第12話 元カノはクズにつき 下
「だいたいお前のその言葉が信じられると思うか?こっちは貴様に裏切られた側なんだよ。裏切ったやつを信じられるわけがないだろ。そもそもさっきからどういう目線で話していやがる。貴様のようなやつが俺と対等に話そうなど笑止千万。この無礼者が何をほざいてやがる!早朝からうるせぇんだよ!二度と来んなってあれほど――」
と、そっと手を俺の肩に置き俺をストップさせるちとせ。
「政信、ちょっと落ち着いて。クズ姉相手に怒鳴っても意味ないから。――お姉ちゃんさ、私なんて言ったっけ?」
「あんたの言ったことなんて忘れたひぃっ!」
千春が話しだした瞬間にするりと首に腕を巻き付けるちとせ。
「知ってる?私ってお姉ちゃんみたいなクズは殺したくなっちゃうんだよね。だから二度と来んなって言ったじゃん。なのにまた来てるしさ、だいたい政信の様子見れば分かるでしょ。ただでさえ調子が悪そうなのにこの上迷惑変かけてあんた何様のつもり?そんなのが好きな人相手に取る態度?ただの自己中クソ野郎にしか見えないんだけど」
その間も一切腕を外そうとせず、千春はものすごい怯えていた。
こちらを必死になって見てくるが、無視を決め込む。
「もう時間もないから単刀直入に言うね。そもそもお姉ちゃん子供どうするの?堕ろすのは無理だよ?」
「ちとせ、その話は俺たちが関与する必要はない。大事なのはもう二度と俺たちに関わるなということだ。千春、次来たらどうなるか分かってるよな」
「どうせいつもどおり偉そうに説教垂れるだけで――」
「次来たら本気でぶん殴る。ちとせがどうするかは知らんが命が惜しいなら二度と顔を合わせるんじゃねぇぞこのクソビッチ」
「大丈夫だよ政信。次来たらうちに入れた瞬間に拷問するから。洗いざらい吐いてもらってから死んでいただかないとね」
「時折物騒なこと言うなオイ。程々にしとけよ」
この会話に一瞬で顔が青ざめ、わなわな震えだす千春。
「千春、俺はもうお前への愛想なんて尽かしたと言ったはずだ。もう2度とくるな。一生邦彦と暮らしてろ。それが嫌なら浮気した自分を攻めるんだな」
「クズ姉、次来たら宣言通り洗いざらい吐かせるからね。覚悟しといてよ」
2人から総攻撃を喰らった千春は、すごすごと帰っていった。
やがて玄関が閉まり、気配が消えたところで。
「「ふぅ〜」」
ため息が見事にハモる。
「あはは、疲れちゃったね」
「そうだな。もう2度と来ないといいんだが。今日帰ってきたら報告しに行くか」
「そうね。ただ、急がないと遅刻しそうだけど」
「今日は1時間半遅くなってるけど」
「だとしてもあと1時間以内に家でないとギリギリだよ?」
「マジか。じゃあさっさと支度して行こっか」
そして俺たちは急いで朝食をかきこむと電車に乗り、学校を目指した。
そして無理が祟ってこのあと地獄のような状況に陥るとはまさかの俺も思わなかった。
次回からは予告通り政信に災いが降りかかります。




