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凶悪な悪役貴族に転生した俺は、ほぼクリア不可能なルートを努力とゲーム知識で生き残るために斬り開く  作者: 土偶の友@転生幼女3巻12/18発売中!


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第116話 次以降への布石

 ゼノ殿下はメア殿下に飛び掛かる。


 ガッ。


「貴様! なんのつもりだ!」

「ゼノ殿下、陛下は話し合いで……そうおっしゃられたと思いますが?」


 俺は彼がメア殿下に触れるより早く割り込んだ。

 安全な場所でずっと戦いもしなかった王子程度は相手ではない。


「離せ!」

「メア殿下に手を出さないでいただけますか?」

「くっ! 無礼だぞ!」

「陛下のお言葉をお聞きください。私はそう言っているだけですが」

「わかった。わかったから離せ!」

「失礼いたしました」


 俺はそう答えて彼の手を放す。


「くっ……裏切り者が……」


 彼はそう言って俺に握られていた手をさすっている。


 そこまで強く握ってはいないはずだけれど、加減を少し間違えてしまったか。


「ユマ様。ありがとうございます。もう大丈夫ですわ」

「はい。突然前に出てしまい申し訳ありません」


 俺は見せつけるようにメア殿下に頭を下げる。


 ゼノ殿下には下げないが、メア殿下には下げる。

 元々わかっていたこととはいえ、俺がどちら側かをはっきりと示す。


「感謝いたします。お兄様、もう次はないですよね?」

「……ああ。悪かった」

「それでは、先ほどのお話に戻りましょうか」


 ということで、2人は元の話に戻るのだが、終始メア殿下が優勢だったように思う。


 ゼノ殿下も先ほどの暴挙が早計だったことに思い至り、苦々しく話を続けていた。


 後はこのまま……と思っていた所、扉がノックされた。


「近衛騎士団長バゼルであります! 証人を連れてまいりました!」

「入れ」


 陛下がそう許可を出すと、バゼルは数人を連れて室内に入ってくる。


 バゼルや近衛騎士に囲まれる形で、シュウ、セモベラ子爵、ソーランド騎士爵がいた。

 他の仲間……アーシャやシエラ達はおそらく武器を持っているということで連れてこなかったのだろう。


「その者達は?」

「は! 彼らはグレイル侯爵家の護衛とその客人方になります」

「して、なぜ彼らを連れてきた」

「まずは陛下にお話をしたいと思いますが……」

「いい。話せ」

「は!」


 ということで、彼の口から聞かされたことは簡単だ。

 グレイルの仲間達が賊に襲われた。


 暗殺を実行しようとした者達は近衛騎士の鎧をまとっていたけれど、その中身は近衛騎士ではないらしい。

 近衛騎士の誰かが彼らに鎧を貸し、そして実行に移したのではないだろうかということだった。

 目下調査中で、最初に名乗った第4近衛騎士隊長の所や非番の隊員達の元にも近衛騎士を派遣しているらしい。


 すぐにはわからないが、必ず原因を究明すると陛下は約束してくれた。

 だが……そんなのは決まっている。

 急進派の連中に違いないだろう。

 だからといってここでいきなり殺すのは許されることではない。

 今回は引き下がる。


 が、一つだけ、問いたださなければならないことがある。


 俺はメア殿下に目くばせをすると、彼女も頷いて話を変えてくれた。


「ところでお兄様。彼らが来てくださったのはとても都合がいいのです。少し、お話を聞いていただけますか?」

「なんだ?」


 ゼノ殿下はそれについては聞かされていないのか、さっさと続けろと言う。


「ええ、では、わたくしがグレイル侯爵様を代理して、告発させていただきます。ケラン公爵の領地を召し上げることを提案させていただきます」

「ふざけるな! なぜそのような話になる!? 儂は関係ないだろうが!」


 と、大声を上げて立ち上がったのは中年のケラン公爵。

 豊かな髭を持つ貴族らしい貴族だ。


「それでは、この方々はご存じではありませんか?」


 メア殿下はそう言ってセモベラ子爵、ソーランド騎士爵をそっと紹介する。


「知るか。儂はそのような奴らは知らぬ」


 すると、セモベラ子爵、ソーランド騎士爵は慌てて声を上げる。


「私達はあなたがギドマン家を攻めねば食料を送らないと言ってきたから攻めたのですよ!?」

「そうです! でなければ我々が議会の一角を攻める理由がありません!」

「知らぬ。儂と貴様らの領地で食料の売買はあったのかもしれぬ。だが、なぜ儂がギドマンを攻めさせることになる? いくら何でも妄想が過ぎるという物。メア殿下。このようなお話、冗談では済まされませんぞ?」


 ケラン公爵はそう言って凄むけれど、メア殿下はまっすぐに見返して答える。


「このような話、冗談でもする訳がありません。セモベラ子爵、ソーランド騎士爵両名が同じようにあなたのお名前を上げていましたわ。戦があった後、一度もお互いを会わせていないのに……です」

「そんなもの、もしも負けた時にはそうする。と話し合っていたのではないか? 言いがかりに等しい」

「ですが一度値段を上げられていますよね? どうして上げられたのですか?」

「当然売値を高くする必要が出たからに決まっている。値段が上がることなどいくらでもあるだろう? 小麦が永遠に同じ値をつけると思っているのか?」

「あら、相手のことは知らないのに、彼らに対して値上げをしたのが小麦だとご存じなのはどうしてでしょうか」


 ケラン公爵は少しメア殿下を睨みつけて、ゆっくりと答える。


「……儂の領地で奴らの所に送っている物等小麦くらいしかなかろう」

「だからと言ってすぐに出てくるのはおかしいと思いますが……ケラン公爵様ほどの領地はとても大きいのですから。他の物も造っていない訳はないでしょう?」

「……ああ」

「ただ、あくまで今回のは一度提案させていただいただけです。今後、より詳しく調べて……ということでよろしいでしょうか」

「……いいだろう」

「では、お話はこれで終わりです。陛下、ありがとうございました」


 このまま追い詰めるか……と思うけれど、これ以上は攻めない。

 というか、物的証拠は流石に残っていないので、追い詰めることはできないのだ。

 だが、これを議題に上げておく。

 それが重要になってくる。


 その理由は、議会に参加している貴族以外への選択を突きつけるためだ。

 それらの貴族達に、ケラン公爵の方にいればいずれは切り捨てられるかもしれない。

 と、思わせることが重要だからだ。


 そもそも議会に参加している貴族は十分に力を持っている。

 そして、ケラン公爵は急進派についている。

 そこでその罪を追及しても、急進派は真実の究明に時間をかけるべきだとか色々と言い、のらりくらりとかわすだろう。

 なら、別の所で利益を得ておく必要があるのだ。


 因みに、セモベラ子爵、ソーランド騎士爵の2人は領地をそのままにさせてある。

 新しく統治しなおすのは時間が足りないからだ。

 ただその代わり、こちらからの監視団が常駐しているし、彼らの妻や子供は人質としてギドマン家にあずかるということもしている。

 もしも反旗を翻した時には……ということだ。


 そして、議会は穏健派にとっていい形で終わり、中立派、穏健派のメンバーはそれぞれの領地へ帰っていく。


 俺達もことの真相は後ほど……と思っていたのだけれど、王都から出るに出られない事情ができた。


 父上が倒れたのだ。


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