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第113話 護衛達の様子

 時は少し遡り……。


 僕はシュウ。

 今はユマ様の護衛として、議会が行われている部屋近くの控室で待機していた。

 控室はかなり広く、多少の荒事もこなせるくらいの大きさだ。

 調度品も適度におかれているくらいで、動きやすいと言えば動きやすい。


 メンバーは僕、アーシャ、シエラ、ルーク、ゴードンさん、リリスにおまけの2人だ。

 ルークとゴードンさんはのんびりとチェスをして遊んでいる。


 アーシャとシエラはソファに座ってリリスを挟んで話しかけているが、肝心のリリスはガチガチに緊張していた。

 まぁ……あのアルクスの里の後継者と『焼尽龍姫』に挟まれたらそうなるか。


「リリスはどんな魔法を使うのー?」

「あ、はい。私は強化魔法(魔)という魔法が使えます」

「強化魔法(魔)? 魔法を強化する……ていうこと?」

「あ、はい。その通りです」

「じゃあ今度あたしの魔法を強化してよ! どこまで威力があがるのかしらね!」

「あ、はい。もちろんお手伝いさせていただきます」

「もっとフランクにしゃべってもいいのよ?」

「あ、はい。これが私の普通ですので」


 シエラは気にせず話しかけているけれど、リリスは背筋を伸ばしてハキハキと答える。


「シエラ。そんながっつかない」

「えー別にそんなんじゃないわよ。でもそうね。アーシャ、あなたが話しかけてみれば?」

「わかった」


 アーシャはリリスに向き直り、じっと彼女を見つめる。

 リリスもそれに応えるかのようにアーシャを見つめ返した。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「何かしゃべりなさいよ」


 シエラの言葉で沈黙が破られた。


 アーシャはそっと目を伏せ、ぼそりとつぶやく。


「何しゃべっていいかわかんない」

「なんでよ。アルクスの部隊任せてもらえたんでしょ? そういう時は何話してるの?」

「部隊指揮の話とか、弓のうち方について」

「職人気質すぎるわ。もっと愉快に生きましょうよ。ねぇ、リリス」

「シエラは軽すぎる。今は護衛の仕事に従事するべき。リリスもそう思う」

「あ、はい……えっと……」


 リリスはアーシャとシエラに挟まれて右往左往している。


 なので、僕は書類仕事の手を止めて彼女達の方へ向かう。


「いきなり2人のペースで話されては、彼女がかわいそうですよ」

「えーこれくらいいいわよねー?」

「えっと……」


 シエラが構わずぐいぐい行くので、話を変えるべく適当なことを聞く。


「リリスさんは困っていることはないですか? いきなり環境が変わり、戸惑っていることもあるでしょう」

「あ……はい。あ、いえ、特に問題ありません。グレイル侯爵様も、ユマ様もお優しいです。私なんかに丁寧に教えてくださいます。ただ……」

「ただ?」

「これをもう少し使えるようになれるといいのですが……」


 そう言ってリリスが目を落としたのは、自身の腰に刺さっているレイピアだった。

 ユマ様がリリスなら絶対に使えるからと渡されたものだけれど、ここ数日構った感じ筋は悪くないという程度らしい。

 ユマ様なら考えがあるのだろうが……。


「少しずつで構いませんよ」

「あ、はい。ユマ様も……その周囲の方々もみんなかっこいいので、私も必死についていきたいと思います!」

「そうですね。とても立派な志です」


 そんな話をしていると、部屋がノックされる。


 次の瞬間にはアーシャ、シエラ、ルーク、ゴードンさんの4人が警戒の目を扉に向ける。

 というか、アーシャは魔法を使って姿を隠し、僕では見つけられない状態になった。


 一番近くにいる僕が行こうとすると、ゴードンさんがそれを止める。


「シュウ様。私が行きます」

「……はい」


 ゴードンさんは警戒しながら扉に近づき、声をかける。


「どちら様ですか?」

「我々は第4近衛騎士団所属の騎士である。緊急事態につき開けていただきたい!」


 近衛騎士団……王に仕え、王のためだけに剣を振るう精鋭揃いが一体なんの用か。


 しかし、相手の要求を断ることはできない。

 近衛騎士団を敵に回せば、それだけでユマ様の邪魔になるし、この王都からも出られなくなるかもしれないからだ。

 限度はあるが……。


「今開けます!」


 そのことを知っているゴードンさんは、全員に警戒するようにだけ目くばせをすると、相手に向かって答えた。


 そして、扉が開かれると、そこには完全武装した近衛騎士が20人近くいた。

 先頭の30台半ばの隊長らしき男が要求をしてくる。


「賊が侵入したとの報告があった。中を調べさせていただきたい」

「お断りします。我々はいましたが、入ってきておりません」


 この部屋のメンバーは議会に参加している主を護衛するため、近衛騎士と言えどそうおいそれと要求することはできない。

 話をするくらいなら断れないが、それ以上は無理だ。


 しかし、相手は首を伸ばして部屋の中を覗き込む。


「いや、そんなことはない。んん! いるではないか! マルコ、お前行って捕らえてこい」

「何を勝手な……」


 ゴードンさんは言うけれど、相手の隊長は関係ないとばかりに部下を呼ぶ。


 呼ばれてきたのはヘルム越しでもわかるほど若い男だった。


「は、はい。失礼いたします」

「待ってください。勝手に入られては困ります。ここより先はグレイル候より許可をいただいた者しか入ることはかないません」

「す、すみません。仕事ですので、少しだけ……」

「お待ちください!」


 マルコと呼ばれた男は謝りつつも強引に部屋に入ってこようとする。


 ゴードンさんは彼の肩を掴んでそれを止めた。


「あ」


 ドサッ。


 マルコは態勢を崩して床に座り込んだ。

 それも、部屋の中のだ。

 今、彼のことを見ることができるのは、僕達と近衛騎士達だけだった。


「おっと」


 次の瞬間には、隊長がマルコのうなじに剣を突き立てた。


「!?」

「ああ! マルコ! 部屋の中を少し調べようとしただけなのに! グレイル領の奴らは王の暗殺が目的だったのだ! 全員殲滅しろ!」

「おお!」


 まるで最初から決めてあったかのように、近衛騎士達は部屋の中に踏み込んできた。

 マルコの死体を躊躇することなく踏みつけて。


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