になってくれているのであればそれはそれでいいだろう。


 俺は彼女の背を見送り、父上の部屋に向かう。


 部屋には俺とついてきたシエラ、元々いた父上、ゴードンにシュウがいる。


「ただいま戻りました。父上」


 俺は前よりも細くなった気がする父上にあいさつをする。


「よく帰ってきたな。ユマ。ごふっ」

「父上?」

「……何でもない。お前が送ってくれた人材は優秀者達ばかりだ。これだけの人材が我が領にいるとは知らなかったぞ」

「父上が素晴らしい領地にしてくれたからこそです」

「ふふ、お前にそう言ってもらえるとは、私の人生も無駄ではなかったか」

「父上?」


 なんだか父上の言葉の端々に不穏な言葉が……。


 しかし、父上はそれ以上追及するなと言うように口を開く。


「ユマ。帰ってきてもらって早々で悪いが、他の穏健派の所にも顔見せに行ってもらう」

「他の……? しかし、まだここの政務が大変なのでは?」

「お前のおかげで優秀な人材が入ってきている。だから問題はない」

「兵士の補充に関してはいかがですか?」

「そちらはお前が出てもそこまで変わらない。それよりも、お前にはお前のやるべきことがある。次に議会が開かれた時はお前に行ってもらうぞ」

「俺が……議会に?」


 議会とはこの国で影響力の高い10人の王侯貴族からなる集まりを指す。


 そして、そこには基本的に領主しかいけない決まりだ。

 次期領主という名目があっても、参加は認められない。


 認められる時は……。


「ユマ。見たくないから見ない振りをするのはいつまでもできん。次の議会には行ってもらう。その前に同盟関係にある穏健派へ行ってもらう。わかったか?」

「……分かりました」


 見ない振りをする……なんのことだろうか。

 俺はこの領地を守り、俺だけではない。

 この領地のみんなで生き残る。

 兵士達だって本当は全員生かしたい所だけれど、それができないことはわかる。

 幸い、名前を憶えている者は今の所誰も死んでいないが、そうなったら……。


「ユマ」

「はい」

「頼んだぞ」

「任せてください。父上。俺にとってできる限りをしますから」

「……ああ。そうだな。お前は全力を尽くしてくれているのだな」


 父上はそう言って少しうつむいた。


 それから気持ちを切り替えるようにして、俺の方を向く。


「さて、先に行ってほしい穏健派の領地がある」

「はい」

「隣のギドマン伯爵家に行ってほしい。兵士は100程連れて行ってくれ」

「100もですか?」


 隣の友好的な領地に行くというのに、その数は明らかにおかしい。


「子爵、男爵諸侯からの嫌がらせを受けているらしい」

「嫌がらせ?」

「相手は否定しているそうだが、組織的に村々を焼かれているそうだ」

「対応は?」

「領主が病床に()せっていてそこの次男が指揮を執っている。が、残念ながらそちらの才能は今の所出ていないそうだ。それに、あそこは他国と接していないから領土柄兵士が弱いからな」

「なるほど……」


 確かにゲームでも今の領主は死んでいたはずだ。

 領内での相続争いは特になく、今の次期領主に引き継がれる。


 引き継がれて、それなりに優秀なのだけれど……優秀なのだけれど……。

 癖がそこそこ強くバランスを取るのがとても難しかった。


 というか、ユマルートでは扱いをミスると後ろから何度も首を狙ってくるのだ。

 癖が強く、原作のユマとはとことんそりが合わなかったというのもあるのだろうが。


 レックスルートだと基本的に信頼が生まれるルートばかりけれど、ユマルートではまずない。


 どう接するかをある程度事前に考えておかなければならないだろう。


「わかりました。そういうことならすぐに行きます」

「ああ、シエラ。ユマについていってくれるか?」

「もちろん。敵をやって(・・・)もいいならそっちの方がいいし。ダーリンもいるならよりいいわ!」

「そうか。ユマのことを頼む」

「……ええ。お任せください」


 そう答えるシエラの仕草は、とても美しかった。


「ユマ、ギドマンのこと頼んだぞ」

「はい」

「ただシュウはこちらで借りていいか? 政務がな」

「かまいません。シュウもそれでいいだろう?」


 俺がシュウを見ると、彼は頷く。


「はい。それに今は工作員を急進派の所に送り込んでいます。ユマ様が帰ってくるまでに何か情報をお届けするために僕はここに残ります」

「なるほど、シュウが移動したのではどこにいるかわからなくなるからな」

「その通りです」

「わかった。ではすぐに支度をすることとします。今日のうちにメンバーを決めて明日には出発したいと思います。問題はありますか?」

「ユマのいいようにしてくれ」

「かしこまりました」


 ということで、それから何があったかを軽く情報交換をして、出発の準備をする。



 そんなことをしているとあっという間に翌日になった。


「それでは出発する!」

「は!」


 ということで、俺達はすぐに出発をする。

 人数が少ないこともあって、すぐに動けるのが強みだ。


 領内の移動は問題なく進み、隣の穏健派の領地ギドマン領に入った。


 俺は馬に乗りながら周囲を見回し、隣にいるシエラに話しかける。


「いい場所だな。のどかで……ゆったりとしている」

「そうねぇ。あたしとしては刺激的でもいいけど……たまにはこういうのもいいかもね」

「そうだろう。それを襲う奴らがいるとはな……」

「ダーリン」

「なんだ?」

「あれそいつらじゃない?」

「何?」


 シエラが指す方には、うっすらとだが煙が立ち上っていた。

 その下にはちょうど村が存在している。


「総員戦闘準備! 救援に向かうぞ!」


 俺は部下達に指示して、馬を走らせる。


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