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醜い豚

「よかったわ、ジュリア」

「よかった、本当によかった」


手を握ろうとする醜い豚の手を振り払う。

パンパン……。


「痛い……ジュリア大丈夫なの?本当に……」


私のお母様は、もっと綺麗よ!

こんな豚じゃないわ。


「大丈夫ですわ」

「先生、ジュリアは……」

「頭を強く打ってますが大丈夫ですよ。記憶は少し混乱していますが明日には退院出来ます」

「よかったです。ありがとうございます」


豚の両親は泣きながら、お医者様に頭を下げている。

私が入院した時、こんなに泣いてくれた人はルーカスだけだった。

お母様は「大事な顔に傷がつかなくてよかったです」と言って、お父様は「忙しいのに迷惑な話だ」と鼻をフンッと鳴らした。


豚のくせに、ワタクシより愛されていると言うの?

この豚から何を学べと言うのよ。


「ジュリア、明日迎えにくるから」

「姉ちゃん、ゆっくり休めよ」

「ジュリア、お母さん達に何か隠していない?」

「母さん。警察が聞いたら駄目だって言っただろ」

「でも、警察があの場所にいたのはジュリア1人じゃなかったって目撃されてたって。もしかして、ジュリア。突き飛ばされたんじゃないの?本当に自分から飛び降りたの?」


このワタクシが自分から飛び降りるですって!!


「ふざけた事言っているんじゃないわよ!豚!あっ、言え、お母さん。ワタクシは、言え、私は飛び降りたりなどしないわよ。そうよ!あ、足を滑らしただけよ」

「な、何だ。そうだったのか、本当によかった」

「自分から飛び降りたわけでもなかったのね。本当によかったわ。お母さん、ジュリアがいなくなったらと思うと悲しくて辛くて」


嘘をついたのは……。

このポロポロと流れ落ちる涙のせいだったのかも知れない。

ワタクシは、容姿端麗で街を歩けば誰もが振り向いた。

なのに……こんなに家族が泣いてくれた事はない。


「ジュリアがいなかったら、生きていけないわ。もし、ジュリアが傷つけられたりしてるならお母さんがそいつらを傷つける」


ボトボトと音が鳴る程、涙が零れ落ちた。

その涙がワタクシの手や頬にあたる。

豚の涙など汚い。

そう思っていながらも、拭いたり出来なかった。


「母さん、ジュリアはゆっくり休ませてあげよう」

「そうだよ!母さん」

「わかってるわ。じゃあ、帰るわね」

「あっ、あの」

「何?」

「わ、ワタ……私はそんな柔な人間じゃなくってよ!だ、だから、心配しなくても私は死んだりしないわよ!オーッホ……ハハハ」

「何か、姉ちゃん変じゃね?」

「こら、そんな言い方しないの。でも、ジュリアが死なないって約束してくれただけでお母さん嬉しい」

「お父さんもだ」

「そう。それは、よかったわ」

「じゃあね」


豚一族は、部屋を出て行く。

ジュリアが自殺しようとした?!

同じジュリアなのに何を考えているのよ!

自分の為に、こんなに泣いてくれる人がいるのに……。


ブブッ……。


「何?何の音?」


辺りをキョロキョロ見回すと小さな四角い物が動いた。


「うーーん、うーーん」


何とか手を伸ばして、その箱を取る。



【あんた、まだ生きてんの?】

【告別式はよ】

【醜い姿で生き恥晒してんのやめれば】

【死ねばよかったのに】

【嘘つき】

【しーね、しーね】

【しーね、しーね】

【学校来たら、お仕置きタイムだから】

【来たら、お仕置き確定】

【お仕置き】

【お仕置き】

【次は、死亡確定だから】

【確定、確定】



何で?

奇妙な事に、文字が、動いている。

ただ、残念な事に私の国の言葉と違うから読めない。


「何て書いてあるのかしら?でも、聞く人もいないのよね」


パタパタ、パタパタ

何?


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。よかった」


誰?

足音が近づいてきて現れたのは、目を奪われるようなイケメンだった。


もしかして、白馬に乗った王子様?

この私を好きだとか?


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