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【書籍化・コミカライズ進行中】悪評令嬢なのに、美貌の公子が迫ってくる(WEB版)  作者: 柏みなみ@10/24『そして、あなたは〜』②発売


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カーティス領 ー3ー


 湖での船遊びを終えて、船着場から続く大通りを、夕食まで徒歩で散策する事にした。

 

 カフェやレストラン、名産品や、特産物、特に個性豊かな魔道具を扱う店が並び、四季の森にちなんだお土産なんかも人気で、大勢の人で賑わっている。

 

「沢山のお店があってどこから行くか迷いますね。王都にも引けに取らないくらい賑わって、わくわくします」

 

「本当ですか? 父や兄が観光にとても力を入れているので、そう言ってもらえると嬉しいです。私もここを昼間に歩くことがほとんどないのですが、……皆んなが楽しそうにしてくれていてとても……嬉しいです」

 

 今日は、女性騎士がいてくれるおかげであまり緊張していないからか、街の賑わいを違った雰囲気で楽しんでいることに気づく。

 

 王都に行くのも、珍しい魔道具の材料を人気の少ない朝イチで買いに行くか、この道を通ることもほとんど無い。

 

「まぁ、アリシア様見て下さい。素敵なアクセサリーショップですわ」

 

 リアさんが嬉しそうに声を上げて指差した先の店先のガラスのショーウィンドウには、キラキラと輝くアクセサリーが並んでいた。

 

「あぁ、あそこは兄が外国からスカウトした金細工の職人がいるお店ですね。四季の森の花や紅葉をモチーフにしたアクセサリーを多数揃えていて、毎シーズン新作が出るので人気のお店なんです。寄ってみますか?」

 

「行きたいです! アリシア様、寄っても良いですか?」


「ちょっ……! アリ……じゃなくて、リア!」


 二人を見ていると仲の良い姉妹に見える。

 私とブランカもこんな風に見えるのだろうかと微笑ましかった。


 メガネの奥の緑の目をキラキラとさせたリアさんの圧に押されたからか、アリシア様が、「ティアさえ良ければ」と答えたので、皆で店に足を進める。


 チラリと外から店内を覗くと、お客さんで賑わっていたので、騎士達には店の外で待ってもらうことにした。

 

 カランカラン、とドアベルが鳴るも、どの店員も対応中で沢山の女性が嬉しそうにアクセサリーを見ている。


 私としてはあまり店員に対応して欲しくないので、ほっとするが、アリシア様はどうだろうかとチラリと盗み見た。

 

 もの珍しそうに店内や来店客を見回すアリシア様はあまり気にしてなさそうでホッと一息つく。

 チラチラと辺りを見回すアリシア様が不意に気まずそうに顔を顰めた。

 

「アリシア様は宝飾品をご購入される時は、いつもお屋敷に行商人が持って来られるのですか?」


「え?」


 私の問いかけに驚いたようにアリシア様が声を上げた。

 そんなに驚くことだろうかと思い、何か変な事を聞いたのかと一瞬不安になる。


「いえ、アクセサリーだけでなく、店内を興味深げに見られていたので……、あまりお店に足は運ばれないのかなと」


「あ、いえいえ。商人が来ることもありますし、お店に足を運ぶこともありますが、これだけ人がいると知り合いもいるかなと思って。知り合いに似た方はいましたが……。人違いでした」


 ほほほ、と笑うアリシア様が先程まで見ていた店内の奥に視線をやると、カップルだろうか、騎士と思われる男性と貴族の御令嬢らしき人が仲良さそうにガラスケースの中を見ていた。


 アリシア様のお兄様が騎士団だから自然と目が行ったのかもしれない。


「そうでしたか」

「あ、ティア。あちらのショーケースを見てみませんか」


 入り口にあるケースのアクセサリーが見たいと誘われるまま一緒に行ったが、知り合いかと思ったという男性騎士から遠ざけるため気を遣わせてしまったかなと思う。


「アリシア様。奥のものも後で見に行きましょうね。今日はアリシア様や女性騎士の方が居てくださるから、……どこでも行けそうな気分なんです」


 そう言うと、アリシア様がピタリと足を止めてこちらを振り返った。


「私と一緒だから……?」

「はい、こんなに街が楽しめるなんて思っていなかったので、今日はとても足が軽いです」

「それは……良かったです」


 頬を赤らめながらも微笑んでくれたアリシア様に、私も笑顔を返した。


「と、とりあえずあちらのケースから見て周りましょうか」

「そうですね」


 そう言って、当初の目的の入り口のショーケースに向かった。


「これは、先ほど見た藤を模した髪飾りですね」

「素敵なデザインですね。アリシア様に似合いそう」


 髪飾りを覗き込んでいると、手の空いた店員が寄ってきて、「お手に取ってみられますか?」と声をかけてくれた。


「是非」

「畏まりました」


 そう言って、店員が、白い手袋をはめてケースの中から髪飾りを取り出してくれる。

 綺麗なアメジストで作られた髪飾りをそっと手に取ると、チラリとアリシア様を見た。


「何か?」


 私の視線で小首を傾げたアリシア様の顔のそばに手にした髪飾りを寄せると、アリシア様が固まった。


「え?」

「やっぱり。この色はアリシア様の瞳の色と同じですね。とても綺麗です」

 

 窓から差し込む光でキラキラと輝く銀の髪に、どこまでも透き通った瞳と同じ髪飾りはまさに彼女のために誂えたかのようだった。

 

 優しい紫の石は、気遣ってくれる優しい彼女の瞳と同じ暖かさがある。

 

「あ……ありがとうございます」

 

 顔を真っ赤にして私から視線を逸らしたアリシア様があまりに綺麗で、何より可愛くて、笑ってしまった。



 

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